踏んだ者たち
私はきっと神様に罰せられる。
いや、それだけではなくきっと神様は私のことを知らないと言うだろう。
何故なら私は生きるために神様を否定したからだ。
「三郎が殺されたって」
幼馴染の死を羨ましく思う。
彼は意志の強い人だった。
なにせ、私と違いあの場面で神様を否定しなかったのだから。
「踏んで良かったわね」
妻の言葉が胸に突き刺さる。
悪意のない言葉。
きっと、心から思っている言葉。
それが私に罪を自覚させる。
「あんたが変なものを信じ始めたから私、とっても心配だったの」
妻の笑顔が心に刺さる。
神様を否定して生きながらえた命に何の意味がある?
そう自問しながらも私は妻へ言っていた。
「本当に自分でもどうかしていたよ。あんなものを信じていたなんて」
あの日、強く踏みつけた感触が蘇る。
生きるためには踏まなければならなかった。
神様はきっと許してくださるとそう思っていたのに。
他の皆が躊躇いなく命を捨てたことで私は自らの過ちに気づいたのだ。
「本当にどうかしていたよ。自分でもそう思うさ」
そう呟きながら私は泣いた。
泣き続けた。
踏み絵を踏んだあの時間に戻りたいと願いながら。




