2021年6月16日(水)『更生した不良の美談よりも復讐譚の方が腑に落ちる』
亜美ちゃんから連絡があった。
先日の男性との進展はありましたか、という問い合わせだった。
気乗りしないもののあと何回か会おうと思いつつも筆不精が出て、男性にも亜美ちゃんにも連絡をしていなかった。この状態でダラダラと会い続けるのは逆に不誠実だと感じ、「とても良い人だと感じたけど、私には合わなかったみたい」と本音を伝えた。
それでも亜美ちゃんは「こちらこそ良い人をご紹介できずに申し訳ございません」と謝られた。
それから互いに「謝らないで」「いえいえ、御恩を返せずに……」みたいな遠慮と謝罪を繰り返し、互いにいい加減疲れてきた頃、亜美ちゃんから「そういえば和彦さんからお義姉様がお見合いすると伺ったのですが本当ですか?」と尋ねられた。
また男性の紹介をした方がいいか聞きたかったのだと考えて、お見合いから逃げたくて策を講じているということを説明した。馬鹿馬鹿しい策であるため、もしかすると単純にドタキャンをかますだけになるかもしれないと笑い話にした。「だから他にも良い人がいたらまた紹介してくれると嬉しいな」なんてオチをつけた。
亜美ちゃんは笑って受けてくれると思いきや、何やら歯切れの悪い相槌しか返ってこなかった。
迷惑だったと悟り、「無理にじゃなくていいよ」と慌てて断りをいれたのだが、どうやらそういうことではないらしい。
なんでも我が愚弟が、私も知らないお見合い相手の名前を昔どこかで聞いた記憶があると言っていたらしい。それもあまり良い記憶ではなかったとのことだ。ちなみに中学生ぐらいの記憶で、同級生などではなかったらしい。その頃の愚弟は、私のせいで伝説の不良となった時期ゆえ、常識的な交友関係のある名前は少ない。その頃の記憶となれば大体は不良かヤンキー、はたまた暴走族だ。どちらにせよ碌なもんではない。
ゆえに愚弟にボコボコされた不良が更生し、見合い相手になったのだと察した。
ちなみに、名前についてだが亜美ちゃんは教えてもらっていないらしい。
当時の愚弟が広げた交友関係の中にある名前をピックアップされても私が知るわけがないため、お見合い相手の名前を共有してくれとは言わなかった。
けど、嫌がらせをしたいと思ったので亜美ちゃんに中高生当時の愚弟が荒れていたことを事細かに伝えた。
これにはちゃんと笑ってくれたので、安心した。




