表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

都会に住む天使

作者: natsu

―不意に空を見上げると、そこには真っ白な天使がいた。―



青空からは太陽を、夜空からは星達を奪い取り、

その存在を示す摩天楼。



毎日なんの変化もないつまらない、そんな”空”を、

僕が今日は見上げたのは、”空”から黒い羽が落ちてきたからだ。



『こんな真っ黒な羽、あんな綺麗な天使の羽なわけないよな。』



今僕の手の中にある羽は、真っ黒ではあるが、単に黒だけでない複雑な色をしていた。

小学生のときに使っていた絵の具を全部混ぜてしまったような、そんな色だ。



それになんだか、感触もすこぶる悪い。

羽毛が全部カラカラに乾ききっているし、それぞれが僕に敵意があるかのようにとげとげしく、一見不規則のようだが見事に規則的に並んでいる。





そんな奇妙な羽から目をそらし、再び”空”に浮かぶ天使に目をやると、

なんと彼女は自分の羽をむしりとっていた。

手は血に染まり、苦痛を押し殺したような笑みを浮かべながら、それでも羽をむしり続けていた。





雪のように柔らかく、蝶のように美しく踊る羽たちは、幸福をかたどっているように見えた。



『あれは幸福の羽なのか。天使は僕達に幸せをくれているのか??』



僕の勝手な推測だが、そう思えて仕方なかった。




素晴らしい羽たちはビルの30階あたりにさしかかると、急に黒味を帯び、灰のように地上を目指して降ってきた。


僕の手には今、2枚黒い羽がある。







段々、天使のいるところの真下あたり――僕の足元が、黒い絨毯を敷き詰められたようになっていく。

僕はその様子を、何かを考えるわけでもなく、ただ呆然と眺めていた。







そして最後の羽が地上に触れたとき、天使は飛ぶ力を失った。




『あっ!』



僕は思わず叫んでしまった。



冷たいアスファルトに打ちつけられた天使は、それでも笑顔を絶やすことはなく、必死に黒い羽を拾い続ける。







しかし忙しく歩く人々は、それを視界にいれることすら許さなかった。











今では僕も、その中の1人だ。













『金だったら拾ってやるのに。』







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] とても抽象的で、それでいて深い味わいがある作品だと思います。鴉の羽もただ単に黒いだけでなく、複雑な色をしていたことを思い出しました。しかし、あまりに抽象化しすぎていて、漠然としているようにも…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ