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Flow Light フローライト ~扉の向こうの物騒な世界~  作者: 久河央理
第2話 bitter determination ~苦難の決断~
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外国?


「おい、決まったか?」

 仁に「おい」と話しかけられた。他人ごっこの終わりである。

「はい。大丈夫です」

「よし。んじゃ、次行くぞ。会計してくるから、ちょっと待ってろ」

 かごを預け、入り口付近で待つことにする。


 一紀はそわそわとした。やはり彼らが気になるのだ。やがて戻ってきた仁に、何の前振りもなく質問をぶつける。

「さっきのお二人はどなたなのでしょう? ああ、いや、誰でもいいんですけど、その、外国人のようでしたので……」

「見てたのかよ。あいつらは……ああ、そっか、普通じゃねえもんな」

「え?」

「この世界はあんなのばかりだぞ。俺たちみたいな日本人顔は事務所周りの地域くらいだ」

「へぇ、外国の人がたくさんいるんですか!」

「そんなウキウキすんなよ」

「へへへ」

 仁に呆れられながらも、一紀は楽しさを隠せなかった。だが、そこでふと思い出す。


「あれ、そういえば景さんって……」

 日本人らしい顔ではなかったような、そんな気がする。

「ああ、あいつか?」

 話ながら車のドアを開け、仁が乗り込む。中で話そうということらしい。

「あいつはな、ようはハーフだな」

「ハーフですか、言われてみれば……」


 いや、待てよと思う。一紀は正直な話、景に対して警戒心があって、きちんと顔を見れていなかったような――よし、黙っておこう。


「景は、日本人が半分だ」

「あと半分は?」

「本人に聞け」

「えぇ……」

 景と二人で話ができるだろうか、いや、自信がない。彼が自分のことを話すかどうかも怪しい。

 考え込む一紀の様子を横目に、仁は車のエンジンをつける。

「まあ、今は無理あるか。あいつ、なんか変だしよ」

「変ですか?」

「基本的に、景は他人に対して、人当たりのいい穏やかな姿勢で接する。初対面であの態度っつぅのはあまりねえんだ。おまえら、前に会ったりしてねえよな?」

「自分の記憶の限りではないですね――ってことは、何か気に障るようなことを……」

「ちげーよ。たぶん、距離感を測れてねえだけだ。おまえは客でも仲間でもねえし、友人でもねえ」

「距離感……」

「そのうち慣れてくだろ。嫌でも一緒に生活すんだからよ」

「あの、仁さん」

「ん?」

「一つ、お願いがあるんですが」

「ちょっと待て。今から昼飯食いに行くんだ、そこでじゃダメか?」

「あ、はい、平気です」

「何がいいか、五秒以内で答えろ」

「えっ、じゃあ、ラーメン?」

「よし、決まりだ」

 それでいいんかい。一紀の目はそう返したが、彼は見ていなかった。車を発進させ、次の目的地へ向かっていく。


 助手席で一紀は決意した。今思い立ったものを、必ず彼らに提案しよう。そして、認めてもらおう。


 黙っていても、じっとしていても何も変わらない。


 ここでできることを探して、さらにできるのならば、ここに来た意味をもきちんと見つけたいのだ。


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