始 1
魔界でも面倒な事に巻き込まれたくない魔物たちが近寄らない道。その道を可愛らしい見た目は人の魔物がが歩いていた。背は小さめで弱そうに見える。すれ違う魔物はみなこの魔物は迷い込んでしまい無事には帰れないと思っていた。
案の定、すぐに男に絡まれたようだ。
どうやらその子のことを気に入ったらしい。
周りの魔物はさして気にとめた様子もなくその横を普通に通っている。この道ではよくある事だからだ。
「おい、そこの女、俺たちについてこいよ」
体が大きな男の高圧的な態度に気圧されたのか、その魔物は黙っていた。
「なんか言えよ、まあ、最初っから拒否権なんてお前にないんだけどな、なんにも言わねえならさっさ黙って着いてこい」
そう言って腕をつかみ路地裏へと連れ込んだ。
「……」
それでもその魔物は黙っていた。
「おい、なんか言えよ」
腕を掴んでいた手に力が加わった。流石に苛立ったようだ。
「あの、ここで何されるかはだいたい察しがついたのですが、これから仕事があるので帰らせて頂けますか?あと、腕痛いです」
と、はっきりと言った。
「てめえ、何言ってんだよ。自分の立場わかってんのか?」
威圧的な態度で言い放った。
「はい、もちろん、仕事の報酬以上のお金を払っていただけるならお付き合い致しますけど、どうしますか?」
怖気付いた様子が全くなかった。
「女だからって調子のんじゃねえよ、俺は気に入らないやつには容赦しねえからな」
そう言うや否や突然殴りかかった。
──しかし、その拳は当たることは無く、後ろの壁が大きく凹んだ。それどころか、その魔物の姿は消えていた。
「あっれー?そんなんじゃ当たんないよ?すごい力だね、君。魔法で少し強化しただけでこれなんだね〜」
と、後ろから聞こえた。男の声だ。振り返るとさっきまで目の前にいたはずの魔物がいた。さっきとは雰囲気が全く違う。
「てめえ男だったのか、騙したんだな。許さねえ。絶対ぶっ殺す。」
そう言って再び殴りかかってきた。何度も何度も何度も攻撃するが全く当たらない。
「いやいや、そんなんだまされる方が悪いでしょ。だって僕は1度も女だなんて言ってないよ。そっちが勝手に勘違いしたんでしょ、だっさ〜。まあ、僕の女装は完璧だからしょうがないか〜」
と、言いながら全ての攻撃をかわしている。
「うるせえ、黙れ」
さっきの言葉に煽らたのか、魔法で自身を強化して攻撃をし始めた。
しかし、やはり一度も当たらない。
「ふうん、それが君の本気なのか。やっぱり格闘に特化してるんだね。でも、弱すぎてつまんないよ。もういいや。」
そう言った途端、指から光線のようなものが放たれ、男の心臓を貫いた。
「やっぱり弱いね、君。確かここらへんにあったような」
そう言って、手袋を付けて男の指から指輪を抜き取った。
死体はどうせ誰かが回収するだろう。死体が欲しいやつ居るだろうからな。
「はる、くろ、そこに居るの気付いてんぞ」
突然そう言った。
すると、2人の男が現れた。
「俺のことさっきから見てただろ。あと、くろ、このマネーリングから金取り出しといて」
そう言って、さっき取った指輪を投げ渡した。
「面倒くさいな、分かったよ。やっぱ千影が僕とか言って猫被ってんの面白いな。なんか、遥が悪魔から伝言あるって言ってたぞ。」
「ユリアさんが頼みがあるから来て頂戴、って言ってたよ。あと、暇つぶしにわざと男ひっかけんの趣味悪いと思うよ」
「分かった。あと、2人とも余計なことは言わなくていい」
「まあ、とりあえずユリのところへ行くか。おい、くろもいくぞ、帰ろうとしてんじゃねえよ」
「はあ、なんで俺も行かなきゃなんねえんだよ。」
とても嫌そうだ。
「ユリアさんは3人で来いって言ってたよ」
「わかったよ」
心底嫌そうにくろは答えた。
マネーリング・・・自分の所有している金が全て入っている。これを付けてお金を全て自分で管理する。所有者のみ取り外し可能。所有者以外の金の取り出し不可能。
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