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第8回:タチムカウ

「では、授業を始めます。前回、大半の説明は済ませました。今日は残りの分の説明をして皆さんには課題に取り組んでもらいます」


説明、というのは表面性状についてだった。前回表面性状は全ての面に入れなければならない、と説明があったが、実は全ての面に表面性状の記号を入れなくても良い場合がある。それは、図面の上に表面性状の記号を描いてしまうことだ。



例えば、ボルトの課題であれば、最初に六角形の棒材を用意し、それを切削加工を加えてボルトの形状に変える訳なので図面の上部に「除去加工をしない」という指示の表面性状の記号を描く。これを入れることで図面の指定されていない面の表面性状は除去加工をしない、という事が加工者にわかり、同時に加工者がどれくらいの直径の棒材を用意すれば良いかがわかる。

そして、除去加工をする面には全て表面性状を入れ、最後に上部に描いた「除去加工をしない」の指示の表面性状の横に()を描いて()の中に指定した表面性状を()()()描く。


こうすることで、加工者は「はーん、基本は除去加工はしないで除去加工する箇所はこんな表面性状で仕上げれば良いんだな」とわかる。この()の中の表面性状の指示があれば、図面を最初に見た時に全体でどんな表面性状の値で仕上げなければいけないかがわかるため、使う工具などを最初に準備できる。準備ができれば作業効率は上がる。加工の途中で「え、こんな表面性状もあるの?じゃぁアレも用意しなきゃ…」なんてならずに済むのだから。


ただ、注意として、()の中には何個表面性状の記号と値を入れても良いが、()の外は1つしか描いてはいけない。加工者は困らせてはいけないのだ。



そこまで説明すると、後は作業の時間となった。説明は先週受けている。あとは、己の調べた知識と前回の講義のノートで立ち向かわなければならない。


製図板を用意し、トレーシングペーパーを貼り、輪郭線を描く。




ナットはボルトよりも明らかに作業の量は少ない。描くもの自体が小さいというのもあるが、投影図によってはボルトのヘッドを描くのとそう変わらない要領で描けるからだろう。


今回の課題で特に注意すべき点は、面取りとねじの示し方と断面図の描き方だろう。


まずは面取り。

今回の課題において、ボルトのおねじが挿入される部分の面取りは120°という指示が与えられているのだが、その120°という角度をどう指示するか?また、面取りは一体どこからどこまでなのか?というのが重要になってくる。前回のボルトの課題においても面取りはあった。先端部分を45度で面取りするように描いた。その時は、C~と角の面取りを指示する記号で同時に長さまで示せた。しかし、今回120°にそんな都合の良い記号はない。つまり、角度を指示すると共に長さを決める要素となる寸法も入れなければならない。片方でも欠けてしまえば、作る側は困ってしまう事だろう。


次に、ねじの示し方。

ねじの山の頂を太い実線で描き、谷の底を細い実線、とボルトの時に説明があった。これはナットにおいても変わらない。おねじにおいてもめねじにおいても、その描き方は変わらない。

また、ねじの谷底を表す円は、その円周のおおよそ3/4を描き、略3/4円とする。この略3/4円の開ける箇所は右上とするが、()()()()()()()()()()()

また、この円は少し傾けて描くようで。第2象限寄りに傾けるか第4象限寄りに傾けるかがまちまちだ。


最後に断面図の指示。

断面図は今回はハッチングで示すが、ハッチングする箇所がどこからどこまでかを決めなければならない。今回は中心線を境に断面図を取るが、あくまでこれは描き方の1つに過ぎない。他にも破れ線を描いて断面図を見せたりする手法もある。

描き方はともかく、忘れてはいけないのがハッチングをする箇所だ。

ハッチングは断面になっている箇所に全てしなければならない。それは同時に、断面になっていない箇所にはしてはいけないということだ。今回の課題において、断面になっているところは一体どこだろうか?それを深く考える必要がある。

その考え方の一つとして僕が提唱したいのは「刃物が触れる面が断面図」という考え方だ。断面図…それは切断された面を示すことだ。そう考えると、どこが刃物が触れてどこが触れないか…わかってくる…はず。




後は今までやった課題での注意点を守り、与えられた規格に沿った寸法を入れられればこの課題は熟せる。


しかし、言うは易く行うは難し、と言うようにそう簡単にいかないのが現状だった。


「ホント、今までの課題での経験を活かせてない人が多いですね」

教授は教室を巡回しながら呟く。様々なミスを犯す学生の図面の中で、特に教授が指摘したミスは投影図間の距離だった。

昨年、(及び前回も少し危うかったが)僕は投影図間の距離を狭くしてしまい結果としてなんだか詰まった図面を多く描き上げた。その要因になったのが、僕の「ふんわり雰囲気これくらいでしょ投影図間!」という図面の描き方である。もうこの時点で間違いで「なんでフィーリングで決めてんの?」とツッコミを入れなくてはいけないことをしていた。

投影図間の距離は事前に少し考えればわかる、というのはボルトの時までに散々言われている。この少し考える、という工程を面倒に感じる人はこれから先数多の後悔と「落単」の称号を得ることだろう。


なので、この「少し考える」工程を少しではなくしっかり考えてこの場で少し示しておきたい。


まず大前提にA4用紙の短辺の長さは210㎜だ。そこに10㎜間隔の輪郭線が左右に入る。ということは僕らの描く図面の領域の横の長さは210-10×2=190㎜しかないことがわかる。

更に、輪郭線と図面との間も最低でも10㎜は開けておかなくてはならない。それを踏まえると170㎜の範囲に投影図を最低でも2つはいれなくてはならない。

また外形線と寸法線の間隔も最低でも10㎜は開けなければならない(文字を入れるスペースを除く)

更に言えば投影図間もしっかり間隔を開けなければならないわけで…

それを考えて、自分が描く図面の横の寸法を入れて当てはめてみると、図面の位置は大体わかってくるのだ。また、この時点でA4じゃ無理だな、とわかれば事前にA3の紙を用意したり、尺度を変えてみたりと色々準備ができる。


2コマあった図面の製作時間はあっという間に過ぎ去ってしまう。


僕は描き上げた図面と事前に配布された資料のチェック項目を見比べてミスが無いか考える。



自分の字を捨てることは難しいな、と思っている内に講義終了の鐘が鳴り、図面は提出されていくのだった。



断面図。CADで製図を習っていると破れ線で破ってそこを断面図にするか、破線で中がどうなっているか描いたりするんですね。

あと破れ線と全然関係ないって訳じゃないんですけど…「妄撮」で検索検索~!!

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