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冬休みにはさすがに、百々先輩とは言えどもほとんど遊んだりはしなかった。受験勉強の中でも、数日だけ俺の為に時間を作ってくれた。それが嬉しくて、申し訳なくて……。
三学期には持久走大会や縄跳び大会等の体育行事、それよりも重要なテスト様が待ち構えていた。しかし百々先輩が卒業してしまう。そのせいで、何も考えられなかった。卒業した後だって連絡は取れる、会うことくらいできるけれど……。
今日は二月二十六日、来週にはもう卒業式がある。この学校の卒業式は、在校生は参加自由なのだ。どうしよう。
①参加 ②壊す ③不参加
ーこれで①じゃないわけありませんよねー
百々先輩や知恵先輩の卒業式。悲しいけど、在校生として……今年度の手芸部員としてしっかり送り出してあげるべき。
そして卒業式の日、俺は参加にしてあるので学校へと向かう。そして校内に入った瞬間、百々先輩と知恵先輩の姿を見つけた。どうしよう。
①声を掛ける ②スルー ③帰る
ー邪魔になるといけないので②にしておきますー
何だかいつもと違う雰囲気だし、不覚に涙を流したりしても嫌なので声は掛けないことにする。
「あっ、来てくれたんだね」
すると百々先輩たちの方から声を掛けてくれた。どうしよう。
①話す ②離す ③聞こえない
ーこれじゃ①の方にしますけどー
「卒業式、頑張って下さいね。先輩方が無様に泣いてたりしたら、俺は大笑いしてやりますから」
しかし俺は今も泣かないってのがやっと、そのくせに無理やりニッと笑って見せた。
「キミこそ、泣いてないで手芸部なんとかしてよね。わたしたちがいなくなったら、元部員はキミ一人になっちゃうんだから」
「手芸部を潰したりしたら、絶対に許しませんからね。それと……来年先生と二人で手芸部やってたら、もう大爆笑ですから! 任せましたよ」
二人もニッと笑い返してくれて、三人で歩き出す。別に卒業したからって会えなくなるわけじゃない。別れじゃないのに、こんなに寂しいのは何でなんだろう。
卒業式が始まる。三年生が入場してきただけなのに、俺はなぜだかもう泣きそうになっていた。視界はほとんど涙で滲んで見えなかった。それでも俺は涙を拭い続け、泣いてなんかいないと意地を張ろうとしているのであった。見れば、先輩もほぼ泣いている。しかし彼女たちは、涙を拭おうともせずに強がって微笑みなんか浮かべていた。
「ちょっと、何泣いてるのよ」
退場した後百々先輩は、真っ先に俺のところに駆け寄ってきてそう笑う。
「在校生、頑張ってくれたまえ。来年の卒業式には、来てあげますから」
歩いてきた知恵先輩も、俺のところに来て俺を見た瞬間そう笑う。しかし笑っている二人の顔は、最早涙でグチャグチャだった。
「先輩方だって、大泣きじゃないですか」
そして俺も笑うのであった。三人で自分の泣き顔を必死に手で隠しながら、はははと相手のことを笑うのであった。




