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黒雪姫  作者: あしゅ
13/42

黒雪姫 13

「肺胞・・・?」

「敗報・・・?」

 

定番だと決め付けられて、歌えと命令された歌を

釈然としない心境で歌いつつ、小人たちが家に戻ってきた。

 

しかし、飯はまだかー、の黒雪姫の第一声がない。

怪訝に思っていると、窓から外を覗いた小人が叫んだ。

「あの女が倒れているぞ!!!」

 

 

一同は半径2mの輪を作って、黒雪姫を囲んだ。

近付くのが恐かったからだ。

こんな小心者たちが、先刻の黒雪姫ののた打ち回る姿を目撃していたら

一生もののトラウマになっていたに違いない。

 

「死んでる・・・のか?」

「あんた確かめてみろ。」

「いや、あんたがやれ。」

「ちょっと待て、死んでたとして、どうするんだ?」

「一応、弔ってはやらないと・・・。」

「うむ。 化けて出そうだしなあ。」

「埋めるのか?」

「燃やすのは大変だろうー。」

「鳥葬、水葬、風葬、色々あるぞ。」

「いずれにしても、どっかに運ぶしかないのか・・・。」

「この大きな女をか・・・。」

「やっと平和が戻ってくると思ったのに・・・。」

「タダでラクはさせてもらえんものよのお。」

「とにかく死んでるのを確認しないと。」

「だから、あんたがせえって。」

「あんたがしろよ。」

 

 

堂々巡りも大概にしてほしいところに

新たな登場人物が現われた。

 

「ああっ、女性が倒れているではないですか!

 これは何があったんです?

 じい、侍医も兼ねるじい、このお嬢さんの処置をすぐさま。」

 

パフスリーブのブラウスにハイネックのジャケット

縦じま模様のちょうちんブルマ、タイツにハーフブーツ

それもハレーションを起こす緑と赤で統一された配色のファッションは

まず間違いなく、“王子” という職業であろう。

 

「はっ。

 まだ温かいという事は、息が止まって間もないという事。

 気道確保から入ります。 気管挿管!

 いや? 奥に何か見えます。 鉗子 (かんし)!」

言いながらも、自分でカバンの中を探す初老の男性は、王子の執事らしい。

 

 

呆気に取られて、言葉もなく見ている小人たちの前で

黒雪姫は息を吹き返した。

 

ゲホゲホ咳をして、ゼイゼイと肩で息をしている黒雪姫に

執事が話しかけた。

「お嬢さん、これが喉に詰まって窒息したようです。」

 

鉗子につままれたリンゴのカケラを見て

黒雪姫は あっ! と、叫んだ。

 

 

「そして私がこの執事の主人、王子・・・」

自己紹介をしようと前に出た王子を突き飛ばして

黒雪姫が小人たちに、口角泡を飛ばす勢いでまくしたてる。

 

「ちょ、あの鬼ババが来たのよ!

 ノーメイクだったんで、最初はわからなかったんだけど

 近付かれた時に、首の横ジワで気付いたわ。」

黒雪姫は、一部始終を小人たちに説明した。

 

 

「このリンゴには毒が仕込まれているようですね。

 飲み込んでいたら、間違いなく死んでいた事でしょう。」

執事がビンの試薬を駆使して、分析をした。

 

「うお、あっぶなーーーい!

 リンゴを押し込まれる前に、イモが喉に詰まってて

 それで命拾いしたのねーーーっっっ。」

 

「イモ?

 あれはスイートポテト用じゃと言ったのに

 盗み食いしたんか!」

 

小人のひとりが怒ると、黒雪姫は悪びれずに流した。

「1個だけだってー。

 何百年も生きてるあなたらと違って

 10代の私は、ピッチピチの食べ盛りなのよ。」

 

 

「にしても、継母まで入ってくるとは

 この森はどうなってしまったんだろう?」

 

小人たちが不安がっているところに、賢者が戻ってきた。

 

 


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