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「おっはよー」

「は?まい!?」

夏休み明けの大学。

着いてすぐ目の前に現れたのはまい。

「いつ会えるかわからないけどって、言ってたくせに」

「まぁまぁ落ち着きなよ。夏休み中に仕事はたくさん受けたから。あの後ちゃんとお母さんと事務所とも話して、とりあえず仕事をセーブさせてもらうことになった。大学にちゃんと通った方がこれからの売り出し方も増えるんだとか」

「……じゃあ、これからは大学の方に専念するってことか?」

「うん。そうだよ」

にぃっと笑ってまいが歩き始める。

「さ、行こ」

「……うん」

まいと並んで歩き出す。

「陽向くんは、誰かに夢や未来を預けられるタイプ?」

「え、どうだろう?まいは?」

「私が答えたら、陽向くんも答えてくれる?」

こくんと頷き、まいの方を見る。

「私は預けられる。これからも女優として大活躍すること、誰もが知っているような女優になりたい」

真剣な表情でそう言うまいになぜかつれられる。

「俺は、夢はまだないけど……預けられるような相手だったら、預けれる」

自分の胸元をきゅっと掴む。

「私も、陽向くんにだったら預けれるかな」

「え?」

「本当のことだよ」

「は?」

わけがわからない。

確かに、まいは大学の友達はいないらしいし、もしかしたら芸能人以外の友達は俺だけなのかもしれない。

だからといって、自分如きにそんな資格はないと思う。

「陽向くんはねー、色で言うとオレンジみたいな存在!暖かくて頼れる感じ!」

「いや意味わかんねぇよ」

「私ね、感情とか何かを例えるとき色で表すようにしてるんだ。その方がわかりやすいこともあるし、仕事にも意外とつかえるんだよ!自分のイメージで色を決めるんじゃなくて世間のイメージで決めるの。悲しいときは青とか恋してるときはピンクとか。今は陽向くんと一緒にいるからオレンジかなーって」

「は、はぁ」

「陽向くんは何色?」

「え?」

急に話を振られて戸惑う。

「だーかーら、今の陽向くんの感情は何色か聞いてるの!」

「いやまいみたいに普段からしてないからわからないよ」

「そっか。…じゃあこれからすればいいんだよ」

「え?」

「陽向くんって感情表に出すの苦手でしょ?だから私みたいにすれば自然と感情を出す事ができるってこと!どう?」

どうって…。一般人がやる分にはなんか痛い気がする。

「それに、鈍感だから人の気持ちにも気付いてくれないし…」

「え?」

「ん?なんでもないよー」

はぁ、相変わらず読めないな。そもそも陽向の目じゃ演技か演技じゃないのかさえ分からない。

「ふ、でも私の気持ちに気づけるわけないかー。まずは素か演技か見極めれるようになってからだね!」

少女漫画の主人公のようにびしっと陽向を指しながら言う。さすが、変装しているとはいえ隠せないビジュアルとポージングで様になっている。

「そうだな。また、まいが弱みを見せてくれるように頑張るよ」

「えー、弱み以外も見てほしいなーなんてね」

自分からそんなことを言ったのに恥ずかしくなったのか、まいの耳が少し赤くなる。

「恥ずかしがるくらいなら言わなきゃいいのに」

「うるさいなぁ!もう…」

そんな他愛もない?話をするこの時間が楽しいと感じる。

まいに言われた通りこの感情を色で例えるならどうだろう。

「橙色…」

「え?」

あれ?声に出てた?

「あ、いやなんでもない」

「いやいやちょっと待ってよ!さっきの感情の色の話でしょ!しかも橙色って、私のオレンジと差別化したいの!?」

「そうじゃないって。ただ、もしかしたらまいと同じような気持ちかもって思ったらなんかさ…」

「ほら差別化しようとしてる」

むぅっとほほを膨らませるまいを少し可愛いなと思う。

いや、いけない。まいは女優だしそもそも演技かもしれないのだ。

「陽向くんってちょくちょく私が女優ってこと忘れるよね」

「俺の思考読んでんの?まぁ、どっちかっていうと女優より友達って感じがするけど」

「ふふ、嬉しい。1つ夢が叶っちゃった」

「え?」

夢って誰もが知っている女優になることじゃ…?

「私の事を友達として見てくれる人がずっといてほしいなって思ってたの。陽向くんはきっとそう思ってくれてるって信じてたけど確信は持てなかったから」

予想外の返答に少し恥ずかしくなる。

「あ、照れてる?」

「照れてない」

「あ!嘘ついた!女優さんの目はごまかせないよ~」

ここぞとばかりにいじってくるまいに嫌気がさすと思っていた。でもそんなことなかった。むしろ心地いいというか。

「そもそも最初はまいの方から話しかけてきたじゃん。あの時俺が拒絶してたらどうしてたんだよ?」

「アタックするのみ!陽向くんが折れるまで」

…素直にまいを受け入れてよかった。

「でも懐かしいね。なんだかんだ出会ってから結構経ってるんだよ」

そう言って急に思い出話をしだすまい。

その声が心地よくて目をつむって自分もこれまでのことを思い返す。

ほんと、まいとは不思議な関係だ。

でも、今日の会話でその関係に”友達”とちゃんと名前が付いた気がする。

それが今日の収穫だ。

でも…、友達だともやっとする。まいの事情を知る数少ない内の1人、まいの唯一といってもいい大学の友達。それだけでまいの中では特別な立ち位置なのに。

その気持ちの理由をまだ知らなかった。

ただ、心がずっとポカポカしていた。


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