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世界の関係性

       **



 仁は「たとえ話のようだが」と話し始めた。


 昔、5つの国の人がこの世界に足を踏み入れた。

 まず中心を陣取ったのは、イギリス人たちだった。

「国王を決めよう」

 アメリカ人とイタリア人が猛烈に反対した。中心を陣取っている彼らに、その役割を取られることが目に見えていたのである。

「なら、我々は警察組織としてまとめていくことにする」

 元々ヤードを抱えていたらしく、一切の反論を受け付けずに町作りへと取り組んだ。

 その姿勢に腹を立て、アメリカ人とイタリア人はそれぞれ武装組織を作った。ここも、本業の者が紛れていたらしい。

 取り残されたのはフランス人と日本人だ。

 フランス人たちは平和主義者が集まっており、また医師がいたことから医療活動に専念した。一カ所に大きな拠点を構えず、各地に散って仕事を始めたのだ。

 そして、残る日本人だが――彼らは「外」のことを知らなかった。だから、知るところから始めた。

 いろいろなところに入り込んで、情報を得ていった。

 そして、長年の月日を経て、今に至る。



 という言い伝えがあるそうだ。

「本当にそんな始まりか分かんねえが……いや、絶対違ぇと思うが、今のは説明として一番分かりやすいだろ?」

「ええ、立ち位置はそんな感じだと思っていいんですね?」

「構わねえよ」

「探偵事務所は新しいんでしょうか?」

「ああ。事務所自体はもうちょい前だが、この形になったのは三年前からだな」

「そうなんですね」

「おっと、これも話さねえと……今のことだ」

「はい、お願いします」

 一紀が姿勢を正すと、仁はホワイトボードに名前を書いていった。


『 英 エマ

  仏 ルイ

  伊 ウーゴ

  米 イザベラ 』


「えっと、これは?」

「彼らが、現在の中心的存在にある。まず、ヤードのエマ・レイランド。彼女は騎士のような女だ」

「さっきの電話の方って……」

「彼女だろうね」

 景も話に加わった。資料の整理が終わったと、仁に告げている。

「ふーん、彼らを警戒順に並べたんだね。確かに、エマは一番話が通じる」

「そうだ。つまり、このイザベラって女は要注意だから、気をつけろ」

「イザベラ・ガルシア。彼女は好戦的で、自分の興味を優先する傾向がある」

「っ……気をつけます」

 彼女と初めて会ったときは、そのような印象がまるでなかった。自分はどんなに無防備だったんだろうか。もし、景に助けてもらわなかったら、と考えるとゾッとする。

「それで、このルイだが……医者ではあるが、少々変わり者でな。研究バカで、ずっと引き籠もっているような奴だ」

「危険なことでも研究している、とかですか?」

「いや、あいつは何考えているのか分かんねえ上に、自分の世界を持ってるから厄介なんだ」

「たぶん、彼は何も考えてないよ」

「厄介ですね……はははは」


 警戒順に納得できた。


 これは景の言った通り、話の通じる順でもあるのだろう。

「で、最後だな。マフィアのウーゴ・リナルディだ。チャラい見た目に、人懐っこさを持った男だ」

「うーん……主導権を握りたい、というタイプでしょうか?」

「そういう面もあるけど、彼はどっちかというと、掴ませないところが注意点かな。自由気ままに振る舞っているように見せてくる」

「見せてくるってことは、実際は狙ってやっているということですか?」

「そう。彼みたいな人って、だいたい裏表があるんだよね」

「おめぇが言うな、景」

 仁からの指摘に、景はいたずらっぽく笑う。

 一紀が紙に今のことをまとめていると、事務所の扉がノックされた。

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