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シャルロットの家族

 夕日を右に重い足取りで歩いている少女がいる。短い髪をした背の高い少女だ。そう、シャルロット・エマーソンである。彼女はクロエと別れ、1人で家に向かっていた。彼女はずっと考え事をしていた。そしてひとつの答えに辿り着いた。ロボットやジャミールとは友達になりたくない。


 最初はロボットに興味があった。物珍しかったからだ。しかしシャルロットの思い描いたロボットは、絵本に出てくるようなファンタジックな夢にあふれているロボットだ。リチャードのヘンテコな性格はシャルロットの理想のロボットとはかけ離れていた。ジャミールも話が面白くないただの根暗なおじさんだった。


 気が合いそうにない。何よりクロエが2人に熱を上げれば上げるほど寂しい気持ちになった。




「今帰ったわ」


 シャルロットは気だるく玄関のドアを開け、そのままリビングに行きソファーにドカっと座った。


「ああ」


 長兄のジョルジュが面倒くさそうに反応した。次兄のアンドリューはチェスの盤を不機嫌に見つめたまま何も言わなかった。シャルロットはチェスに興味がなかったので盤面を見てもどちらが優勢かわからない。気にもならない。


 渋い表情をしているアンドリューが劣勢のようだが、彼が今後逆転の一手を見いだそうが、ただ劣勢なままズルズル負けようが、そんなことはどっちでも良かった。


「チェスなんて何が面白いのかわからない。根暗なゲームだわ。私は外でフットボールがしたいわ」


 彼女はやるせない気持ちを皮肉にして兄弟にぶつけたが、彼らは意に返さず、真剣な表情でチェス盤に向かっていた。


「シャルロット。あなたはいつになったら男の子の遊びから卒業できるのかしら?」


 母親のマリーが自慢のロングヘアーをクシでとかしながら上目遣いにシャルロットを見つめた。


「私は私。私らしさから卒業するつもりはないわ!」


 彼女は両手でサッと短髪をかき上げると一度立ち上がって右腕をぐるぐる回して肩のストレッチをしながら、そのままドカっとソファーに座り直し、左肩のストレッチも済ませて、首をコリコリと鳴らした。


「シャルロット、はしたないわ。もっと素直に女の子らしくできないの?」


 マリーは残念そうな目でシャルロットを眺めた。シャルロットはいつものごとく不愉快そうに目を細めた。


「今あなたの目の前にいるのが素直な私よ!お願い、少しはくつろがせて」


 彼女はぶっきらぼうに答えた。マリーは無理に笑顔を作ってシャルロットを見た。シャルロットには母親の作り笑顔が気持ち悪くて仕方がなかったが、そんなことなどお構いなくマリーはシャルロットのほうに体を預けて話を聴く体勢に入った。


「今日もクロエとお屋敷に行ったんでしょ?どう?ロボットとは友達になれた?」


 マリーは娘のことを何でも知りたがり、また話さないとうるさいので、シャルロットは1日の予定を朝話すことが習慣になっていた。その日の朝もシャルロットはクロエと森の中の屋敷に出かけることをマリーに話していた。帰宅すれば、母親は朝の話の続きを聞きたがる。


 常に娘の動向を把握しておきたいのだ。思い過ごしかもしれないが、ジョルジュとアンドリューも耳をそばだてている気がした。シャルロットはソファーにもたれかかって天井のランプを見つめた。


「クロエとロボットは友達になったみたいよ。でも上手くいくかは知らない」


 そう言ってから体を起こして首をひねった。


「あら、どうして上手くいくと思わないの?」


 マリーはいつの間にかシャルロットに体を寄せてきていた。シャルロットはうんざりした気分になりながらも話を続けた。


「うーん、話してみてあまり言葉が通じなかったのよね。友達とは楽しく話したいじゃない?あのロボットには気を使う必要がありそう……なんていうのかな、そうだ、コミュニケーション能力が低いのよ。まあ、ロボットだから仕方ないのかもしれないけど……」


 シャルロットは言葉にしてみて引っかかっていたことの正体に気づいた。そうだ、あのロボットにも言えるが、創造主のジャミールもコミニュケーション能力が低い。


「それは……」


 マリーは何故か口ごもった。アンドリューがようやく駒をひとつ動かして小声で呟いた。


「おまえだってクロエ以外に女友達いないくせに」


「何か言った?」


「……いや、何も」


「ああ、そう」


 シャルロットはふんっと鼻を鳴らしてうなずいた。あの屋敷に行くのが億劫おっくうになる気持ちの理由がはっきりして、彼女はまたソファーにもたれかかった。


「人間関係って難しいー」


 やるせない気持ちが大声になっていた。


「おまえが、がさつだからだろ」


 ジョルジュが皮肉を言ってきたが、シャルロットはいつも通り無視をした。その後はマリーが今日の出来事の詳細を迫ってきたのでシャルロットはしかたなく答えた。リビングで報告しておかないと部屋まで乗り込んでくる母親だ。


 シャルロットは自分の部屋には家族を入れたくなかった。たったひとつの彼女の安らげる場所だ。シャルロットは今日の報告が終わると足早に自分の部屋に逃げ帰った。




「あー、めんどくさい」


 部屋に戻ったシャルロットはうなだれてベッドに座った。しばらくして、


「明日どーしよーかなー」


と言いながら後ろに倒れた。彼女はしばらく悶々《もんもん》と過ごしていたが、お風呂に入って寝ることにした。ロボットのこと、クロエのことは明日考えようと決めたのだ。

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