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神様の足音

時計の王様

作者: 遼馬
掲載日:2013/09/11

 全世界の時計をつかさどる「時計の王様」がいた。

大きな振り子と大きな鐘。1日1回、人間がネジを巻く。

正確に、遅れることも進むこともなく、何百年と時を刻んできた。

だが時代は進歩した。時計は皆、電池式に変わり、

今ではもうネジ巻き時計は、時計の王様一人だけになっていた。

 それでも彼は時計の王様。全世界の時計達は彼に従った。

デジタルもアナログも王様の時間と経度を基準とし、正確に時を刻んだ。

王様は言った。

「全世界の時計たちよ、我々は人間達の発展と共に繁栄してきた。これからも一生懸命

働いて、人々のために尽くそうではないか。」

 時計たちは働いた。人々の起床時間、電車の時間、昼休み、就寝時間・・・正確に刻み続けた。

特にスポーツでは活躍した。1000分の1秒まで正確に刻み、人々と共に感動を分け合った。

 まさに時計たちと人間は共存共栄だった。


 ある日それは、人間達の小さな紛争から始まった。

やがて国同士の紛争となり、大きな戦争へと発展していった。

1秒でも早く情報を掴み、1秒でも早く攻撃を仕掛ける。

時計たちも協力せざるを得なかった。

1秒刻みでミサイルが飛び交う。戦闘機が爆撃する・・・

戦闘は日ごとに激しさを増していった。

 時計の王様は嘆いた。

「我々は、戦争のために時を刻んでいるのではない・・・」

 そして王様は決断した。

「全世界の時計達よ。今すぐ時を刻むのをやめよ。長い年月ご苦労であった。」

 全世界の時計たちは時を刻むことをやめた。

ある者は入水し電池を壊し、ある者は飛び降りて自爆した。

こうして王様以外の時計は全世界から消えた。

人間達は時間が分からなくなり、闇雲に攻撃し合った。

長く栄えた機械文明のため、人間達は太陽から時間を計算する能力も失っていた。


長い争いが終わり、人間達は一人残らずいなくなった。

鳥達が静かになった大地を楽しそうに飛び回っている。

1羽の鳥が動かなくなった時計の王様の振り子にとまった。

ゆっくりと振り子が動く。

かすかに目覚めた時計の王様が言った。

「人間達もいなくなったか・・・人間がいなければ時を刻む必要もない。

いや、もともと時など刻む必要はなかったのかもしれんなぁ・・・」

王様は最後の力を振り絞り、鐘を鳴らした。

鎮魂と平和の鐘の音を、もはや聞く者は誰もいなかった。




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― 新着の感想 ―
[一言] 領土・宗教・食料等で争いが起こるのものと思いきや 、時間もまた争いの根源という発想が面白かったです! 短くも分かりやすくよかったです。
[良い点]  はじめまして。タケノコです。こんにちは。  本作を拝読しました。壮大でスケール感溢れる作品だなあと感じました。短く精妙にまとまっていて上手いなと思いました。芸が細かく発想もユニークです…
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