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「用事ってなんだ?バイトか?」

助手席に座り、久しぶりに父さんの運転している姿を眺めているとそう聞かれた。

「いや、バイトじゃない」

「お、じゃあ彼女か?」

「は!?違うし。彼女ではないし……」

「なるほど、とりあえず女ってことはわかった」

「…………」

ぐうの音も出ない。

やっぱり父さんにも母さんにも勝てない。

「懐かしいな。陽向が助手席に座りたいって始めた頃が。確か、4歳の時だったな」

急に思い出話を始める父さん。

といっても、そんな昔のことは覚えていないので何も知らないまま話を聞く。

父さんの隣に座っていたのが物心ついた頃から当たり前だったから。

自分しか使わないチャイルドシートがついていたのも覚えている。

「その前までずっと後ろに座っていたのに、急に『お父さんの運転しているとこ見たい!』って言い出して、わざわざチャイルドシート動かすのが面倒だったなぁ。しかも、ショッピングモールの駐車場で。その前は母さんの特等席だったのに」

普通に聞いていたらただの小話だが自分の話となると恥ずかしくなる。

覚えていないと余計に。

「少ししてから、『運転できるようになりたい。自分の車で、お父さんに助手席座ってもらう』って、あの時は嬉しかったなぁ。でもな、陽向」

急にこっちを向いて父さんと目があう。

「助手席には俺みたいにいい彼女でも妻でも乗せてやれ。いつか子供にも座らせてあげろ。俺だって孫の姿は見たいからな。あ、もちろん俺も座らせてくれよ」

「……わかった」

免許も車もいらないと思っていたけど、やることが増えてしまった。

それに……やっぱ結婚した方がいいか。

あまりそんな願望はなかったけど。


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