2021年4月17日(土)『ハードルというよりもはや走り高跳び』
結論から言おうと思う。
クリエイターになる人はやはりどこか頭の作りが違うのだと感じた。
菜々緒ちゃんにエヴァを見せてみた。名前だけは知っている有名シリーズだけあり、菜々緒ちゃんも興味津々といった様子だった。序と破はそれぞれ難解な設定はありつつも、話の大枠が分かりやすい。菜々緒ちゃんも初見ではあるが、物語を楽しめているようだった。
破からQへ移るにあたって、彼女は「あのラストからどういう展開にするつもりなんだろう。あたしだったらちょっと思いつかない」とクリエイター目線で感想を述べていた。私はそれに「見てみたら分かるかもよ」と視聴を促すと「早く早く」と急かされた。
Qが始まる。
最初はキラキラした瞳だった。
すぐに頭にクエスチョンマークが浮かぶのがわかった。
終わる頃には目から光が失われていた。
「どうだった?」
呆然と画面の前で座ったままの菜々緒ちゃんに尋ねると「コメントは控えさせていただきます」と胡乱な目をされた。
可哀相なことをしたと思いつつも面白いものが見れたという二つの気持ちがあり、謝罪とお礼を込めて「最新作が今上映されてるけどこの後見に行く?」と誘ってみた。
「……もう姐さんは見ました?」
虐待され人間を信用しない動物の顔付きだった。
「まだ見てないよ」
「とりあえず今日は心の整理がつかないので遠慮します」
「わかる」
わかる。
そのあと、外食しに行こうと誘うも「今は謎に創作意欲が湧き出してるのですみませんがまた今度で」と断られてしまった。それから部屋の片隅でタブレットを持って、ずっと漫画を書いていた。休んだのはお手洗いの時と買ってきたお弁当を食べた時だけだった。クリエイターというものはストレスを作品にぶつけることで昇華できるみたいだ。おそらく良いことなのだと思う。私の時みたいにベッドの中で映画を解釈しようとあーだこーだ悩むよりも健全だ。保健体育の教科書で男子中学に勧める性欲の発散と構図が一緒だ。
しばらく放置して、気付いたら菜々緒ちゃんは寝落ちしていた。
悪いと思いつつタブレットを覗く。
綺麗な絵が漫画のコマ割りとして並んでいた。
「どうしたらこんなん思いつくのかねぇ」
これで賞を取れないなんて、ハードルが上がり過ぎではなかろうか。才能が集まるからしょうがないとはいえ、もはや走り高跳びの棒がハードルのレーンに置いてある状態に近いと思う。下手に飛び越えようとしないで、棒下を普通に走り抜けた方が早いやつだ。
そうなると高すぎるハードルは下げなければならない。高過ぎず、低過ぎず、ハードルを倒しても問題なく次に進めるようなハードルにしなければならない。
Qは私たちがエヴァに望むハードルを暴力的手腕で下げた作品だった。
シンは何が来ても受け入れられる自信がある。




