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黒雪姫  作者: あしゅ
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黒雪姫 41

荒野の石ころによろけ、ハイヒールを脱ぎ捨てて黒雪姫が飛ぶ。

両手を広げて、ガッシリと抱きとめてくれたのはヘビ王子であった。

 

「まさかあなたが、こんな出迎えをしてくれるとは思いませんでしたよ。」

王子の驚きに、黒雪姫も同意する。

 

「自分でもビックリよ。

 何かわからないけど、むっちゃ盛り上がってるわ。」

お互いにギュッと相手を抱きしめる。

 

 

「で、何でここにいるの?」

「3年前に妖精王さまに許されて、神さまが人間にしてくれました。

 私はいきなり北国の王子になったのです。」

 

「何よ、その反則技。

 やっぱあいつら、万能じゃないの・・・。」

 

 

「姫、顔を見せてください。」

黒雪姫が王子の胸から顔を上げる。

「逞しくなりましたね。」

「うん、腕なんかあなたの太ももぐらいあるんじゃない?」

 

王子が黒雪姫から1歩下がり

黒雪姫の手を取り、右ひざを付いて頭を下げた。

「黒雪姫、私、北国の第一王子ジークの妻になってください。」

 

「え? あなたの名前、ジークなの?

 北国に行ったら竜と戦うハメになりそうでヤだなあ。」

「ひ、姫ーーーーー・・・・・!」

 

泣きそうな顔になった王子に、黒雪姫は あはは と笑った。

それから、一礼して丁寧に応えた。

「喜んでお受けいたします。」

 

 

黒雪姫のゴツゴツの手に、丁寧に口付ける王子。

それから、お互いの従者の方に向かって叫んだ。

 

「「 このお方は私の婚約者です! 」」

 

北国側も東国側も、呆気に取られていた。

ふたりの世界にも程がある、という話である。

 

 

「首都からここまで1ヶ月ぐらい掛かるんですよ。」

「こっから東国の城までは40日ぐらいかな。

 北国方面も私が道を作ってあげるわよ。」

「相変わらず頼もしいですね。」

「ママンはどうしてるの?」

「母はまだ妖精王さまの下で幽閉中ですよ。」

「うちの継母は3人の子持ちになったのよ。」

「私たちにも沢山子供ができると良いですね。」

「卵で産まれるんかな?」

「なわけないでしょ!」

「あはは」

 

 

話が尽きないふたりは、手を繋いで荒野をゆっくり歩き出した。

黒雪姫が脱ぎ捨てたハイヒールを王子が拾い、履かせる。

 

そしてまた手を繋ぐ。

そして見つめ合う。

そして微笑み合う。

そして歩き始める。

 

そしてふたりの未来がひとつになった。

 

 


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