番外編 記憶
これは、友人に描いてもらった絵を元に作った公式による二次創作です。
神無月の話が終わって十数年後、雷斗に娘がいるという設定で、娘視点のお話です。
おじいちゃんの家にくると、いっつも昔パパが使ってた離の部屋に来る。もう何も無い空き部屋になっちゃってるんだけど、何故かすごく居心地が良くて。
窓を開けて風に吹かれる。夏になると、ここから綺麗な花火が見えるんだって聞いた事があった。
いつもは何となくすごしているんだけど、十月になると、ふと裏の山に行きたくなる。一人で行くのは危ないって言われちゃうから、ひなみちゃんに着いてきてもらってる。妖怪だよ! なんて言ったらおじいちゃん怒るから、お友達ってことにしてる。
「この時期になると、なんでか分からないけど裏山に来たくなるんだよね……ほんとに理由はよくわかんないんだけど」
「ん〜なんでだろうね、わっちもよくわかんないよ」
草木をかき分けて上へと昇っていく。すると、朽ちている祠のようなものを見つけた。
「うわぁ……だいぶボロさ増したね」
「そうだね。前にここに来たのはまだ五歳くらいのときだっけ」
「うん。パパがダメって言ったけど、一人で抜け出したやつだね。帰れなくなって泣いてたら、パパが迎えに来てくれたの。懐かしいなぁ」
でも、その思い出よりもっと前、産まれる前からここを知っている気がする。たくさんの人がいて、綺麗な着物を着た人がいて……なんでだろ、見たことないのに。
「ねぇ……パパってどんな子だったの? 私が小学生になる前にいなくなっちゃったからそういう話聞けなくて」
ひなみちゃんはうーんと悩んで
「素直じゃなくて意地は張るし、無愛想だったけど、すっごく優しい人だったよ」
って優しい笑顔で言ってくれた
「そっかぁ。夢の中に出てくるお兄ちゃんみたい」
「……お兄ちゃん?」
「うん。パパそっくりのお兄ちゃん。私にお兄ちゃんなんていないんだけどね」
「そっかぁ、お兄ちゃんか。それ、雷斗が聞いたらびっくりするよ」
「うん、いつか、パパに会えたら言おうかなって考えてるんだ」
にししって笑ってたら、ひなみちゃんが優しく微笑んでくれた。
「暗くなったら危ないし、そろそろかえろっか。美奈子姉さんも来てるから、今日のご飯は豪華だよ」
「ほんと! やったー!」
祠に背を向けて、帰ろうとした時
「にいたんのこと幸せにしてくれてありがとう」
って声が聞こえた気がして振り返った。
「……どうしたの?」
「……ううん、なんでもない」
夕暮れの赤い空の下、不思議な懐かしさを感じながら私は、ひなみちゃんと山を下った