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第42話 タイフーン先生の提案

 親友からの温かいサプライズ。


 あとでこの日のことを散々ネタにされることになるのだが、俺はゲイルの気持ちがすごく嬉しかった。

 わざわざ手紙を書いて、それを読んでくれるなんて、前世の日本では起こらない。


 頼りになる、優しい親友がすぐそばにいる。


 きっと、今日のことも真剣に受け止めてくれるだろう。


「ゲイル、今日のことで話しておかないといけないことがある」


「おっ、早速相談か。オッケー」


 で、結局夢中になって全部話していた。

 フィールドでオーナーと戦ったことも、リリーとハローちゃんの喧嘩でカオスな状況になったことも、話の中心からはそれるが、楽しんで話した。


 ゲイルの方は見ず、ただただ話していた。


「──タイフーン先生は、伝統だからベストウォーリアートーナメントは強行されるだろう、って……」


 最後の方まで言い終わったところで、ふとゲイルを見た。


 ゲイルはベッドに横になり、もうぐっすりと寝落ちしている。

 話は明日でもいいか。


 今日はゲイルだって疲れてるんだ。

 俺も素直に寝よう。なかなか寝つけなかったものの、体の疲れは正直だったので、30分くらいで気づけば寝ていた。



 ***



「キミたち、昨日は楽しめたかい? ボクは門番の担当になってて、自由じゃなかったな。でもキミたちがしっかり休めたようでよかった」


 今日のホームルーム。

 イーグルアイ先生は出張で不在らしいので、タイフーン先生が教室に入ってきた。


 このタイミングでイーグルアイ先生が出張。


 考えすぎかもしれないが、俺が言った包帯男のことも関係してるんじゃないか?

 

「今日からはまた、ベストウォーリアートーナメントに向けて動き出そう。どの授業でも、本戦に関係するような内容を用意してくれるはずだ。アクロバットの授業でも、実際の戦闘に役立つ体の使い方を教えよう。それじゃあ、ホームルームは以上! ジャックくんはボクのところまで来てくれ」


 他のクラスメイトが1時間目の授業の準備をする中、俺は教室の外に呼び出された。


 昨日のことだろう。


 学園長に報告してくれると言っていたが、結局トーナメントは開催されることに変わりないわけだ。

 そのことを伝えたいんだろう。


「ジャックくん、すまないね、わざわざ」


「いえ」


「学園長にも伝えたけど、ボクの予想通り伝統は伝統だ。それに、多くの生徒が楽しみにしている学園行事を奪うわけにはいかない」


「やっぱりそうですよね」


「でも、キミは他の誰よりも危険だ。今、ブレインがその調査に赴いている。本戦でジャックくんが出場すれば、イージーターゲット──簡単に狙うことができる。だから……今回のトーナメント、棄権してくれないか?」


 ……。


 合理的な判断だ。


 タイフーン先生の言っていることは間違ってない。

 俺を守るためだったら、俺が試合に出ずに先生たちのところで大人しくしていることが1番安全だろう。だが、そしたら……。


「俺は……棄権したくはないです」


 自分勝手なことはわかってる。

 この判断で、俺は死ぬかもしれないし、他の人も危険にさらすことになるかもしれない。


 その状況でも、どうしても出場したかった。


 俺との対決を心待ちにしている仲間たち、優勝という栄光──出ないわけにはいかないんだ。


「そう答えるだろうと思った」


 タイフーン先生はため息をついた。

 最初から諦めていた、とでも言いたげだ。


「学園長にそう伝えるよう言われてね。でも、強制的に、とは言われなかった。ボクとしては、戦わせてあげたい。キミのその答えが聞けてよかった。ボクたち教師陣が、全力でキミを守るし、何かあればあの学園長が解決してくれるだろう。キミは何も心配せずに、トーナメントだけに集中してくれ」


「先生……」


 俺は何度も礼を言った。


 今までだったら、そう言われても心配でしかたなかっただろう。

 だが、先生たちは頼りになる大人だ。俺はすべての集中力を本戦に注ごう。


 タイフーン先生は満足したように頷くと、風とともに職員室に去っていった。



 ***



 俺は、ベストウォーリアートーナメントに出る。


 そして、優勝する。


 すべての集中を本戦に向けるため、この日から俺は黙々と練習を重ねた。

 夜も、みんなが寝ている中、ひとり空き教室を使って訓練。6時間の睡眠時間はしっかりと確保するようにした。


 スキルにも磨きをかける。

 ドラゴンとの戦いで熟練されている炎に加え、フロストとの訓練をしたことで吹雪も起こせるようになった。


 能力の変化と進化についていくためには、肉体の強化も必要不可欠だ。


 体力向上のためのランニングと筋トレ。

 技を繰り出し続けて強い負荷に慣れる訓練。

 スポーツ選手並の運動量だったんじゃないかと思う。


 フロストとゲイルはたまに練習をともにすることがあったが、ブレイズはずっとひとりで練習しているらしかった。

 このトーナメント、もしかしたら俺よりも気合が入っているのかもしれない。ブイレズはまだ、俺のスキルを炎系だと思っている。そして、自分よりも俺の方が強い炎を出せることもわかっているはずだ。


 だが、絶対に俺をライバル視し、勝とうとあがいてくるだろう。

 俺も、ブレイズに負けないように努力しないと。


 そうして日々努力を重ねた。


 ***

 

 ついに、この日が来た。

 いよいよ今日の夜から前夜祭が始まる。


 最初の主役は俺じゃない。ブレイズでも、フロストでもない。

 そう、前夜祭での主役は、俺の親友ゲイルとハローちゃんだ。

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