表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/52

再会

「うーん、ここで待っていても何も進展がないわね。もう少し近づいてみましょうか?」


 しばらくの間は屋敷の庭の茂みでロボットが出てくるのを待っていた2人だったが、シャルロットのほうが先にしびれを切らして話を切り出した。クロエもすぐに乗ってくると思ったが、彼女は意外と辛抱強かった。


「いいえ、待ちましょう。黒い影が太陽の下に姿を現すまでね。光の中にあってもまだ黒い影なのかどうか気になるわ。どんなに陰湿なものでもお日様の下では少し陽気になってしまうものよ。吸血鬼でなければだけれど」


 右手に青い花を握りしめたまま、真剣な顔で答えた。普段おちゃらけているクロエにそんな表情をされたら、シャルロットは黙って首を縦に振るしかなかった。


 それに、彼女も黒い影を恐れていたので、明るいところで正体を暴くのはいいかもしれないと思った。


 そのまま時間だけが前へ進み続け、1時間は経っただろうか。ようやく屋敷の扉が開くのが見えた。


「何か出てくるわよっ。黒い影?それともロボット?」


 先に反応したのはシャルロットだった。すっかり待ちくたびれていた彼女は、小鳥が初めて鳥かごから飛び出したときのような弾む声を出した。一方、クロエは遅れをとってしまってシャルロットのテンションに乗り遅れた。しかし、扉からのっそりとロボットが出てくるのを確認すると、


「きゃー!我が愛しのスコティッシュ・リリィだわ!」


 と甲高い声をあげたので、今度はシャルロットがついていけなかった。シャルロットはこの声がロボットに聞こえてしまうのではないかと焦って、慌ててクロエの口元を手で塞いだ。だが、距離があったのでロボットの耳には入らなかった。ロボットは警戒する様子もなく、のっそりと二足歩行で屋敷を出て、回れ右をしてそのまま右に向かって歩いていった。


 2人はロボットの所作しょさをマジマジと見つめ、好奇心から瞳を見開いた。ロボットが奇妙な物を持っていたからだ。彼は左手に取っ手のついた桶を持ち(というより引きずり)肩から布の鞄を提げていた。


 そして何より少女たちの目を惹いたのは右手で引きずっていた長い木の枝だ。枝の後方には時おり光の反射でキラキラと細い糸が見えた。

 そう彼は釣り竿を引きずって森の中へと消えていったのだ。


「ちょっと何?あのロボット、洗濯だけじゃなく釣りまでするの?」


 シャルロットの瞳は今にも飛び出しそうな程、大きく見開かれた。


「スコティッシュ・リリィは、魚が大好物なのよ!だって猫だし。消化酵素はどうなっているのかしら?あら?先日屋敷で見たときはバッテリーのようなもので充電してたような気がするわ。まあいいわ。ロボットだもの電気も必要ね!とにかく素敵だわ!」


 クロエはいつも通り雄弁になって瞳を輝かせた。そして2人は昨日のロボットの洗濯を思い出したのか、お互いの顔を見てクスクスと笑いあった。


「ねえ、後をつけましょうよ」


 シャルロットがリードした。クロエは「イエス、サー」と言って、ポニーテールを高く結んでバックパックを背負った。

 



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ