第46話 炎VS氷(ブレイズside)
対戦の直前、オレたちは睨み合った。
どっちとも決勝に進んで、ジャックと戦いたいって気持ちは同じ。
あいつなんかより、オレの気持ちの方が熱い。あんな冷めた気持ちに負けるはずねーだろ。
オレの心がメラメラ燃えるのがわかる。
絶対に勝つための戦い。
攻めて攻めて、攻めまくる。それがオレのやり方だ!
剣なんかいらねー。
オレのスキルに、剣は合わない。オレのスタイルはただこの身ひとつ。
それに対してあいつは氷でできたもろそうな剣。
すぐに折れそうなザコ剣で、オレを倒すだと?
ふざけるのもいい加減にしろ。
「準決勝に進むため、エリートクラスの生徒どうしの戦いだ。今回は特に目覚ましい活躍をしてくれているフロスト・ブリザードくんに、何かと目立つ熱い男ブレイズ・バーニング。どちらも強力なスキルの持ち主だけど、正反対。どっちが勝つのかご注目!」
風にうるさいアクロバット教師が仕切りだした。
さっきまでアホな生徒会長にやらせてたくせに。
今じゃ自分がしゃしゃり出でくるのか?
オレは気に食わなかった。
あいつの、何かと目立つ熱い男、って説明が。
「おめぇのしけた顔なんて見たくねーんだよ! もっと本気の顔で来いや!」
冷たい男は冷たい目でオレを睨む。
最悪だ。
オレはこいつが大嫌いだ。
「このまま準決勝、そして決勝まで進むことができれば、確実にジャックと戦える。ぼくの実力を試したい。彼にも通用するのかどうか」
ジャックからは聞いてる。
こいつもジャックのスキルが『適応』だって知ってるし、転生者のことも知ってるらしい。
オレのときみたいにショックはなし。
疑うこともなかったそうだ。
「じゃあ見せろや! おめぇの本気!」
喧嘩から入る対決が始まった。
***
全身に炎をたぎらせ、攻撃を構える。
真っ赤な炎がオレの全身を覆った。
炎に包まれてるときが、最高に気持ちいい。闘志ってやつが湧き上がってくる。圧倒的な実力で、フロストの野郎をねじ伏せてやる。
先に攻撃をしかけたのはもちろんオレだ。
広範囲に拡大した炎を、確実にあいつにぶつける。
いくら反応が速かろうが、この範囲攻撃をかわせない。
あいつの体的に炎は相当な痛手のはず。
もちろんオレも、あいつの冷てぇクソみたいな攻撃には弱い。
炎がかき消され、戦いにくい。
「ここでブレイズくんの大胆な範囲攻撃! さすがにフロストくんも──」
!!!
オレの範囲攻撃。
まともに食らうのが普通だった。
今までの対戦相手も、だいたいが今の攻撃で体力の半分を消耗する。
あいつは違った。
……スキルで出した雪でかき消しやがった……。
──上等じゃね―か。
戦いがいのあるやつだ。
「おい! 次はおめぇが攻撃してこい! オレが全部焼き焦がしてやるからよ!」
あいつは冷たい目でオレを見て、間髪入れずに氷のつららを放ってきた。
挑発すればすぐに乗ってくるってか?
あいつの攻撃に隙なんてない。
連続攻撃もいい加減にしろ。飛んできた氷、雪を溶かしてばかり。
刺激が足りねぇーんだよ!
「ファイヤーブースト!」
でっかい火の玉をあいつの足元に投げる。
視界を奪う。
で、そっから、あいつでも冷却できないレベルの炎を繰り出してやる。
ファイヤーブーストでやつの周囲を全部炎で包んだ。
オレは後ろにまわり、火力を上げて──。
「単純だ、攻撃が」
霜がオレの方に勢いよく噴射された。
炎をいくら出しても、やつが霜を出すスピードに追いつけない。くっそ。
「これはフロストくん、ブレイズくんが油断しているところを狙って確実な必殺技。こんな隙の突き合いの多い試合は見たいことがない。いい風だ!」
何が隙の突き合いだ!
何もわかってねーじゃねーか、あの緑クソ教師!
フロストはオレの攻撃を回避ことと、オレへの攻撃を一緒にしやがった。
自分へのダメージを最小限に留め、で、その矛先がオレに向くようにうまく調整した。
オレが普段何も考えてないように見えるか?
あ?
戦いに関して、オレはジャックよりも、はるかに考えてんだ!
「風野郎は黙ってろ!」
火力100パーセント。
赤い炎も青くなり、オレが耐えられる限度をも超えようとしていた。
まだ準決勝・決勝が待ってる。ここで体ぶっ壊すわけにはいかねー。
この1発で、フロストを打ちのめす。
「マッドネスブースト!」
最高火力で、それも1メートルないくらいの近距離で。
全身の炎をやつだけに集中させ、放った。
「オレは決勝でジャックを倒し、優勝する! おめぇはただの通過点だ!」
「きみは……強いな……」
攻撃を受けたフロストは、煙を上げて地面に倒れていた。
なのにまだしっかり目を開いて、オレのことを見てやがる。
別に心配するつもりはねーけど、早くくたばって医務室に行けよ、バカ。
その目は冷たく感じなかった。
焚き火の炎みたいな、緩い目だった。
「優勝への執着……思いの強さが、きみを勝利に導いた……やるじゃないか」
いつもだったら、上から目線に何を言いやがる、なんて言うかもしれねぇ。
「おめぇも強かった」
準々決勝で戦った相手への、礼儀だ。
次は準決勝。
そこでも勝って、絶対優勝してやる。