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黒雪姫  作者: あしゅ
25/42

黒雪姫 25

一行はウサギの向かった方向へと歩いたが

ウサギの姿はどこにも見えなかった。

 

歩いていた黒雪姫が、ふと向きを変えた。

「あ、やっぱこっちじゃなく、こっちに行くから。」

 

「ちょっと待て、そういう場合は皆で相談じゃないのか?」

よせば良いのに、小人のひとりが意見をする。

案の定、黒雪姫は ああーーーん? と

チンピラのような表情で、小人たちを見下ろした。

 

「じゃあ、文句のあるヤツは、まずは殴り合いからいきましょうか。」

小人たちが黒雪姫に敵うわけがない。

 

「なあ、あんたも何か言ってくれんか?」

小人の懇願に、王子は微笑みつつ最悪の答をする。

「私は姫の行くところなら、どこへなりと。」

 

「ダメじゃ、この王子・・・。」

「人間というのは、何故こうも不可解なのか。」

小人たちは、いちいち寄り集まっては不平不満を口にしていた。

 

 

その姿を横目で見て、黒雪姫は茶化した。

「烏合の衆でたーーー (笑)」

 

そのからかいには腹が立つが、7人いるという事が

案 × 7 なのではない事は、自分たちでもよくわかっている。

それどころか、協調性があるあまりか

7人がまるで1人のように、感覚が同じなのである。

小人たちはそれぞれ、自分の分身が6人いる気分であった。

 

それがいけない事なのか・・・?

小人たちは動揺し始めていた。

 

 

突然どこからか、行く手にひとりの女性が現われた。

真っ赤なドレスを着ている。

「これ、そこな娘、そなたを女王にしてあげようぞ。」

 

「何か出たが・・・。」

小人の言葉に黒雪姫は小さい声で、それでもきっぱりと言った。

 

「無視!」

 

 

女性の近くを避けて、迂回しようとする一行に

女性が走り寄ってくる。

 

「娘、そなたの事じゃ。」

黒雪姫が右に目を逸らすと、女性は右に顔を突き出し

左を見ると、左に顔を突き出す。

 

「これ、わらわの言葉が聞こえぬのか?

 娘よ、そなたを女王様にしてやるのじゃぞ?」

 

「この女、今でも既に何様じゃから。」

いらん真実を答えた小人の頭を、ゴッとゲンコツする黒雪姫。

「てか、私、唯一の嫡子だし、自動的に女王になるから!」

 

 

「何を焦っているんじゃ?」

空気を読めない小人が、黒雪姫の腕を引っ張る。

 

黒雪姫は女性の方を見て、ビクビクしながら訊いた。

「・・・チェス?」

「おお、よく知っておるな。

 その通り!

 わらわにチェスで勝ったら、そなたを女王にしてあげよう。」

 

「私、チェス知らないからパス!」

行こうとした黒雪姫に、小人たちが言った。

「わしら、チェスは得意じゃぞ!」

「じゃ、あなたたちが女王にしてもらえば?」

 

ひとり立ち去ろうとした黒雪姫に、女性が怒鳴った。

「ダメじゃ! 女王は女と決まっておる!

 では小さい者たちよ、そこな娘を賭けようぞ。」

 

「よし! その勝負、受けて立った!」

小人たちが調子こいた。

 

「ちょ、ちょっと待って!」

黒雪姫が止めるのも聞かず、自称女王と小人たちは

チェスの用意をし始めた。

 

 

小人たちの先走りに、黒雪姫は青ざめて座り込んだ。

ザコだの脇役だの、散々あおったせいで

小人たちは一旗揚げようとしているようだ。

 

悪事は自分に返ってくる、という良い見本である。

 

 


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