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「クリスマスのイルミネーションを見に行きたいんだけど、一人で行くのって何か勇気いるじゃん。だから……さ、一緒に見てくれるわよね? 買い物済んだらさ」
俺はただ百々先輩に着いて行き、駅で電車を待っていた時そんなことを言われたのであった。何それ、完全恋人シチュじゃん。どうしよう。
①ダメダメ ②勿論一緒に見るもん ③どどどどどうしよう
ーどうしようにどどどどどうしようで答えられてもね ②ですー
「イルミネーション、か。いいっすね、百々先輩が見たがるほどの物なら俺も見てみたいものです」
でもこの時俺は期待していた。
クリスマスイルミネーションが凄いのは、その綺麗な見た目だけではないんじゃないかって。
もしかしたら百々先輩は、俺に気があるんじゃないかって。
「ほら、電車来たよ?」
百々先輩の声で俺は一気に現実に戻り、微妙に混んでいる電車に乗り込んだのであった。確かに満員電車って程ではないのだろうけど、普段人混みに行かない俺からしてみれば地獄に近いレベルであった。しかしこの地獄の先には、きっと素晴らしいクリスマスデートが待っているのだろう。
「ここここ、降りて降りて」
暫く電車に揺られていると、百々先輩が俺の手を掴んで降りて行く。何だか百々先輩、いつもよりずっとハイテンション……そんなに楽しみなんだ。
「はっ、きれ~☆ 綺麗だね」
駅を出た途端に目に入ったのは、綺麗な光の世界であった。それを見た百々先輩は、まるで子供のように目を輝かせていた。
「何だか、ファンタジーな世界でのお買い物だね。……だけど……、こんな人混み初めてで……ちょっと怖いな……」
そう言って微笑むと、百々先輩は人混みの間を潜り抜けるようにして歩き出す。今日も百々先輩は、俺の手を繋いでくれている。周りにいるのもカップルばかりで、何だか俺はリア充そのものなんじゃないかと自分でも思った。
「あっ、このお店可愛いね。ねえねえ、よってもいい? いいでしょっ」
ニコニコと笑顔で、百々先輩は駆け回る。どうしよう。
①付き合う ②突き放す ③連れ帰る
ーこんなの①でいいじゃないですかー
新しい玩具を見る子供のように、百々先輩の目はキラキラと輝いていた。今日の百々先輩は、イルミネーションよりもずっと綺麗で可愛くて輝いているように感じた。キモい。そんなの、俺自身も分かってるけどね。でもでも、感じたものはしょうがないじゃん。
「はあ、楽しいね☆ でももうそろそろ疲れて来ちゃった。最後にさ、あの鐘の下で写真を撮ろうよ」
百々先輩が指差す先には、結婚式みたいな感じの鐘。それもイルミネーションによって、キラキラとカラフルな光を放っていた。




