プロローグ:再履修に至るまでの追憶
本編始まります。でも多分直ぐ番外編書いたりします。だって、再履修だぜ?講義内容は昨年みっちり書いたじゃないか。
ここは東京にある、理工系の大学。未来のモノづくりを担う学生たちが日々勉学に励む場所だ。
僕はその大学の工学部、更に最先端の機械を作り出すことを目指す学科の3年生だ。
僕の通う大学は、2年から3年への進級条件は無い。それ故に僕は無事、3年生になれたのだった。
3年生となれば、もはや大学生活が着々と終わりに近づいている最中、RPGだったら中ボスを倒して最後の敵が誰か判明した辺りと言っても良いだろう。
おそらく、僕のいる学科の多くの学生は「中ボス、めっちゃ強かったけど何とか倒せた」とか「中ボスと比べれば次の敵はこちらに幾分かこちらにバフがかかってるし、楽なんじゃないの?」とか思っているはずだ。
えぇ、中ボス。
それは「機械手書き製図」だ。
必修科目「機械手書き製図」
これは僕の学科では絶対に避けて通れない科目だった。一見、「最先端の機械を作る学科なのに手書きなの!?」と驚くかもしれない。けれど、僕はもう驚かない。そもそも実験レポートだって手書きのこの学科だ。それは3年になっても変わりやしない。今でも手書きで文句たれる学生がいれば、ため息の1つや2つ多方面から聞こえてきてもいいくらいに僕らは呆れている。
そんな科目を、僕は2年の前期に無事落とした。
こちらとしては何故落としたのかはわからない。後ろの席の友人とほぼ同じの図面を描き上げて、死ぬならばお互い一緒に地獄に落ちよう、と誓い合った末に僕だけが落ちたのだから。
挙句の果てに僕は、その落ちた講義の記憶を遡ってレポ小説を書いたのだから、周りからは「なんでそんな講義内容覚えていて、単位落としているの?」と非難囂々だった。僕も気になる。
つまり僕は、倒すべき敵を倒さずにストーリーを進めてしまったのだ。
昨年受けた感想としては、この科目はかなりヤバい・・・。また今期も毎週月曜日、至極憂鬱な朝を迎えなければならないと思うと、抜け毛が増える気がする。本当にあの講義はSAN値が削られるのだから。
しかし、1つだけ救われていることがある。
この講義は通年の科目だ。前期と後期で成績を分けているものの、手書き製図という講義は1年間あった。
つまり、後期も僕は手書きで図面を描いていたのだ。
最初、僕は後期のレポ小説を書こうと思っていた。しかし、後期の分は書かなかった。今書いているこの文章は、再履修に向けた狼煙のようなものである。
では、後期はどうしたのか?
簡単なことだ。
後期は、無事単位を手にしたのだ。
今、僕のこの手の中には「機械手書き製図Ⅱ 評価B」の文字が光り輝いている。
後期の講義内容もまた、非常に恐ろしいものだった。
特に最終課題は、グループでひとつの豆ジャッキの寸法を計測し、測定結果を元に図面を描くというものだった。そして恐ろしいことに、再履修者は計測できない。教授曰く「昨年計測したデータがあるでしょ?それで描けよ」というのだ。
これはつまり、初めて履修した際に計測が不十分だと、各図面に必要な寸法が記載されず、結果的に絶対に単位を手にすることができないということだ。
恐ろしい。今だから他人事のように文章を連ねることができるが、僕が単位を落としていたらレポ小説どころか呪いの言葉が並んだ呪本を生成していたことだろう。
そんなわけで、僕が大学生活における中ボス「機械手書き製図」を倒すための戦いが始まろうとしていた。
共に戦うのは同じ道を歩んだ落単の同志たち、そして初めてこの狂気の世界を体感する新2年生たちだ。
第2章、ここに開幕。
これは前作の「Me to I?無理ゲー過ぎる落単科目とツンデレ教授」の続編です。