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黒雪姫  作者: あしゅ
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黒雪姫 8

黒雪姫は、木の上でくつろいでいた。

「はー、毎日平和で良いわねえ。

 民草の暮らしも結構楽しいじゃない。」

 

「あんた、家事はまったくせんじゃないか。

 それで庶民の暮らしを味わった気分にならんでもらいたいぞ。」

洗濯かごを持った小人が、下を通りかかって言う。

 

「代わりに力仕事はやってるでしょ。

 あなたたち、ちまっこいから非力だし。

 やっぱ適材適所が政治の基本だわね。」

のほほんと答える黒雪姫に、小人が懸念する。

 

「あんた、えらくノンビリしているけど

 あんたがいなくなって、あんたの国、どうなってるか心配じゃないんか?」

普通に考えれば、これはおおごとな話である。

 

「んー、まあ、クーデターとかあるし

 王国なんて永遠に繁栄はしないものよ。」

「えっ、そんな気楽に考えて良いんか?」

 

黒雪姫が、枝からドーンと飛び降りた。

その振動に小人が足を取られてよろける。

 

「チッ、おおげさな・・・。

 あなたたちといると、自分がまるで大女になった気分で不愉快だわ。」

 

いや、人間たちの中でも、こいつは大きい部類に決まっとる。

小人は内心そう思ったが

頭上からゴォォォと睨む黒雪姫に、益々小さくなるしか出来ない。

 

黒雪姫のワンパンチで、小人なぞホームラン級に

空の彼方へ飛んで行くであろうから。

まったく、えらいな当たり屋に遭った気分である。

 

 

「いや、気楽には考えてない。

 うちの国は、今までは上手くいってたのよ。

 今後あの後妻が何をするかが、問題だと思うわ。」

 

「低レベルの顔勝負で、人を殺そうとするような鬼ババじゃからのお。」

「うん、このお返しはきっちりしないと、気が済まないわ。

 だけど今は、賢者待ちでしょ。

 情報がないと、ムダ足踏むし。」

 

「賢者さま、中々戻ってきなさらんのお。」

「どうせ祭に引っ掛かって、浮かれ騒いでいるんでしょ。」

 

その予想は当たっていた。

賢者は行く先々で歓待され、飲めや歌えやの宴会三昧で

中々先に進まず、まだほんのそこの集落にいた。

かなり使えんヤツである。

 

 

「私、ひとつ疑問に思っている事があるんだけど。」

黒雪姫が薪を割りながら言う。

「あなたたち、定番ソング、全然歌わないのね。」

 

「定番ソング?」

「うん、♪ ハイホーハイホー ♪ ってやつ。

 この歌に合わせて一列になって、踊りながら行進するんじゃないの?

 こういう風に。」

 

両手を広げながら、おどけたように足を上げて歩くそぶりをする黒雪姫を

小人たちが怪訝そうな表情で見る。

「肺胞?

 何でわしらが呼吸器の歌を歌いながら

 道化た歩き方をせにゃならんのだね?」

 

「おおっと!

 意外な博識ですわね、小人さん。

 うーん、某ネズ映画に騙されてたかしら・・・。」

黒雪姫は、珍しく自分を恥じた。

 

 


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