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29歳独身OL小夜子の語り部日記  作者: 酒井伴四郎氏にはなりたくない女:小夜子


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2021年5月28日(金)『やって初めてわかること』

 春はあけぼの。


 やうやう白くなりゆく山際、少し明かりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。




 そう清少納言先生は仰っている。


 春は明け方が良いらしい。夜空と朝日が混じりあった雲は趣があっていいものと仰っている。


 素晴らしい感性だと思う。


 私では到底描けない文章だ。


 私の今朝の行動は、シャワーを浴びて身だしなみを整えたら、宅配会社に文句のクレームをつけるところから始まった。朝食は食べない。カーテンも開かない。天気はテレビを通して知る。こんな私に美しい感性を必要とする文章が書けるだろうか。いや、書ける訳がない。


 だがまあ美しい文章が書けずとも、宅配会社にクレームをつけることはできるので問題はないだろう。


「昨日届くはずだった荷物がまだ届いていないのですが」


 とりあえずそう伝えた。


 向こうは「まだここの配送センターに届いていませんね」と言い切った。その後、すぐに「荷物を持っている場所に配送連絡します」と言われた。


 この時点で私は気付いていた。


 配送センターに届いていないことで責任逃れをしているな、と。


 だが私も大人だ。今すぐ届けてくれれば問題がない。非常に腹立たしいことに変わりはないが、大人同士の先刻ご承知というやつだ。


「必要なのものですぐに届けてくださいね」


 ゆえに、そう釘を刺した。


 向こうも怒らない代わりに早く届けろという副音声を理解したのか、「すみませんでした」と謝罪という形式で早く届けることに了解してくれた。


 そこから三十分と経たずにプレイステーション5が届いた。


「やはり配送センターに届いていただろう」と文句が配達員に出掛かったが、配達員に言っても仕方ないと堪えて笑顔で受取書にサインした。


 扉を閉めて、すぐに段ボールを開封して、プレイステーション5を開封した。


 仕事なんてやってられるかとばかりに、設置、配線をこなし、バイオハザードを起動した。




 なにこれ怖い。




 自らの力だけで進めるバイオハザードというのはこんなに恐ろしかったのか。


 このシリーズをやっていた我が愚弟を見直しつつ、私はバイオハザードをやめて、プリインストールされていた『アストロ プレイルーム』というものを始めた。


 めっちゃ面白い。


 どうやら私は強くなければ生き残れない世界に向いていなかったらしい。


 清少納言のような感性もない。


 清少納言ならば「なにこれ怖い」なんて書かずにもっと趣のある文章を記すだろう。


 けれど、もはや三十路が近いと、それを悔しいとも悪いとも思わない。


 だからバイオハザードは、強くも感性も兼ね備えた菜々緒ちゃんにやらせて私はその後ろでおビール様を飲んで眺めようと思う。

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