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黒雪姫  作者: あしゅ
18/42

黒雪姫 18

コトが収まったのを見計らって、王子と執事が戻ってきた。

何やら密談もしていたようだ。

 

「あのー、ちょっとよろしいでしょうか?」

「ダメ。」

手を上げる王子を、見もせずに却下する黒雪姫。

 

「話ぐらい聞いてやらんか。」

黒雪姫がそっぽを向く。

「だって、こいつ、黙って待ってようというチキンじゃん。

 発言の権利なんかないわ。」

 

「まあ、待て。

 体力がない者は知力があるのがデフォじゃ。

 聞いてみようじゃないか。」

 

アザだらけなのに、まだ意見をする小人たちは

実は最強なのかも知れない。

しかも何気に皮肉。

 

 

案の定、頬杖をついた黒雪姫が、ジロリと小人たちを睨む。

「非力なあなたたちも頭が良い と言いたいわけ?

 はっ!!! まさか、遠回しに私の知能を否定してるとか?」

 

「とととととんでもない!」

小人たちは全力で否定した。

 

「まったく、やりにくいおなごじゃのお・・・」

「ここで王子がロクでもない事を言い出したら

 こっちにまで被害が出るぞ。」

「この王子、ちゃんと空気を読んでくれるじゃろうな?」

ボソボソと苦情が出てくる。

 

 

小人たちが祈るような気持ちで見つめる中

空気を読んでいるのかいないのか、王子が芝居がかった喋りを始めた。

 

「北国のある地方では、鏡がご神体だという村があったのです。」

「ふむ、呪術などで使われる場合もあるそうじゃからの。」

「いえ、その村はそうではなく、伝説だけが残っていて

 今では鏡どころか、村もなくなってしまっています。」

 

黒雪姫が、王子の話に初めて反応した。

「ちょ、その話、詳しく。」

 

「はい、姫の仰せとあらば。」

王子は深々とお辞儀をした後

遠くを見るような表情で、詠唱し始めた。

 

「かつてその地方で一番栄えていたというその村は

 北国でも、とりわけ厳しい風が吹きすさぶ北海の近くにあり

 しかし村人たちは、魚の酢漬けをつまみに地酒を飲み

 暖炉の周囲で歌い踊る事で気をまぎらわせ

 長く辛い氷に閉ざされた季節を、皆で支え合っ・・・」

 

「代打、執事!」

黒雪姫の怒号に、執事が はっ と1歩前に出た。

 

 

「とある村の鏡が、ある日突然お告げをするようになり

 村人はその鏡を神として崇めていたけど

 鏡を巡って争いが起きて、村は滅びたという話です。

 約300年ほど前の話なので、真偽はわからないのですが

 その場所に村の跡は確かにあります。」

 

「300年前・・・?」

小人のひとりが考え込んだ。

「その頃、ここでは戦いが起こってなかったかの?」

 

「戦い?

 ここ数百年間で戦いといえば、ハブ女王の乱ぐらいじゃろ。」

 

 

「ちょっと待って! ストップストップ!!

 この話、名作二股のパクリにすんの?」

 

黒雪姫の突っ込みに、小人が非難めいた口調で答えた。

「“妖精王” という呼称が出た時点で

 転がる可能性は覚悟しとかんと。」

 

「ああーーーーーっ、頼むからボーフーリンとか

 そっちにまで話を広げないでほしいーーーーーーっ!」

 

「大丈夫じゃ。

 その話は知識として知ってるぐらいで

 読んだ事はないらしいから、そう盛り込めんじゃろ。」

「だけど後先考えなしに、そういう無謀な事を軽々しくして

 激しく後悔するのが、いつものパターンじゃない?」

 

 

「舞台裏の話をするでない!」

小人のひとりに怒られて、黒雪姫はテーブルに突っ伏した。

 

 


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