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神無月の守護者 短編集  作者: なまこ
2期
12/22

1年お疲れ様でした(2021)

「逃げちゃダメだよ大池さん」

薄暗い室内で、テレビがチカチカ光っている。そもそも、なんでこんな山奥の薄暗い寂れた神社で、テレビが動いているのか……そこは突っ込んだら負けなんだろうな。俺の力でーす! ピースピースってしてる邪神様の顔が頭に浮かんできた。どうしたものかな。

「あーいうでっかい機械とかあったら、人間なんてスグだよね」

朱花ちゃんがテレビを指さしてこっちを見ている。バックのアニメのことを言っているんだろうな。

「……あれ、一応人守る側の機械? だよ朱花ちゃん」

「えー、じゃあ敵じゃんあれ」

普段あれだけ人間を憎んでいる朱花ちゃんが、今日はテレビを見ている。珍しい。

「テレビを見るなんて珍しいね。どうしたの?」

「キバが教えてくれた。テレビ見たら面白いんじゃない? って。暇でしょ? って」

「まぁ、BGMにはなるよね。テレビ」

映ってるのも人間だよ、嫌じゃないの? ってちょっと聞いてみたかった。けど、少なからず、今嫌な気持ちじゃないのであれば、そっとしておいてあげようと思った。本当だったらこの子だって……。


「っあ〜外さっむ! 娘様〜テレビ見てっか?……おぉ、見てる見てる」

キバが帰ってきた。手に何か持っている。

「朱花ちゃんせっかく楽しそう? だからあんま邪魔しないでね。ところで、それ何?」

「これ? 餅だよ。オイラが昔人に化けて家に行った時にさ、持ちもらったことがあって。この時期になると食いたくなるんだ」

「狼なのに肉じゃなくていいんだ」

「まぁ、普通に妖怪だしな。それ言ったらお前だって血しか吸わん訳じゃないでしょ。カフェオレとかも好きじゃん」

それもそうと納得したところで、シグマが奥からでてきた。


「大晦日を楽しむ娘様を見ていると、ちょっと儂も何かしようかなと思いまして」

……おぼんを持っていて、更に器から湯気が出ている。

「もしかしてそれって」

「そうです、年越しそばです。娘様に少し楽しんでもらおうと思いまして」

なんなんだろう、みんな人間が嫌いなモノの集まりなのに、今日は少し楽しそう。


「……年越しそば。昔、パッパが作ってくれたの覚えてる。美味しいやつでしょ?」

「はい、娘様のにはえび天とかまぼこを入れております。サナさんは儂と同じ感じですが、よろしいですかね?」

「いいよ。わざわざありがとう」

シグマが礼には及びませんと言って、服の袖を下ろした。

「ちょっと待てよ、オイラのは?」

「あぁ、そういえば……忘れていました。緑のたぬきでもいかがですか? ほら、貴方狼ですし、蕎麦よりたぬきかと」

「それカップ麺だろうが! オイラだけ扱い酷くない!?」

シグマとキバがわんやわんやしているのを横目に、そばを食べていた。……朱花ちゃん、少し笑った?


「朱花ちゃん、楽しい?」

朱花ちゃんはモグモグしながらこちらをちらっと見て、丁寧にお茶を飲んでから

「……どうだろう」

と言った。でも、心做しか、表情が明るい気がするから、きっとそれが答えなんだろうな。

……きっとこれから、こんな風に賑やかに過ごす時間なんて来ないんだろうと思う。朱花ちゃんもきっと、そんなに時間が残されていない。でも、それでも、いい年になりますようにって、少し思えた。


「ところで、あんたら意外と人間好きだよな。大晦日なんぞ楽しんでよ! へーへー! オイラはカップ麺すすってますよーだ!」

あ。

「人間? 人間??」

朱花ちゃんが箸を置いた。

「人間が、好き? ですって?」

シグマも口角が少し引きつってる感じがする……。

「……人類は?」

「愚か!!」

……ごめんね邪神様、私、いい年になるかちょっと心配になってきちゃったよ。古くなった窓が、風でカタカタと揺れていた。……もしかして、笑った?

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