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黒雪姫  作者: あしゅ
33/42

黒雪姫 33

「待ってください!」

 

間合いを詰めようとした母娘の前に

王子が両手を広げて止めに入った。

 

「確かに母は、あなたのお継母様を利用しようとしました。

 本当に申し訳ありません。

 でも、言い訳になるかも知れませんが

 それは封印を解くため、しょうがなくなのです。

 姫、私はあなたを気に入っています。

 皆で仲良く暮らしていきたいのです。」

 

 

黒雪姫は少し考えて、ハブ女王に訊いた。

「北国はどうなったの?」

 

「滅んだわ・・・。

 わたくしの封印を解けない能無しどもだったから・・・。」

 

チッと舌打ちする黒雪姫。

「はい、おとぎ話はここで終了ーーー。

 我欲のために一国を滅ぼすヤツと仲良く出来ますか。

 王子、あなたもマザコンならママンのために剣を抜け!」

 

「え・・・、そんな・・・。」

オロオロする王子に、黒雪姫が殴り掛かり

王子が剣の柄に手を掛けた瞬間であった。

 

 

すべてのものが静止した。

 

 

右上からは光が降り、パイプオルガンを奏でるような音楽が響き

左上からは花が降り、メリーゴーラウンドのような音楽が鳴った。

 

 み な  し ず ま る の だ

 

穏やかだけど威厳のある声が、左上から聴こえてくる。

 

 わしは王 妖精界の王

 300年前のあの戦で ハブ女王は死んだはずだった

 だがあの混乱の最中 鏡に己を封印して人間界に逃げたのであろう

 

 女王の息子の存在にも気付かなかった

 すべてわしの咎 (とが) である

 

 人間界にまで影響が及んだ以上 わしだけでは治められぬ

 この始末 神にも頼む事となった

 みな ご苦労であった

 

 

小人たちは自分らの王、妖精王の直々の言葉に感動して

目を潤ませたが、黒雪姫は逆にムカついた。

 

『ご苦労』 ? はあ? 『ご苦労』 ?

 

黒雪姫の脳内に、声が直接入り込む。

 

 身 の 程 を 知 れ

 

それは神の声だった。

 

 

人の思考も読めるわけね

黒雪姫は苦々しく思ったが、こらえた。

そんな相手に何をどう言おうが、敵うわけがないからだ。

 

「北国は、滅んだ北国はどうなるのです?」

黒雪姫の非難めいた口調の言葉に、神の声が響く。

 

 出来うる限り 元に戻すつもりだが

 叶わぬ事も出てこようぞ

 

 

人間、結局、最弱ですかい

利用するだけ利用されて・・・。

 

髪一筋も流れない、強制的に静止させられた空間。

その中で唯一、動いたものがある。

 

指一本動かせない黒雪姫の目から

ボロボロとこぼれ落ちるもの。

“強さ” を何より誇る黒雪姫には

屈辱の敗走も同然の、まさかの悔し涙・・・。

それを自覚しているから、なお泣けてくる。

 

その真ん前で、剣に手を掛けようとして止まっている王子が叫んだ。

「私が母の罪滅ぼしのため、北国を再建したいと思います。

 どうか私を北国に送ってください!」

 

その言葉に、黒雪姫はハッと瞳を上げた。

王子が決意のこもった表情で、空を見上げている。

 

 

驚きとともに、希望を見出しかけた一同だったが

妖精王の返事は無情なものであった。

 

 それは無理な話だ。

 妖精界の者が 人間界に留まる事は許されぬ

 おまえは妖精界で 母親共々わしの監視下におく

 

王子の瞳にも、絶望の色が浮かんだ。

 

 


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