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黒雪姫  作者: あしゅ
7/42

黒雪姫 7

「ねえ、お風呂を沸かしてくれないかしら?」

黒雪姫のこの要求には、小人も即座に同意した。

「うむ、あんた、野生の動物のような臭いがするぞ。」

 

「しょうがないんだって。

 このドレス、ひとりで脱ぎ着できないのよ。」

「高級な布なのに、容赦なく破り裂いて・・・。」

小人のひとりが、ドレスの端を触って嘆いた。

 

「サバイバルにドレス、ほんっとそぐわないのよ。

 この靴も、最悪だったのよ。」

黒雪姫が差し出した足を見ると

かかと部分が無理に折られている。

 

「ヒールが土にズブズブ埋まるっての!

 しかもこれまた高価な靴だから、妙に丈夫で

 岩の切れ目を利用して根性で折ったのよ。」

 

 

黒雪姫の相手をしている以外の小人たちが、部屋の隅でヒソヒソとささやく。

「この姫さん、どんどん粗野な言動になっていってないか?」

「うむ・・・。 しかし風鈴は鳴ってない。」

「これがこの姫の地なんだろうな。」

「一体どういう国の姫なんやら。」

「乱暴なブスマッチョの国・・・?」

「何だかわからんが、そんな国、ものすごく恐いぞ。」

 

 

「あなた布に詳しそうだから、私が入浴してる間に

 ひとりで脱ぎ着できる服を作っといてくれない?

 そこのあなた、あなたもこいつを手伝って。 下着もいるし。

 あなたとあなたは靴。

 で、あなたは風呂沸かし、あなたは洗濯

 あなたはベッドを用意して。」

 

黒雪姫は、次々に小人を指差して命令した。

「さあ、ちゃっちゃと動いて動いて

 ヘイ! ムーブムーブムーブムーブ!」

 

手をパンパン叩いて、追い立てた後

自分は椅子にドッカリと座った。

 

「あんたは何もせんのかね?」

「姫ですもの。」

と言った途端、椅子がバキッと音を立てて割れた。

 

 

「あなたたちも私を暗殺するつもり?

 まさか鬼ババの手先とか?」

床にもんどりうった黒雪姫が、怒る怒る。


「と、とんでもない!」

必死に冤罪を訴える小人たちをなぎ倒し

壊れた椅子を手に、黒雪姫が立ち上がった。


「何なの? このヌルい作りは!

 どっかの国なんか、象いないのに

 象が踏んでも壊れない筆箱を作ってるというのに!」

 

玄関を出ようとした瞬間

黒雪姫の頭頂部がドアの枠に当たり、壁がバキッと割れた。

 

 

更なる激怒の予感に、小人たちが手を握り合って震えていると

黒雪姫が叫んだ。

「入り口も狭い!」

 

ふんっ と鼻息と共に、ドアに肩をブチ当て

黒雪姫は裏庭へと出た。

ドアの上の蝶番がひん曲がってしまっている。

 

「おらーーーっ、板を持ってきてー!

 風呂に入る前にひと汗かくわよ!」

持っていた椅子を地面に叩き付けて怒鳴る。

 

 

「お姫さまっちゅうのは、大工仕事も出来るんか?」

「うちの国は山賊あがりの野蛮な国だから、力仕事は得意なのよ。

 逆に裁縫とかの細かい手作業は苦手だけど。」

 

髪を振り乱して、かなづちをドッカンドッカン振るう黒雪姫に

小人たちは、破壊的な番犬が出来たような気分にもなっていた。

 

 


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