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第1話 無能と言われ、退学と脅され

「お前みたいな無能のクソが、なんでオレと同じクラスにいんだよ!」


 ブレイズはいつもみたく俺に怒鳴った。

 

 はぁ。

 ブレイズに無能だから学校辞めろって言われるの、今日で何度目だ? もう正直こっちは慣れたもんでね。ショックでもなんでもないんだよ。


「ちょっと、ジャックくんにそんなこと言ったらだめだよ! ジャックくんだって、一生懸命頑張ってるんだもん!」


 俺の隣から、俺をかばう声がした。

 これもいつもの光景だ。


 優しいなぁ、リリーは。


 クラスのほぼ全員は──いや、学園のほぼ全員は俺のことを無能のできそこないだと思ってる。

 王国で1番レベルの高い、ユピテル英才学園に入学できたのが、奇跡だった、と。


「うるせぇ。おめぇはなんでいつも無能をかばうんだ? あ?」


「だって、リリー、ジャックくんが──」


「もういいよ、リリー」


「ふぇ?」


 リリーが悲しそうに俺を見る。

 肩までかかる金髪に、うるうる輝く大きな碧眼。容姿は女神、中身は天使。純粋無垢なリリーは、他のクラスの男子生徒からもすごい人気があるらしい。


 学園に入学してからすぐ、リリーと話すようになった。

 席が隣ってこともあり、何かあれば顔を輝かせて俺に話しかけてくる。


 俺がどんなに無能でも。


「ブレイズ、俺は君が言う通り無能だ。いちいち言われなくても自覚してる」


 ブレイズが舌打ちする。


「認めてんじゃねーよ! なんなら歯向かってこいや! おめぇにプライドはねーのかクソ野郎!」


 別に俺はブレイズが嫌いってわけじゃない。


 ただ、めんどくさいやつだ。

 俺はできるだけ目立ちたくないし、静かに卒業できればそれでいい。それなのに、ずっと、毎日、毎休み時間絡んでくるんだよな。


 今は昼休憩の時間で、俺は食堂でランチを食べたあと、自習でもしようと思って教室に戻ってきていた。


 そしたら、ブレイズがいたわけだ。


 燃えるような赤髪に、炎がちらつく真っ赤な目。

 炎属性のスキルを持つ家系に生まれ、その炎の力があまりに強大になった結果がこれだ。実力は確かにある。


 ブレイズは最後に「落ちこぼれ」とかなんとか呟き、自分の席に戻った。


「ジャックくん、大丈夫?」


「ああ、全然。もう慣れてる」


「おんなじクラスメイトなのに、仲よくできないのかな?」


 リリーは悲しそうに目をうるうるさせている。

 

 可愛い。


 ついつい、俺の秘密を言ってしまいそうになった。いや、それを決めるのはまだ早いか。


 俺の目標は静かにこの学園を卒業すること。


 もし俺が本当の力を隠してるってことが知られれば、静かになんて不可能。

 目標を達成するために、というか、めんどくさいことにならないように、俺だって頑張ってるんだ。


 だが──。



 ***



「え!? 退学!?」


「うむ。もし明日からの1学期末テストで、(なんじ)がクラス1位にならなければ、学園は(なんじ)を退学処分としなければならん」


 学園長室。

 

 俺はあのあとすぐ、学園長室に呼ばれていた。

 アース学園長は俺が尊敬する先生のひとりで、かなり強い。


 もし俺が本気でやり合えば──ここで自慢はやめておくか。


 とにかく俺は学園長から退学処分の脅しをくらった。


「どうしてですか? 課題もちゃんとやってますし、成績も真ん中くらいにいますが」


(わし)(なんじ)に期待しているのは成績真ん中でも、課題を毎度提出することでもないのじゃ。クラスでは当然ながら他を圧倒しての1位──そして学年でも1位」


 さすがに表情には出せないが、うんざりしていた。

 そしたら静かに学園生活を送ることができないじゃないか。


 だがよくよく考えれば、学園長が俺に厳しくなるのも当然。


 俺は首席入学者。

 入学試験のときは周囲との実力差とか、普通の実力がどうとかよくわかってなかった。だから全力で試験を受け、結果的に最高成績で入学したわけだが……今の俺からはその風格がどこにも見当たらないってことだろ。


 困ったなぁ。

 

「そのままでいいと思っているのか? (なんじ)の実力を知らしめることの何が悪いんじゃ? 儂には見えとる。(なんじ)の本気は、儂の想像を凌駕する、と」


 アース学園長の透き通った青色の目は本気だった。


 期待、されてる。


 そこまで静かな生活を求めるなら、学園を辞めればいい。退学でもいいじゃないか。

 そう思うかもしれない。

 

 だがそうはいかなかった。


 あのとき、約束してしまった──この学園を卒業し、最強の戦士になる、と。


「わかりました。クラス1位、取ればいいんですね」


「うむうむ。そうじゃ」


 学園長が嬉しそうに微笑む。

 どこからどう見てもおじいちゃん先生って感じだ。実力は桁外れだが。


(なんじ)の実力を皆に知らしめるのだ。そのことで、皆の闘争心に火がつき、学園全体のレベルが上がる。託した、ジャック・ストロングよ」

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