二話
ある日父さんが結婚すると言ってきた。 最近帰りが遅いのはそういう事か、と納得する。
そういえば、よく「新しい母さんは欲しいか?」と聞かれたのを思い出した。
そのときは曖昧に返したが、これならもっと真面目に答えれば良かった。
相手の家族と会うと、そこには見覚えのある相手がいた。
……まじかぁ。 クラスメイトとと家族になんの? ないわぁ。
相手もこちらに気づいたようで驚いたように見てくる。
「初めまして」
とりあえず挨拶をして、それから自己紹介をした。
それから少し経って父さんは結婚した。 家は新しく買うようで、そこに引っ越すことになった。
「ねぇ、学校ではこのこと黙っといてね。 言ったら許さないから」
「言わないから」
同居することになった初日にそう刺々しく言われ、少し先が不安になる。
「あっそ。 それならいいよ。 部屋には入ってこないでね」
「入らない入らない」
俺はため息を吐くと、自分の部屋に向かった。
ベッドに横になると、そのまま眠くなって寝ることにした。
少し日にちが経って、ご飯だから朱里を起こすように言われた。
朝は弱いらしい。
部屋をノックしながら呼んでみるも返事がなく、仕方なく開けて入ることにした。
部屋は引っ越して来たばかりの頃とは異なり女の子らしい部屋になっていた。
女の子の部屋を見るのは初めてのことで少しうろちょろしているとパソコンに当たり、その画面がついた。
そこには作文か何かが書かれており、やめた方がいいと思いつつ文章を見ると、それは官能的な内容だった。
「まじかぁ。 これ、画面どんなくらいで暗くなるんだろ? 見たのバレたらまずいよなぁ」
「もう手遅れよ…」
声が聞こえ、振り向くと朱里は起きていた。
まずい、まずいぞ。 勝手に部屋入ってパソコンの中身盗み見るって完全アウトだ。
……殺されるっ!
「お、おはよう。 起きたのか。 実は起こしに来たんだ。 急にパソコンがついて、な。 いや、別に中身は見てないから」
俺がそう言うと、朱里はニコリと笑った。 それがどっちか分からず、俺は曖昧に笑う。
「なら良かった。 まぁその画面のは教科書に載ってた文章だけどね」
「え? あんな文章が教科書に載ってたの?」
え? 何それ? それってなんの教科書ですか? 高校生にあの内容はちょっと過激すぎるんじゃないかしらん。
「…やっぱり見てたんだ」
「あ、あはは。 いや、別に悪くないと思うぜ? もう高校生だもん…な」
朱里は俯いている。
その様子にやっちまった、と後悔する。
「出てって…。 出てって!」
「あ、ああ、分かった。 本当にごめん。 見るつもりはなかったんだ。 当たったらたまたま画面がついて…。 今のことは忘れる」
背中を押され、そのまま追い出される。
……バカなことしたな。 見ちゃ駄目なのは当然だろうが! なんですぐに切らなかった! くそっ、バカか俺は!
「すいませんでした」
俺は下に降りると義母に謝罪した。
相手の子供を傷つけてしまったことに負い目があったからだ。
「いいですよ。 その代わりあの子を見限らないでやってください。あの子は素直ではないだけで根はとてもいい子なんです」
「はい。 もちろんです」
見限るなんてありえない。
前までは他人だったが、今は家族なのだ。
同い年だろうと関係ない。
「ふふっ。 ならよろしくお願いしますね、お兄ちゃん」
義母はそう意地悪く笑った。
……お兄ちゃん、なかなか悪くない気分だ。 それと年上の女性にそう言われるとなんだかいけないことをしてる気分になる。
いけない、これじゃ変態みたいだ。
もしそんなふうに思われてしまったら家出しよう。 今のうちに逃げ場所でも探しておこうかな。
俺はご飯をお盆の上に乗せて二階に持っていく。
「一度開けてくれないか? 確かに見てしまったが、それなら俺もエロ本を読んだりしたこともある。 そんなの普通だよ。 ちょっとエッチ文章」
突然扉が開き、拳が飛んできてそれをギリギリ躱す。
落ちる、食器落ちるからやめて!
「待って、待ってください。 ご飯落としちゃう。 謝りますから、ごめんなさい!」
朱里と目が合い、ひぃと情けない声を上げてしまう。
強い殺気を感じ、逃げたくなるが目を逸らさずに見つめ続ける。
朱里はため息を吐くと手招きをした。
俺は「お邪魔します」と言って入る。
「私、小説書くのが趣味なの」
ついゴクリと喉がなる。
ギロりと睨まれて怖いが想像してしまう。
……趣味があんな破廉恥なことを書くことだって?
「気が乗って書いたの。 普段はこんなん書かないし…。何その目? てか、引いてるでしょ。 …だから嫌だったのに。 家族だから教えた方がいいのかもとか思ったのが間違いだった」
目に涙が溜まりだしたのを見て慌てる。
これ、俺が悪いのか!?
「別に変じゃない。 それを変だと言ったらそいつは潔癖症かなんかだよ。 それに、うん。 俺もエッチなの好きだからね。 もうそれぐらい普通だね!」
「えぇ…」
なんでそっちが引いてんだよ! 慰めてやってんのによぉ! まるで汚らわしい者を見る目で見やがって。
そう思っていると、突然笑いだした。
「あははっ、必死になってバカみたい。 私なんて放っとけばいいのに。 そんなに新しく出来たばかりの家族が大事?」
「もちろん。 もう俺の中では朱里は大事な妹だぜ?」
妹だと認識論したのはさっきだが。
「へー、ならお兄ちゃんって呼んであげる」
「…!」
同級生からお兄ちゃんと呼ばれるのはなかなかくるものがあった。 それに妹だと思えば可愛らしい思えてくる。
……くっ、なかなかの強敵のようだ。 もし何か頼まれればそのままなんでもやってしまうかもしれない!
さっきまで怖かったのが嘘みたいだ。
「そうだ、今アイデアに行き詰まっててね。 お兄ちゃんはどういうプレイがいいと思うの?」
「プ、プレイ? ああ、プレイな。 そう、俺はアレがいいな。 そうアレが」
プレイってなんのことだ!? 分からないけど、とりあえず英語の意味から何かをするってことだよな? でも何をするのかさっぱりわからん。
「アレ? アレっなに? もしかして言いづらいこと? そしたら妹ものとか?」
い、妹もの!? よくわかんないけど、それがプレイと何か関係があるのか? 妹と何かをしたいでいいのか?
「あ、ああ、そうだな。 一緒に出来れば良いな」
「一緒に? やだ、ただの変態じゃない! もしかして私が目当てで優しくしてたの? ちょっと部屋から出てって」
「えぇ? どういうことだよ。 すまんがどういうことかわかんないんだが」
なぜ急に変態容疑がかかったんだよ! 冤罪だ! 酷すぎる!
「だから、あんた私とエッチしたいってことでしょ。 一緒にってそういうことじゃない!」
「はぁ? 待て。 そんなつもりは一切ない。 朱里とエッチするわけないだろ!」
「それはどういうことよ! もういいから出てって!」
わけも分からず怒った朱里に追い出された。
……どこで間違えたんだ。 途中まで良かったじゃないか。 プレイってなんだよ。 もっと分かりやすく言えよな。
仕方なく部屋に戻り、ケータイでそれを調べる。 すると、どうやらあっち系の話のようで、変なのがいっぱい出てきた。
急にそういう話題になるなんて予想できるか!
そういうばご飯食べてないな…。 食べるか。
俺はリビングへご飯を食べに行った。