番外編 神崎家のハロウィン
こちらは、神無月の守護者に登場するキャラクターを使ったハロウィンの短編です。
神無月(4)までのネタバレを含みますので、本編を読んでから読むことをオススメします。
十月三十一日。世間ではハロウィンを迎えていた。それは、普段浮世離れしている神崎家でも同じことである。
「ねぇ〜、ハロウィンだよ? 雷斗は仮装とかしないの?」
ひなみがベッドの上で足をパタパタとしながらそう言うと
「はぁ、仮装? いや、しねぇよ。ガキじゃねぇんだから」
と雷斗が答えた。
「今どきの子は大人でも仮装するよ。むしろ、大人の方が気合い入れて仮装してたりするね。雷斗も知ってるだろ? 渋谷とかの」
雅之もフォローを加えるが、
「あぁ、あの。くそパリピのバカ祭りか」
と返されてしまう。
「君……ハロウィンに親でも殺されたのかい?」
「はぁ、殺されるなら殺され……」
話が暗くなりそうなのを察してひなみが止めた。
「あーもーはいはい! あーいいなぁ〜、兎夜と華代ちゃん、めっちゃいい感じに仮装して街に出かけてったの! わっちもあんな感じの仮装したーいー!」
ベッドの上に置いてあるマルチーズのぬいぐるみにしがみついてひなみは足をさらにパタつかせていた。
「すりゃいいじゃねぇかよ。けどよ、お前ら元から妖怪だろ? 妖怪が妖怪の仮装して楽しいのか?」
雷斗がそう聞くと、
「そりゃそうだよ!」「それはもちろん」
と二人が即答した。それを見ながら
「まぁ、そんなもんなのか。とりあえず、俺は街にも行かんし、仮装もせん。お前ら二人で楽しんで来いよ」
と言うと、
「あーあー! 珍しく三人でおめかしして遊んでみたいなって思ってたのにぃ……残念だなぁ」
ひなみが足をパタつかせるのをやめて、しゅんとしてしまった。
雷斗は少し目を逸らして、少し時間を空けてから
「まぁ、ろくに今まで遊んで来なかったからな。今年はアリかもしれん」
と少し大きめな声で言った。
「ほんと!? やったー!」
ひなみが目を輝かせながら飛び起きた。それを見て雅之は少し笑っていた。
「んで? そうと決まれば君、何着るの? 魔女? 看護婦?」
「なんで女物なんだよ」
「あっ、またバニーガー……」
「刺すぞ貴様」
鋭い目付きで睨まれる。
「おぉ……怖い怖い」
雷斗は深いため息をついて
「あんま目立たねぇやつな? んでもちろん、男物な……?」
と言った。
「わっち何着よっかな〜」
そういいながらスマホで仮装の衣装を検索していた。
「あっ、そうだ。せっかくなんだから全員でテーマ揃えたらいいんじゃない? 衣装、僕がサッと作るから」
「わーい! 雅之さっすがー!」
「お前ほんと何でも出来るな……」
雅之は微笑みながら手をヒラヒラとしていた。
「ねぇねぇ! これ良くない!?」
そう言ってひなみが見せたスマホの画面に映っていたのは、中華風の仮装だった。
「これだったらいい感じに同じようなの出来そうじゃない?」
「おう、いいんじゃね?」
「うん、じゃあこんなの作ればいいね?」
そう言って雅之が糸を紡ぎ始めた。
「お前、頼むからちゃんと男物にしてくれよ……?」
「ハッハッハ、大……丈夫だよ? ちゃんとしたの作るからさ」
「おい頼むぜほんと」
そんな二人を見て、ひなみは明るい笑みを浮かべていた。
雅之がサッと衣装を作ると、それぞれその衣装に着替えた。
「わぁすっごい! 意外とかわいいね!」
「ひなみ、君、僕が作る衣装のデザイン、多分古臭いと思ってただろ? 僕もこういう時は現代風の作るよ」
雷斗も出来上がった衣装に着替えて、鏡を見ながら
「……おぉ、ちゃんとしてんな」
とつぶやいていた。
「どう? それなら大丈夫だろう?」
「うん、大丈夫。疑って悪かったな」
「いいよ、別に。じゃあ、行くかい?」
「そうだな。ひなみ、忘れ物ないか?」
「うん、大丈夫! 行こっ!雷斗、雅之!」
雷斗と雅之は顔を見合わせて笑っていた。
そして三人は、いつもの裏口から街の中に出かけて行った。