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「あ、ここ」
アパートの前につき、車を止めてもらう。
「陽向くん!」
「え?」
なぜかアパートの前にいるまい。
車から降りて、まいの元へ向かう。
「ドアの前待ってるんじゃなかったけ」
「怪しまれるかなーって思って」
久しぶりにあったまいは前よりも変装が濃くなっているようで、まいの認知度が上がっているのを感じる。
「こんばんは。陽向の父です」
「初めまして、こんばんは。一色まいと言います。陽向くんとは同じ大学で、仲良くさせてもらってます」
「そうか。陽向にガールフレンドなんて、明日隕石が落ちてきそう……ん?」
ふと、父さんがまいの顔をまじまじと見始めた。
あ、ばれた!?
「……どうかしましたか?」
「いや、どこかで見たことあるような気がして……」
「と、父さん!送ってくれてありがとう。ちょっと急いでるからまた今度」
「あ、あぁ。たまには帰ってくるんだぞー」
「うん。わかった」
やっと父さんが帰り、まいと一緒に部屋へと向かう。
「ごめんな。父さんノリがうざい奴だから」
「そんなことないよ。面白い人だったよ」
鍵を使ってドアを開けると真っ先にまいが部屋に入る。
「あぁ〜、やっぱり落ち着く〜。なんでこんなに落ち着くんだろうね」
「まいが物好きだからじゃない?」
「あはは、そうかも」
まいが笑いながらちょこんと床に座る。
「あ、お父さんとお母さんになら私のこと言ってもいいよ。陽向くんにはお世話になってるから」
「……そう」
久しぶりのベッドに腰掛けるとまいもその隣に座る。
「……で、話って?」
「そんなド直球に聴いちゃうんだ。もうちょっとムード楽しもうよ」
「ムードも何もないだろ」
あはは、とまいが笑ってふぅと息をはく。
「ドラマだったら、女の子の心配しながら飲み物出したりやさしい言葉をかけてあげるもんなんだよ〜」
「そう言うの知らないし」
「だよね。陽向くんはそうだろうねって思った。知ってたら逆に引いてたかも」
「じゃあなんでいったんだよ」
「未来の陽向くんへのテクニック紹介かな?」
「どう言う意味だよ」
「陽向くんも彼女作った方がいいと思うからね〜。陽向くんみたいな優良物件中々居ないのになんで女子たちは気づかないのやら」
「優良物件って……ん?」
陽向くん"も"?
「え?ちょっと待って、まいって彼氏いるの?」
「いないよ」
「あ、なんだ」
あくまで芸能人だし……もし彼氏ができるとすればイケメンなんだろうな。
「……まぁ、そんな優良物件な陽向くんに大事な相談があります」
「……………何?」
さっきまでわちゃわちゃ(?)と話していたのに、まいの一言で急に空気が重くなる。
「大学、そろそろ単位やばい。入りたいゼミにも入れなくなるかもしれない」
「え?」
俯いて、細く小さな声でまいは言った。
「でも大学を中退したくないし、今の活動をやめたり休止したくもない。今がピークだから休止するだけでも大きな損害が出る。ねぇ、どうしたらいいと思う?」
顔をあげ、陽向と目を合わせてくる。
やっぱり、美少女だ。
今にも泣きそうな目で上目遣いをするまいを見てファンはどう思うのだろう。
そして、生まれ持った素質を持つまいは自分のことをどう思うのだろう。
「でも、どっちか優先させないといけないと思う。一番大事なのはまいの体調。それに、今夏休み中だからほぼ大学行ってないと考えてもしっかりした休みは取れてる?」
「……取れてないよ。でもそれは大学が休みなのを前提にスケジュールを組んでるから。終わったら少しは仕事が減るはず」
「でも、増えた休みが大学に行く時間なのは違うと思う。まいがちゃんと休むための休みじゃないと意味がないって、俺は思う」
まいが心配しているのは大学の事、仕事の事。
でも、俺が一番心配しているのはまい自身のことだ。
「陽向くん、きみはすごく家庭に恵まれてるんじゃないかって思った。でも、学校では除け者扱いされた。私は……その逆だよ」




