「沈黙の猛攻」作戦の立案
アリアの発見は、精鋭部隊に新たな希望をもたらした。彼らは、この「睡眠」の時間を狙って、異次元生物への反撃を開始する作戦を立案した。それが、後に「沈黙の猛攻」と名付けられる作戦だった。
作戦会議室では、精鋭部隊の四人と指導者たちが、詳細な計画を練っていた。
「異次元生物が最も活動を停止する時間帯は、深夜から未明にかけての約三時間です。この間に、我々は最大限の融合魔法を叩き込む」
アリアが、ホログラムに映し出された異次元生物の活動パターンを指し示しながら説明する。
「ならば、接近手段が重要になる。奴らが眠っているとはいえ、万が一にも目を覚まさせるわけにはいかない」
ライルが眉間に皺を寄せた。 「俺の風の魔法で、音を立てずに接近できる。風の壁で姿を隠し、気配も完全に消し去る」
ライルは、静かにそう提案した。彼の風の魔法は、単なる攻撃だけでなく、隠密行動にも極めて優れていた。
「異次元生物は、光の供給が停止しても、その肉体はまだ強固だ。防御を固める必要がある」
ガロードが重々しく言った。 「俺が、土の魔法で盤石な防御陣を築く。奴らが目覚めて反撃してきたとしても、一時的にだが耐え切れるはずだ」
ガロードは、これまで築き上げてきた防御魔法の知識を全て結集し、敵陣深くで展開する防御陣の設計図を提示した。
そして、最も重要な攻撃手段について。
「最後に、私が全力の融合魔法を放つ。この炎が、奴らの無限の光を打ち破る!」
フレイアは、燃えるような瞳で宣言した。彼女の自信は、もはや傲慢さではなく、確固たる決意に満ちていた。
「フレイアの最大火力を、ライルの風で正確に誘導し、ガロードの防御で守る。そして、私の水で、その全ての力を一点に集中させる。これが、真の融合魔法だ」
アリアが、静かに、しかし力強く付け加えた。彼らは、互いの強みと弱みを完全に理解し、それを補い合うことで、単なる足し算ではない、相乗効果を生み出す「融合魔法」を完成させたのだ。
希望の夜明け:人々の期待
精鋭部隊のこの発見と、融合魔法の完成のニュースは、地下シェルターにいる人々にも徐々に伝わっていった。
「聞いたか!? 魔法学校の精鋭部隊が、あいつらの弱点を見つけたらしいぞ!」 「本当か!? あいつらが眠る時間があるって!?」
人々の間に、微かな、しかし確かな希望の光が差し込み始めた。これまでは、ただ死を待つばかりだったが、反撃の可能性が生まれたのだ。
「フレイア様やライル様たちが、きっと私たちを救ってくれる!」 「水のアリア様も、土のガロード様もいる! あの四人なら、きっとやってくれる!」
人々の会話には、希望と期待が入り混じっていた。彼らは、精鋭部隊の魔術師たちの名前を呼び、その成功を祈った。
久留米の街は、まだ傷ついたままだった。空の亀裂も、異次元生物の脅威も、完全には消えていない。しかし、その夜、精鋭部隊は、人類の命運をかけた「沈黙の猛攻」を開始する準備を進めていた。核の落日によって一度は文明を失った地球に、魔法という新たな夜明けが訪れ、そして今、その魔法の光が、再び差し迫る暗闇を打ち破ろうとしていた。それは、人類が自らの手で生み出した、新たな「力」が試される、決定的な瞬間だった。