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黒雪姫  作者: あしゅ
10/42

黒雪姫 10

黒雪姫を消して、継母が何をしていたかっちゅうと

お肌のお手入れである。

 

人を殺しといて、しかもそれはこの王国の姫で

それを暗殺したんなら、次にする事は王国乗っ取り!

 

と、普通なら考えるのだが、この継母の関心事は美容のみであった。

ある意味、とても純粋な女性である。

 

 

今日も鏡に向かって、コットンパックなどをやっていたら

鏡が何をヒマしとんのか、口を出してきた。

 

「なあ、あんさん、美容道を追求するのなら

 次にするのは処女をさらってきて、生き血をすする

 とかじゃないんかい?」

 

「はあ? おまえ一体いつの時代の魔物よ?

 血なんか飲んで、何の成分が肌に効くってのよ?

 今アンチエイジングで気になってるのは、EGFなのよ。

 細胞の再生を促がす成分なのよ。

 美容は科学なの!

 最新の情報と、ある程度の知識が必要なの!

 妙なおまじないとかと一緒にしないでね。」

 

「はあ、さいでっかー。

 そりゃえらいすまんこって。

 ちゅうかなあ、お手入れ用に使うんなら

 鏡、別にわいじゃなくても良いんちゃいますの?」

 

 

鏡はあまりの退屈さにイライラしているようだ。

「誰が一番美人かっちゅうのも

 国内の各自治体に調査員を置けば済む話で

 そんなん、お后権限で簡単に出来まっしゃろ。」

 

継母が鏡面をジロリと睨んだ。

「おまえ、バカ?

 調査員を置くなんて、私がそこまで他の女を気にしてる、と

 国内中に言いふらしてるのと同じじゃないの!」

 

「んー、まあ、そうでっけど

 あまりにヒマだと、心がすさむんですわー。

 もちっと自分の存在意義を感じられる場所に行きたいんで

 ちょっとおヒマを取らせてもらえませんかねえ。」

 

「ほっほっほ、心配しなくとも

 おまえの価値は、あたくしが一番よくわかっててよ。

 では訊きますよ。

 

 鏡よ鏡、世界で一番美しいのは だ・あ・れ ?」

 

 

「はあ・・・、最初にこの質問に答えてしもうたのが悪いんやろか。

 このババア、バカのひとつ覚えのようにこれしか訊かへん。

 わい、もっと世界の壮大な真理を知っとるっちゅうに・・・

 ほんに宝の持ち腐れとは、正にこの事や。」

 

鏡はウンザリしながらも、答えようとした。

「それは、お・・・、え・・・? ああ?」

 

鏡が心なしか、青ざめた色になってる前で

継母が被害者意識満載の物語を、脳内でやたら発展させる。

 

「『おえああ』 って何よ?

 『おえええ』 なら、まだ話もわかるけど。

 って、あたくしを見て 『おえええ』 とはどういう事よ!」

 

 

継母が大概にしてほしい動機で激怒しているのに

鏡は引き続き呆然としている。

 

「なあ、姫さん、ほんとに殺ったんでっか?」

「何よ? その証拠にあたくしが美人No.1になったじゃないの。」

 

「そう。 この前はそうだったんでっけど

 今、わいのモニターには黒雪姫が映ってまんのや。」

「何? あのにっくき黒雪姫が生きていると申すのか!!!」

 

鏡は、うーん、とうなり

后はすっくと立ち上がった。

「おのれーーー、許すまじ黒雪姫!」

 

見事に型にはまった悪役っぷりである。

継母には、独創性というものが欠けていた。

 

 


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