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夢を見ていた。










私は何の変哲もない人間だった。

特出した才もなければ、見目も大して良くない。


つまらない人間。


ただ、幼い頃から続けていた剣道だけが、私の誇りだった。


誰かを、誰かを守りたい。


そのために、心から強くあれ。


ただそれだけ。



……私が、守りたかったのは誰だったのだろう。



今はそれすら思い出せない。




この世界が、ゲームだと言うのはわかる。

シャルルになる前にプレイした記憶が有る。

でも、詳しい内容は思い出せない。


シャルル·ジルコニーはどのルートでも死ぬ。


それだけ。


別に構わない。

それでいい。

私は女王陛下の騎士なんだもの。

大好きな作品に転生できただけ、マシというもの。


ならば、女王陛下の幸せの為に、この命くらい、捧げる。


普通転生したら、死ルートを回避するのだろうけど、そんなことする気は無い。


私は私の役割を全うしてみせる。


それが悪役だろうと関係ない。


守りたいものが変わっただけ。

シナリオにあった行動をすればいい。

簡単なこと。



『シャル、俺はお前が_____』



思い出せない、懐かしくて、愛しくて、優しい思い出。

大切な筈なのに、思い出せない。


私は、何を忘れてしまったのかな。
















「目が、覚めましたか」

「……ウィリアム、女王陛下はっ?!」

「まだ起き上がらないで下さい」


飛び起きたシャルルをウィリアムがベッドに押し戻す。


「女王陛下から伝言です。シャルは今日一日ベッドから出ないように、と。女王陛下にはセディが着いていますから、心配有りません。寝ていて下さい。」


そういうなりウィリアムは手をシャルルの額にあてた。


「熱は……下がったようですね。覚えていないでしょう?倒れたのですよ。貴女は。過労です。働きすぎです。女王陛下に心配をかけるのですから、もう少し考えて行動しなさい」

「けど、女王陛下は……」

「“眠れ”」


ウィリアムがそう唱えた瞬間、シャルルの身体がベッドに沈んだ。


魔法である。


普段なら、自分に魔法をかけさせるようなヘマはしないが、体は疲れていたのだろう。

シャルルは深い眠りについていた。


「……貴女は、もう少し自覚した方がいい」


長い睫毛を伏せ、ウィリアムは呟いた。

色を失った白い頬を手の平で撫でる。


「嗚呼、また女王陛下の機嫌が悪くなる」

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