第2回:紙上を踊れ
講義開始の鐘が鳴る。
今日の机は前回とは少し違った。机の上には群青色の布に包まれた何かが横たわっている。
製図板だ。
「まずは、先週の宿題を回収しますので後ろから回してください」
教授の声とともに、学生たちが宿題の目次を前に送り出す。
「早く回してくれないと、受け取りませんよ… これを出席にしますからね」
この時僕は、少し迷っていた。教授が言うように、今日の出席はこの宿題を提出しているか否かで決める。ならば、再履修の我々とて出すことに越したことはないのだろうか?
しかし、辺りを見渡しても宿題をしてきたような顔をしている人物はいなかった。
事実、僕の手元には宿題はない。あるのは昨年作り、共に死線を乗り越えボロボロになった目次だけだった。もしこんなものを提出した日には「提出物ということは、見る人がいるということなんだよ。それなのにこんなボロボロで…こんなこと社会に出てからやったらどうなるか考えられるかな?」くらいは言われるのではないか?(いや、実際はどういわれるかなんて教授のみぞ知る世界なのだが)
そうこう思案するうちに、宿題は集め終えられ、僕含め再履修は誰も提出しないという結果で終わった。
さてどうしたものか、と教授の方を眺めていると、教授は院生の副手に名簿と集めた宿題を渡していた。院生は再履修と座席表を交互に眺め、確認を済ませると一番後ろの席に座った。どうやら提出された宿題と学生の座席をチェックしているようだった。
一応の出席確認を済ませてもらえたようだった。
「それでは講義に移ろうと思います。話を聞いていない人はついてこれませんからね?しっかり聞いくださいね」
教授はそう言って、本気の速度の講義を始めた。
まず最初に説明されたのは「長さ」に関してだった。
これから各図面に記載された長さの単位は何も言わなければmmを用いる。
間違ってもcmなんかは使っちゃいけない。絶対に。これは機械系の道を進むならば基本中の基本だった。
「長さや大きさの感覚は持っていた方がいいですよ。それは自分なりの方法で良いんです。定規なんかを使わないでパッとわかる、そういう感覚を持っていて欲しい」
例えば、自分の指や、手を広げた時の幅、そういう自分の身体を題材に長さを意識する。そういうことはできていた方がいいのだ。これができれば、不意に「~m」と言われた時も「大体これくらいか」と想像することができる。そういうことができれば、図面を書く際も変な寸法を入れたりしないで済むという。
次に教授は紙の話を始めた。
「先週説明した通り、今日は図面を書いてもらうわけですが…ちゃんとトレーシングペーパーは買ってきましたね?A4サイズですよ?」
「たまにB列のを買ってくる人がいるから不思議なんですよね」と呟きながら説明を始めた。
「紙にはA列B列と二種類のサイズがあります。そして、絶対に覚えておいて欲しいことは、公的な文章を書く場合は絶対にA列、それもA4が基本です。これは絶対に守ってください」
(調べてみれば、ISO 216で規定してある。)
そう言って教授はホワイトボードに「841×1 189」と書いた。
「これがA0のサイズです。この、1189のスペースは、決してミスではありません。そういう書き方です。そういう書き方もあるということを皆さんには知っておいて欲しい。もし書類や何かでこう印字してあっても、印刷ミスだなんて思っちゃダメですよ」
これはつまるところ、お金の千の位の前に記載する「,」に相当するものだそうだ。
続けて教授はホワイトボードに数字を書いていく。
A0 841×1 189
A1 594×841
A2 420×594
A3 297×420
A4 210×297
と。
眺めていると、一種の規則性があることがわかる。
A0を長辺で半分にしたものをA1、A1の長辺を半分にしたものをA2、といった具合に呼びサイズが下がった際に、長辺を半分になっていることが見て取れる。こうすることで、縦横の比率が同じになるように設計されているそうだ。(ただ、小数点以下は切り捨てているので、単純に逆算で短辺を倍に~としていくとだんだん正しいサイズではなくなるから注意が必要だ。)
「先ほど説明したように、公的な文章は全てA4の用紙を用います。現に、皆さんが購入した手書き製図の手引きはA4になっています」
教授は手元にある手書き製図の手引きをパッと開く。
「そして、こうやって開いた時のサイズ、これがA3ですね。用紙のサイズによって使用する向きは異なりますので、そこは間違えないようにしてください。A4は縦で使う、というルールは特に」
A4は縦で使う。これはかなり重要な事柄だ。もし後期でこの事柄を忘れていると「君は前期、何をやっていたんだ?」と言われかねないことが幾つもある。
ここまで、公的文書はA4用紙を使い、更にA4の用紙の向きは縦(長辺が縦)で使うという説明を受けた。
教授はここで、一回休憩を入れるように言った。
「ここまで説明していて、何人かが目に留まったんですが…皆さん人の話を聞く態度には気をつけましょうね」
どうやら、講義中に頬杖をついている学生がいたようだった。
頬杖というのはこの講義では、否、人の話を聞く数多の場面で絶対にしてはいけない行為の1つである。
というのも、頬杖をつくというのは姿勢を維持できないということを意味する。姿勢を維持できないということは「疲れている」ということを示し、見る人からすれば「あぁ、この人は話を聞いていて疲れてしまっているんだな。もう聞きたくないんだなぁ」と解釈されかねない。
また、このように指摘されることに我々学生は感謝しなくてはならない。というのも、指摘されるということは非常に優しいことなのだ。何も言われないということは寧ろ厳しい。指摘されるということは執行猶予を与えられたようなものであり、その場で直すことができれば良いからだ。(一番良いのは最初から正しい姿勢でいることだが)
しかし、指摘されないということは自分で気が付かない限り直らないわけで、例えば面接の場であったりすれば、気が付かぬ間に減点の雨に打たれ不採用の谷に突き落とされることだろう。
そして、多くの学生は「その時になれば直せばいいさ」と思うことだろう。しかし自身の人生を思い返してほしい。これまでの人生で、その場で直せたことが何回あっただろうか?
試験期間に「試験2週間前になったら毎日勉強して、良い点数を取るぞ!」と意気込み、試験2週間前からきっちり勉強できただろうか?僕はできなかった。これは単に、日頃から毎日勉強するという習慣がなかったからだ。
「明日から本気出す!」と叫んで、明日から本気出せた人間が何人いるだろうか?「明日から、明日から」と言い続けていつまでも本気を出せていない人ばかりだろう。
つまり、~から頑張る、~になったらやる、そんなことは無意味なのだ。今からやらねば意味はないのだ。昔サッカー選手か何かが言っていた。「明日やろうは馬鹿野郎」と。今日、指摘を受けた瞬間から常に意識して行動しなくては、未来に直すことはできないのだ。
「あと、スマートフォンも気をつけましょうね。スケジュールやらは手帳に書き込みましょうね。見る人には何をやっているかわかりませんから。突然スマートフォンを出したら遊んでると思われるかもしれませんからね」
今は何でもスマートフォンに予定を書き込む人が多いスマートフォンは様々な機能を持っていてるからだ。かく言う僕もその一人だ。けれど、スマートフォンは多機能であるが故に相手からすれば何をしているかわかりづらい。その点手帳は、開いてメモをしていても「あ、この人手帳を開いた…さてはソシャゲのログインボーナスを貰っているな!?」とか「手帳を開いた…SNSに書き込んでいるな!?」とは思われない。
姿勢の話を始めとして、就活で覚えておくべきことまで話すと教授は講義に戻った。
「それでは、次に輪郭線の説明を始めます。これはCADで図面を書く際にも用いたりもします。まぁCADの場合は一種の習慣のようなものなのですがね」
図面で重要なことは「精度」である。その精度をどうすれば一定に保つことができるかが大事だ。制度が悪いと、その図面を見て作る人が困るのはもちろん、完成品の出来栄えにも影響する。
精度を良くするために用いるのが「輪郭線」だ。これは紙上に「確立された精度の世界」を生成する。輪郭線の中で描かれた図面は、水平と垂直が明確にあらわされているため、確立された精度を持っているのだ。
輪郭線には綴じ代を設ける場合と設けない場合があるが、この講義では綴じ代は設けない。従って、A4サイズの用紙に描く輪郭の幅は縦横共に10mmとなる。
そして、輪郭線を引くときは紙の底辺を基準に引いてはいけない。なぜなら、僕らの使う紙というものは決して精度の良いものではないからだ。
確かに一見してどの角も直角で、確実な長方形を模しているようには見える。しかし、図面の世界において、「目で認識できるズレ」というのは非常に大きなズレである。
精度の世界、それこそ精密測定の世界では1/1000㎜よりもっと小さい世界で戦っている。人間の髪の毛の太さ1/100㎜(人によって異なるが)を手で触ってわからない人は少ない。間違いなく触ってわかる人の方が多い。もし1mmのズレがあれば、それは髪の毛の太さの100倍の大きさだ。もう間違いなくわかる。
つまり、今世の中に出ている工業製品は大抵「目で見えない程度のズレ」で済ませている。だから僕らは気が付かない。しかし、だからと言って「目に見えないなら信用しよう!」となってはいけない。
しかしそうなると、「じゃぁ何を基準に線を引けば良いんだよ!」となる。
そこで出てくるのが、机の上に置いてあった「製図板」だ。
製図板に付属する「平行定規」で最初に下の線を引く。そして、下の線に平行な(平行定規なので、上にスライドすれば紙を剥がしたりしない限り平行な線は引けるはずだ)線を上にも引く。
あとは、その下の線を基準に、垂直な横の線を引けば、輪郭線が出来上がり同時に「確立された精度の世界」も生成されるのだ。
これならば、どんな制度の悪い紙の上でも正確な図面が描ける。平行定規を用いて線を引く限り引く線の制度は保証される。しかし同時に忘れてはいけないのは、ここで平行定規を使わなければすべてが台無しになるということだ。
「あとは、輪郭線は「はみ出さず、隙間なく」引いてくださいね」
教授は丁寧に説明する。
これは輪郭線だけの話ではない。作る側の人は、図面通りにしか作らない。変に隙間があれば、作る側は「設計した人はなんか思惑があってここに隙間を作ってるんだろうなぁ。めっちゃ手間かかるし費用も増すけど隙間作ってやろ」と判断する。ここからは先週と同じ話になるが、1個当たりの単価が高くなると、とんでもないことになるわけだ。
「ここまでわからない点はありませんか?あるならば。しっかりとわからないと言ってくださいね。昨年はこれほどまで丁寧には説明はしませんでした。しかし、今年はしっかり、かなり丁寧に説明しましたので、変なことはしないでくださいね。説明した通りに間違ったことをしないで図面を書いてくださいね」
かなり丁寧な念押しを終え、教授は続いて課題の説明に移る。
「今回の課題は線です。まずは、しっかりこの学習の要点を見てください。これを見れば大概の事が教科書のどこに描いてあるかがわかります。まぁ、昨年はこう言っても全然見る人がいなかったんですが」
教授が指すのは、学生に事前にWebで配布した資料だった。学生は課題毎にこれを印刷する。資料自体は、最悪でも講義の3日ほど前には公開されているため、学生はしっかりと予習をすることが可能になっている。
特に、先ほど教授が述べた「学生の要点」には課題を描くうえで重要な教科書のページ番号まで書いてある。むしろこれを見ていれば、「描き方が最初から最後まで微塵もわからない」なんて事態にはならないようになっていた。
しかし、そんな資料があっても僕も含め再履修者は沢山いる。僕らがここにいる理由の一つに、これを見なかったというものが挙げられるだろう。
ではなぜ見なかったのか?
少なくとも僕は、印刷した段階で満足し、日曜の夜なんかは遅くまでレポートを書いていたから、としか言えない。
月曜9時提出のレポートを、なぜかレポート提出12時間前に始めるなどすると、レポートが完成した段階で満足して眠ってしまうのだ。
それから教授は配布資料を参考に課題の説明を始める。要点としては、
・輪郭線の太さは0.5㎜のシャーペンを使うこと(また、四隅に貼った製図用テープが邪魔で線が引けない場合は図面を書き終えた後に線を書き加え、輪郭線に隙間が無いようにすること)
・破線や一点鎖線、二点鎖線の間隔は一定である程度決められた長さで描くこと
・0.3㎜と0.5㎜の線の違いは明確にし、しっかり濃くはっきり描くこと
・指定された指示には従うこと
といった具合だった。
「名前は輪郭線の右上に記載してください。学籍番号と名前です。これは一度しか言いませんからね…?メモを取っていない人は大丈夫ですか?取った方が良いと思いますよ。別にノートに取らなくてもいいんですよ。教科書とか、配布したプリントとか、そういうのでもいいんです。むしろ私は学生時代、教科書とかに直接書き込んでいました。そっちの方が色々同時に見れて楽でしたし」
そこまで話すと教授は、学生たちに製図板の出し方を説明した。
「製図板というのは非常に高価です。なので皆さんには買わせずにこちらから貸すという方式でやらせていただいています。
高価な品なので、丁寧に扱ってください。もし壊してしまったら貴方たちだけではなく、同じものを使う前半の人も困りますからね」
ちなみに、僕が所属する学科とは別の建築を学ぶ学科の学生は製図室なる部屋で図面を描いているそうだ。
群青色の袋から取り出し、丁寧に置く。製図板が入っていた袋は丁寧に折ってしまっておく。平行定規のロックがかかっていないかを確認し、平行定規を動かし平行になっているかどうかを確かめる。また、その他壊れている箇所がないか、不具合がないかを確認する。
合宿か何かで宿泊施設を借りた時のような感じだった。もし壊れていたりする箇所があったら最初に見つける。でなければ、壊れていた場合自分の責任になる。大事な確認だ。
それから製図板にA4トレーシングペーパーを習った通りの向きで貼る。この時大事なのが、製図板に貼るテープだ。
僕らは最初に製図セットを購入した際、マスキングテープと製図用のテープの二種類を購入した。
製図用のテープは透明で、剥がしやすいものだった。
「テープの種類を間違えないようにしてくださいね。透明なテープは、コピーに使えるテープで、図面が破れたりした際に補強で使ったりするものです」
この透明なテープ、驚いたことに光の反射率が普通のものとは違うらしく、コピーしたりした際に写らないようになっているそうだ。
「それがどうした?」と思われそうだが、これは非常に重要だ。というのも、図面というものはトレーシングペーパーに描いてトレーシングペーパーのまま作る側に回るわけではない。データとしてスキャンして送られたり、コピーして複数の人に見られたり、そんな具合だ。
そうなると、一度なにかしらの機械を通るわけだが、スキャナーやコピー機は総じて光を当てて図面を読み取る。その時、もし普通のテープで読み取ると、テープが貼っている部分は線として写り、読み取られる。
ここまでくれば、あとはいつもの流れだ。作る側は、図面通りにしか作らない。そこに意味不明な線があってもそのまま描かれた通りに作るのだ。
後は製図板に紙を貼る時のちょっとしたコツを教わる。平行定規を端に合わせてから貼った方が良い、とか、ピンッと貼った方が、平行定規を移動させた際に引っ掛かりが減り、図面が破けたりする可能性を減らせるとか、ピンッと貼るには対角線上にテープで引っ張りながら貼ると良い、とか。
「では、始めてください。完成した図面を提出してくださいね。完成できませんでした、は通じませんからね。あとは指示に従っていない図面は受け取りませんよ」
「受け取らない」この言葉もまた、学生にとってはまるで意地悪のように感じる人が多いだろう。しかし、教授は語る。
「大学の講義の中であれば、受け取らないということは単に「受け取らない」だけで済みます。しかし、これが社会に出た時はどうなるかを考えてくださいね」
例えに出たのは、商談の書類だった。
「皆さんが取引先の会社の指示にそぐわない書類を作ってしまった場合があるとします。そして、指示にそぐわなかった為に取引の先が皆さんの書類を受け取ってくれなかったとします。それで商談は失敗に終わったとします。皆さんはどうやって責任を取りますか?」
場の空気は静まり返る。
「その商談が、10億、いや会社の命運をかけた1000億の商談だったりしたらどうしますか?」
その場合、どうすればいいのだろうか?おそらく、自分に保険金をかけて道路に飛び込んでトラックに轢かれても挽回はできないだろう。前回の講義に続き、重い話だった。
「講義だけの問題ではないんです。これは前に言った頬杖の話と一緒ですよ。その時になったら気を付ければいい、じゃないんです。今から、講義だけの事ではなく社会に出た時も重要になることなので説明しているんです。その事を忘れないでくださいね」
あとは図面の製作の時間となった。
黙々と作業を始める学生。僕も早速取り掛かる。輪郭線を描いた辺りでふと名前の事を思い出した。
輪郭線の上に名前を描くんだったな、と思いながらトレーシングペーパーに名前を書き込む。隣の席の友人を見ると、まだ名前が書いていなかったようなので「書いといた方が良いぜ」と囁いておく。
こればかりは昨年の教訓といった具合だった。
昨年、僕はこの課題を未完成で提出した。講義が終わる最後の最後まで全力で描いていた。それでも終わらない終わらないと嘆いていた。
そして、講義が終わりを迎える寸前に名前を描き忘れたことを思い出し、非常に際どいタイミングで名前を描いたのだ。難は逃れたものの、あれはかなりの冷や汗ものだった。
結局のところ、これは試験と同じだ。始まったらまずは名前を描く。大学どころか小学生の頃に教わる行為、一般常識に分類される事柄だ。
名前を描き、まず全体の構成を考える。この線の課題は、長方形の中に円と様々な形式の線を書き込む課題だ。指示されているのは、円は最小の円の半径を5㎜とし、そこから5㎜間隔で計10個の円を描くということと、線の種類だけだ。
つまり、それ以外は自分で考えて書いて良いはずだ。
先ほども述べたように、僕は昨年、課題が終わらなかった。それは僕の描くスピードが遅かったのもあるが、単純にこの指示を見落としていたこともある。
僕は何本線を引くかを考え、それをベースに外枠となる長方形の寸法を決める。そして、ほどほどな量の線を描き、円にはしっかり時間をかけて描くことにした。なにせ、僕はコンパスが苦手だ。しかしコンパスが苦手な学生は理工系として非常に不味い。克服せねばならない課題だ。
僕らが描いている間、教授は教室を巡回する。そして、あまりにも度し難い学生がいれば指摘をする。指摘する学生が多すぎる場合、ホワイトボードに無言で注意点を描き始める。
「今回は、口でも説明しますが、次回からはそのうち消えますからね」
教授は描いたばかりのホワイトボードの説明を指す。
「これからホワイトボードにも定期的に注意を描きますので、皆さん意識をこちらにも向けておいてください。見ていません、聞いていません、は通じませんから」
そう言って説明を始める教授。その説明は
・線を引くときのシャーペンの向き
昔、鉛筆でまだ図面を描いていた時はもっとわかりやすかったが、シャーペンの向きによっては線は0.5㎜のシャーペンで描いていてもそれより太くなることがある。
円柱を斜めに切ったら断面は楕円形になる。楕円形って円柱の底面積より大きいよね。そういう話。
・線の間隔について(三角関数って知ってる!?)
平行線の間隔と斜め線の間隔が一緒なわけがないだろう。三角関数というものを少しは知っている学生ならばよく考えればわかること。もう一度考え直して欲しい。線と線の間隔が5㎜なのだ。自分の引いた線が本当に5㎜間隔になっているか、定規で測ってみれば一目瞭然。
・線がどこからどこまでか?
破線や鎖線の短線と隙間、長線の長さは決まっている。しかし、時に線の最後が隙間で終わる可能性はある。そんな時、「一定間隔で描く」という事と「はみ出さず、隙間なく線を引く」という事、どちらを優先すべきか?答えは後者である。「どこからどこまでこの線が引かれているか」をはっきりしないと、作る人が困るからだ。作る人はいちいち「あ、コイツ!線の間隔が一定じゃない!!!」なんて調べたりはしないはずだ。
そんな説明を聞いたり、図面を描いたりを交互にしているうちに時間は刻々と過ぎていく。
そして、講義終了の鐘が鳴る。
「それでは手を止めて、製図板から紙を剥がして提出してください」
僕は一見すればできているように見える図面を剥がし、提出場所に向かった。
やはり0.3㎜と0.5㎜の違いを明確にするのは難しい。早く解決策を見出さない限り、昨年の二の舞になりかねないだろう。円の破線や一点鎖線なんかは最初に線を引いて消しゴムで破線や鎖線に変える方法を選んだが、消しゴムが太すぎて消しすぎたりしてしまい汚くなってしまった。これは細い消しゴム(ペンタイプの物など)を買って改善したい。
そんなことを思いながら提出を済ませ、片づけでも始めるかと思った時だった。
「皆さん!!!一度席に座ってください!!」
教授が叫んだ。
「名前を書いていない人が多すぎる!!!!!!」
A4は縦で使う、と説明してありますが、実は主人公が使う教科書にA4を横向きで利用している教科書がありました。「新編JIS機械製図」っていう本なんですけど。
何事も臨機応変に受け止めたいです。
あと、製図版が汚れているとトレーシングペーパーに引いた線なのか製図版に描かれた線なのかわからなくなって必死に消しゴムをかけても消えない無敵か!?って線がありますよね。僕はアレを「幻想刻印線」と呼んでいます。今思いつきました。製図版、一度綺麗に清掃したいですね。