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何もない毎日。それをつまらないと思うか、そのままでいいと思うか。

人の感性はそれぞれだ。

朝起きて、学校に行ったり仕事に行ったり。自分がしなければいけないことをする。夜帰れば寝て、また繰り返す。そんな毎日。

でも、毎日が同じ日ではない。

俺は、そのことをよく知っているから。


『ニュースです。東京都〇〇区の小学校の生徒が死体で発見されました。警察は自殺と見て捜査を進めています』

『小学校では定期的にいじめアンケートも行なっていたそうです』

つけっぱなしだったテレビからニュースが流れる。

さっきまでバラエティ番組だったが、いつの間にか終わっていたようだ。

ニュースも好きではないけれどバラエティ番組の方が嫌い。

人々の笑い声がまるで自分に向けられているみたいで。

ちょっとしたいじりの言葉でさえ胸を掠めてしまう。

……なんでテレビなんて買ったんだろう。

他の番組でさえまともに見ることはないのに。

売ろうかな。少しでも高く売れれば大学生活の足しにもなる。

そんなことを考えてもめんどくさくて、行動には移せなかった。


「はぁ……」

今日の講義が終わり、ため息をつきながら校内を歩く。

サークル活動をしている人たちを横目に見ながら図書館へと向かう。

「ねぇ、ちょっと君」

ピタリと足が止まると。

誰かに声をかけられた。女性の声。

「なんですか?」

振り向いてみるとスタイルのいい女の人が。

帽子にメガネをかけていて顔はよく見えないけどニコッと笑った口元が親しみやすさをもたらす。

「ちょっとお茶でもしない?校内にあるカフェでさ」

謎すぎる誘い。これは世間的にいう逆ナンパというやつか?

「……なんで俺に」

「いいからいいから。さ、いこっ」

パッと手首を掴まれて、そのまま連れて行かれる。

もう諦めてカフェまで連れて行かれると、二人席に座らせられる。

勝手にコーヒーを頼まれて、彼女も椅子に腰掛ける。

「これから用事があるから簡潔に聞くんだけど、笑い声が苦手なの?」

「え?」

どうして知っている。あまり顔に出ないようにしてたのに。

「さっきの講義できみの後ろの席に座っていたんだけど、笑い声が聞こえるたび震えていたから。それとも大きな声が苦手?」

「…………」

何も言えない。急に初対面で名前も知らない人に言うことなんて。

「雨宮陽向くん、って名前だったよね。最近講義受けてなかったから合ってるか心配だけど。あ、私の自己紹介まだだったね。私は、一色まい。よろしくね」

「……よろしく」

いや、ちょっと待て。なんで俺の名前知ってるんだ!?

「なんで俺の名前……」

「え?同じ講義とってるって言ったじゃない」

ああそう言うことか。

「で、どうなの?笑い声」

「……」

「やっぱ言ってくれないかぁ」

ふぅとため息をついてコーヒーに口をつける。

「じゃあさ、私の秘密教えたら答えてくれる?」

「え?」

秘密?秘密も何も出会ったばかりの人に言うとは。

「君、意外と気づかない鈍感くんだもんね」

「……鈍感」

なんだかなめられているような気がする。

「私の芸名はね、むすびまいっていうの」

メガネだけを外しながらそう言う。

「むすび……まい?」

誰だ?

「え!?ちょっと待って、わからないの?今人気爆増中の売れっ子女優だよ!?」

「えっと、それ自分のこと言ってるんだよね。恥ずかしくないの?」

「まぁ恥ずかしいけど……。人気が上がっていることを肌で感じるのは自分自身だからね」

とりあえず有名人だったのか。帽子に眼鏡……なんか典型的だな。

「そっか、陽向くんはテレビを見ないような現代っ子だから知らなかったかぁ。あ、ちょうど今日ドラマあるから見てみなよ。そろそろ撮影だから、じゃあね」

すっと立ち上がり、椅子に置いていたカバンを肩にかける。

「え?ちょっ、は!?」

どういうことだ?

手を振られたと思うと、すぐ早歩きでカフェから出る。

……一色まい。

何故かその名前が頭の中で反響した。


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