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当たり前

 それからクロエは少し落ち着きを取り戻し、2人はときどき短い会話をしながらベッドにとなり合って座っていた。シャルロットが思いついたかのように立ち上がって、クロエの部屋のドアを開け、入り口に置かれていた料理のトレーを部屋に運んだ。


「食事とらないの?要らないならもらっちゃおうかなー?」


 シャルロットはクロエが一昨日の夕食から食べていなかったことをキャロラインから聞いていた。ついでにドアの前に朝食を置いたことも。シャルロットはスプーンでスープを飲もうとした。


「あっ……ずるいわシャルロット……私……おばあさまの作った料理なんてい、いらないけど……お、お腹は空いてるもの……目の前で食べられたら……へ、平気よ、全然!」


 クロエはドキっとして平静を装おうとしたが目が泳いでいる。彼女はシャルロットと話したことで張り詰めていた糸が解けて極度の空腹を感じていた。シャルロットはクロエの焦っている様子を見て面白そうに笑って、朝食の載ったトレーをクロエに差し出した。


 クロエは「い、いらないもん!」と突っぱねたが、シャルロットが「じゃあ、もらっちゃおう!」とトレーを引くと「ああっ」と声を上げてから「やっぱり食べる!」と言ってトレーを奪い取った。

 そして、急いで食べなければシャルロットに取られてしまうというくらいのスピードでガツガツと朝食を食べきった。それを見たシャルロットはさらに笑った。


 クロエは食事を終えた後、どっと眠気を感じてベッドに横になり、すぐに眠ってしまった。シャルロットはクロエが目を覚ますまでの間、何度か家に帰ろうかともよぎったが、結局最後まで付き添った。



「わたし……おばあさまと話してみてもいいわ」


 寝起きのクロエはぼんやりとしながら言った。


「わたし……夕飯も食べたいもの」


 シャルロットは少し驚いた顔で、何も言わずに大きくうなづいた。


「シャルロットも一緒にきてくれる?」


 クロエの問いかけにシャルロットは少し悩んで答えた。


「いや、私はいないほうがいいと思う。これはあんたとキャロラインさんの問題だから」


「でも……」


 クロエはまた情緒不安定になった。次の言葉が出てこない。シャルロットが代わりに続けた。


「でも、話し合わないとずっとこの問題は解決しない。あんたはキャロラインさんのことをずっと裏切り者だと思って生き続けることになるわよ。キャロラインさんが裏切った理由も知らないままにね。お先の人生真っ暗だわ。言い訳くらいさせてあげればいいんじゃないの?それが納得できなかったら改めて嫌えばいい……嫌いになるのはいつでもできるもの。側にいられるのは今しかないのよ」


 クロエは瞳を見開いた。キャロラインはクロエが生まれたときから側にいて、クロエの面倒を見てくれた。母親が病気になったときも食事を作ったり、身の周りの世話をしてくれた。父親が出稼ぎに出た後も、ただ1人クロエの側にいて、いつでもクロエの味方でいてくれた。


 いつでも側にいるのが当たり前だと思っていた。母親も父親もそうだと思っていたのにクロエの前から消えてしまった。「今」キャロラインが側にいるのはけして当たり前ではないのだ。クロエの心に電撃のような衝撃が走った。それは目の前のシャルロットだって同じだ。彼女が今ここにいてくれるのは奇跡なのだ。クロエは湧き上がる感情にぶるるっと震えて何も言えずにシャルロットに抱きついた。シャルロットは日が暮れるまでクロエと一緒にいた。そして「見送りはいらないわ。食事までに帰らなきゃ」とそそくさと帰っていった。




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