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「クリスマス」に想いを込めて

作者: なぎちゃん

クリスマス、と言ったら何を思い浮かべるだろうか。サンタさん。プレゼント。クリスマスツリー。ケーキ。きっと皆自分なりの「クリスマス」があるのだと思う。かく言う私も、今クリスマスに直面しようとしている。12月23日。明後日は部活の大会だ。県の代表として出場する演劇コンクール。12月25日は私にとって決戦の日だった。ふたつの意味で。

私は、先輩に恋をしている。2年生の柊先輩はいつだってイルミネーションよりも輝いている。少なくとも私視点では。柊先輩はとにかくかっこいい。私たちの学校の演劇部はそんな先輩と同じ舞台に立てる最初で最後のはずだった地区大会を満場一致で通過し、県大会も通り抜けここまで来てしまった。部員が7人な割には頑張ったものだ。でも、これが最後のチャンス。この全国大会は、どう頑張っても最後なのだ。そしてそれと同時に、柊先輩と演劇ができる最後の日だった。それは、先輩が学校を辞めてしまうから。

私は先輩に告白する。12月24日、本番の前日に。勿論他の部員からしたらふざけるなって話だ。直前に調和を乱されるなんてたまったもんじゃない。でも、そうしないといけない理由があった。25日。本番が終わると先輩はすぐいなくなってしまう。家庭の事情らしい。だから私には24日しかチャンスがないのだ。勿論本番は明後日だから準備をしなきゃいけない。今日も部室でいつもの様に通し稽古をした。それはまるで、この先も同じ時間がずっと続くと思ってしまう程に当たり前のように過ぎていった。


12月24日。今日はクリスマスイブ。そして、第1次決戦の日。私は舞台裏で舞台装置のパネルを持っていた。パネルの反対側には柊先輩。頑張ろう、と声をかけてくれる。「好きです。」思わず漏れてしまったその一言は先輩には届かなかった。微笑む先輩を見て、私は泣くように笑った。ああ、いつも通りの今が続けばいいのに、と願いながら。サンタさんは私の願いを聞いてくれるだろうか。舞台へ上がり、パネルを設置する。スポットライトがあまりにも眩しく私と先輩を照らしていた。

夜。私たちはホテルに向かっていた。私たち演劇部が泊まるホテルはそれなりに良いところらしく、夕食が豪華だと聞いている。私はたまたまバスで先輩と隣になった。今しかない。そう思った。

「好きです。」

私は先輩にそう言った。

「ありがとう。」

いつもの調子で返す先輩。…ううん、そうじゃない。

「先輩、私の好きは…。」

言いたいことが伝わったと思ったときにはもう遅かった。先輩は涙を浮かべていた。私は少しだけ後悔した。先輩は優しく頭を撫でてくれた。その後私はホテルの部屋で1人泣いた。


12月25日。第2字決戦の日。今日は本番の日だ。舞台裏。ドレスの衣装を身にまとった私は先輩と見つめあって頷いた。覚悟はできている。最高の舞台を作ってみせる。先輩の晴れ舞台にするために。

本番2分前。アナウンスが響く。

「まもなく、花恵東女子高等学校によります……………上演致します。」

幕が、上がる。

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