入隊式
どうも桜瀬です!昨日に続きまた投稿させて頂きました。一人でも多くの人に読んで頂ける様に頑張りますのでよろしくお願いします!
翔
「ふう……やっと着いたか」
翔は目の前に聳え立つ一つの塔、結界都市シャングリラの中心に位置し今日の入隊式の会場でありこれから訓練生として暫くは生活する事になるであろう場所「センタータワー」――その名の通り五つの塔に中心にあり対幻獣組織「ウィザード」のあらゆる部署がこのセンタータワーの各階に設置されている。このセンタータワーは250階までありその中の一部はウィザードに入隊したばかりの訓練生を教育・訓練する施設もあり、その他にも訓練生の寮や日用品等も売っている場所もある。
翔
「ここに来るのもあの日以来か……」
シルヴィア
「センタータワーに来た事あるの?」
翔は小声で呟いたつもりだったが隣に居たシルヴィアにも聞こえてたらしい。
翔
「あー、まぁ前に来た事がる程度だけどな」
翔はこれ以上余り語りたくないのか見上げていた視線を正面に戻し歩き出した。それに釣られて残りの三人もこれから行われる入隊式の会場に向け歩み始めた。
※※※
シルヴィア
「うわっ! 結構な人数が集まってるのね?」
入隊式が行われる会場に着いた翔達は、同じくこれからウィザードに入隊する人達に混じり整列していた。
レイス
「今年は例年にも増してマナを扱える者も多かったらしいからな、今年の訓練生の数は500人を超えたと言う話しも聞いた、まぁここに居る全員が共に戦う仲間であり魔導王と魔導姫を目指す者にとっては好敵手でもあると言う事だ」
レイスはシルヴィアにそう告げると鼻に詰めていたティッシュを外した、流石に詰め物をしたまま入隊式に出るのはまずいと思ったんだろう。
シルヴィア
「魔導姫……私は必ず……」
シルヴィアは魔導姫とう言う言葉を噛み締める様に呟いた、その表情は確固たる意思を示すかの様に凛としていたが何処か不安げだった。
サーシャ
「おっ!やっと始まるみた――ってあれもしかして……」
サーシャの言葉通り会場に設置されている壇上には、見るからに小さい女の子が床にも着きそうな位伸ばした黒髪を両サイドで結びそれを靡かせながらその人物は颯爽と登ってきた。壇上に登った女の子に対し会場に居る訓練生からざわつき始めた。
「ねぇねぇ? あれってどう見ても中学生だよね?」
「迷子かなんか?」
「うぉぉぉぉ!! ツインテロリっ子最高ぉぉぉぉ!!」
「いや――俺的にはもう少し幼い感じで胸は……」
訓練生達からは様々な声が聞こえてきたが中には思考的に危ない連中も混ざって居るらしい……翔がそんな事を考えていると壇上のマイクの前に立ったロリっ子は大きく息を吸った。
「お前ら静かにしろぉぉぉ! そんで中学生とかロリっ子とか言った奴は顔覚えたからな! 後で覚えとけよぉ!!」
会場に設置されているスピーカーからロリっ……女の子の怒鳴り声が会場全体に響くと、それまでざわついていた訓練生はぴたりと静まった。
薫
「おほん――私は皇 薫、風の塔の魔導王で『疾風』と呼ばれている」
壇上の薫が自己紹介をすると訓練生達は驚きの声を上げた。それもその筈、基本的に魔導王と魔導姫は表舞台は出ない――だが魔導王と魔導姫が残してきた功績はウィザードに限らず人々の殆どが知っている。
それゆえウィザードに入る者はその頂点に立つ十人を目指し、人々はその十人を英雄と讃えている。その十人の英雄の内の一人が今目の前に居るのだから。
風の塔の守護者にして幻獣を圧倒的速さで翻弄し葬り去る魔導王、疾風の称号を持つ者がこんな少女だとは誰も思わなかったのであろう。
薫
「だから静かにしろー! ったくこれだから人前に出るのは嫌なんだ……」
薫はぶつぶつと呟きながらまだ入隊式も始まってもないのに疲れた表情を見せていた。それを見かねたのかもう一人の女性が壇の上に登って来た。
その女性はマイクの前で項垂れてる薫の隣に立ち、苦笑いを浮かべながらマイクに向かって話し始めようとしていた。それを見つめる訓練生達は先程の薫の時とは打って変わって静まり返り、その女性が話し始めるの待っていた。
「皆さん余り薫を苛めないであげて下さいね? 彼女はこう見えて結構傷つき易いので」
そう語った女性は壇上から微笑みかけた。腰まで伸びた美しい黄金色の髪、無駄のないスタイルの良い身体、フランス人形の様な美しい顔から優しい表情を浮かべ――まさにお姫様の様な雰囲気を出し訓練生の視線はその人に集まった。
マリア
「皆さんの中でご存知の方もいらしゃると思いますが自己紹介をさせて頂きます、私の名はマリア・セシル、薫と同じ風の塔で魔導姫として仕えてる者です。これより対幻獣組織ウィザードの入隊式を始めさせて頂きます。」
そう言うとマリアは未だ項垂れている薫に優しく声をかけ二人は壇上から降りていった。壇を降りてきたマリアと翔は偶然目が合った。マリアは少し驚いた様子を見せたが、直ぐにいつもの優しい顔に戻り自分の決められた席へと薫と共に戻っていった。
それからはお偉いさん方の堅苦しい挨拶が長々と行われた他、各部署の職員からの連絡事項やこの後行われる能力判定の連絡等を聞かされ式は何事もなく終了した。
薫
「何か良い事でもあったのかマリア? 何だかとても嬉しそうだが?」
マリア
「そうかしら?」
入隊式終了後に行われる訓練生の能力判定を別室で見るため、薫とマリアは専用の通路を移動していた。
薫は入隊式の挨拶が終わってからなぜか嬉しそうにしているマリアが気になっていた。普段から笑顔を絶やさない様にしているマリアだが、挨拶が終わってからの笑顔は普段隊員達や一般の人に向けられるものとは違うようだった。例えるなら部屋を掃除していて偶々懐かしく、そして大切な物を見つけた、そんな時に出る自然な笑顔だったような気がした。
薫
「そうだな、例えるな……んーそうあれだ! 懐かしくて大事な物を見つけた! みたいな感じかな?」
マリアは薫の言葉に驚きながらもくすっと笑い感心した様な顔で薫に答えた。
マリア
「ふふっ――やっぱり薫は私の考えてる事が良く分かるのね、まさにその通りよ」
薫
「マリアの事なら何でも分かるさ! マリアの食いもんの好き嫌いから未だ成長中のスリーサイズまでね!」
薫はマリアの事をまた一つ理解できた事が嬉しかったのか、誇らしげに成長が乏しい胸を張った。
マリア
「薫? 好き嫌いについては何も問題ないけどもしスリーサイズを他の人に話したら……」
マリアの足音が止まり先を歩いていた薫がマリアの方に振り返ると、そこにはいつもの表情で笑っている様に見えるがその目だけは別だった。
それで何かを悟ったのか薫は慌ててマリアの正面まで走って戻った。
薫
「わっ、分かってるよ! 誰にも言わないって! ホント信じてくれよ!」
薫は動揺を隠しきれずあたふたしながらも申し訳なさそうに何度もマリアに頭を下げた。マリアは普段からある程度の事は笑って済ますが彼女が本気で怒った時の怖さは薫が一番良く知っているからだ。
マリア
「……しょうがないわね、もし言ったら本気で怒りますからね?」
マリアは呆れながらも今回は許してくれたようで、許しを得た薫は安堵の表情を浮かべた。
薫
「分かりましたマリア様――ところでまださっきの理由の答えを聞いてないんだけど……」
マリア
「教えてあげません」
そう言うとマリアは薫の横を抜けるように再び歩き始めた。薫は先に行くマリアに追いつくように慌てて歩き始め、マリアの隣に寄り添うようにして並んで歩いた。
薫
「マリアー! もしかして怒ってる!? やっぱり許してくれない!? ねーねー!」
マリア
「全く薫ったら子供じゃないんだから……大丈夫、その内薫にも分かるわ」
マリアはそう言うと薫は子供じゃない! と言いたげな顔を見せたがマリアはわざと気づかないフリをした。その顔には先程までしていた大切な物を見つけた時の笑顔が戻っていた。
マリア
「お帰りなさい翔……探し物は見つかったのかしら?」
マリアは隣で膨れている薫に聞こえない様に小さく呟き、能力判定を見る為モニタールームへと向かった。
今回は新キャラも登場!ロリっ子って良いですよね!いや美人なお姉さんも好きですよ?
私の好みは置いといて…読んだ感想・評価などして頂けるとバク転しながら喜びますのでどんどんお待ちしております!
次回からは翔の能力判定の様子からスタートしますので、楽しみにして頂ければ幸いです。