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29歳独身OL小夜子の語り部日記  作者: 酒井伴四郎氏にはなりたくない女:小夜子
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2021年4月2日(金)『好きでもないことをして生き延びていく』

 宝くじに当たって会社を辞めたい。



 特筆する何かがあった訳ではない。


 たまにこういう衝動に襲われる。


 お賃金を貰う立場を社会人になってから度々投げ出した経験があり、やり方も、その快楽も知っている。それゆえ抑え難い衝動ではあるが、その後に控える転職活動の面倒さを思い出すとその衝動は少し弱まる。


 そもそも私は、働くという行為に向いていない。


 私は本来怠け者なのだ。楽ができるなら楽できる道を選ぶ。努力とか根性という言葉が嫌いだ。もちろんすべての努力や根性を否定する訳ではない。私でもそれなりに人からすれば努力という行為を積み重ねてきた。追い込まれれば安くない根性だって捻出した。ただ、それは将来的に大変な努力をしなければいけない事態を避けるためだけの話だ。怠惰を求めて勤労に行き着いただけなのだ。なにもせずとも生活できる基盤があるなら、それにどっぷり浸かるのも苦ではない。むしろ浸かり過ぎて肌がふやふやになるぐらいには浸かりたい。


 日本人はよく宝くじに当たっても働き続けるという意見が多いと聞く。


 私からすればあんなの綺麗事だ。


 みんな当たる訳がないと思っているからこそ、自分を「私は勤労意欲に溢れた素晴らしい人間です」と自画自賛するのだ。そんなハリボテの言葉で取り繕う人間よりも、私は競馬に一発逆転を賭けてる大馬鹿者の方が好感が持てる。


 もし入社面接で本音を聞きだせたら、日本人のほとんどは「金だけくれ」「皆がやるから仕方なく」「生きるため」のいずれかになる私は考えている。


 もちろん私は金だけ欲しい。


 働くという行為自体が好きな人はいないのだ。もし好きな人がいるのならそれは一切の責任を負わない太い野郎だ。およそ人としての良識が欠落しているに違いない。


 だから私は望む。


 アイウォント給付金ワンモア!


 ベーシックインカム、カムヒア!


 せめて週休三日制!



 昨日偉そうなことを書いたが人間一皮剥けばこんなものなのだ。私は力を抜いてプカプカ海の上で波に運ばれて生きていく。いつかモンスターハンター主人公のように猫や犬に囲まれて、日長一日遊んで暮らす時を夢見ながら。


 ああ、宝くじ当たりたい。


 おビール様を飲みたい。


 そういえば明日、弟と会うから酒飲めるんだった。

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