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萱草(かんぞう)色

 果物はメモに書いた色名だと使いきったので、続いては花の色に参ります。とはいえ、マンゴー・メロン・枇杷(びわ)など、ほかにもフルールならたくさんあります。これかは後で別の記事として付け足しておきます。同様に、オレンジ色の花もたくさんありますよね。マリーゴールド・金盞花(きんせんか)・金木犀など、いろいろとありますが記事として出すのは萱草色のみとなります。金木犀は設定としておいしいと思ってはいるものの、ここまでくると花の辞典として出せよとなりますね。


 それはともかくとして、萱草(かんぞう)色は明るい橙色です。元となった花はユリに似ています。

 別名は忘れ草です。『忘れる』に『萱』という字を当てています。なんでも、身につけると大切な人と(死に)別れたことによる悲しみや憂いを忘れさせてくれるそうです。花言葉にも「苦しみからの解放」「憂いを忘れる」「悲しみを忘れる」「物忘れ」といった言葉が並んでいます。由来は、『美しい花を見ていると嫌なことを忘れる』という故事にちなんでいます。色合いだけ見ると鮮やかで、豪華ではありますよね。ただ、生えている位置が位置(日当たりのいい湿った地)だけど、ユリよりもランクは劣る印象です。身近にあるといいますか。花屋で売られているようなイメージはありませんね。そもそも、萱草という花自体、あまり耳にしませんでした。原産地が中国であることもあって、日本ではあまり見られません。知名度も高くないと思われます。和歌には大量に詠まれているのですがね。


 ちなみに、勿忘草ではありません。空色に近い色合いをした花とは無関係です。

 対になっているのは思い草ですかね。『忘れ草と思い草』という話が今昔物語集に存在します。思い草は紫苑といいます。紫色関連の記事で話す予定です。それは果たしていつになるのやら、さっぱり分かりませんが。


 それと、上にある通りすでに察しがついていると思われますが、萱草色は喪の色です。身内が亡くなったときに、一定の期間自重しているときに身に着けている服の色ですね。ですので、まあ、作中で死者が出たときに使うといいのではないでしょうか。ただ、使用されていたといっても平安時代の話です。現代は関係ないかもしれません。まあ、それを言うとほかの冠位十二階に登場する色にも似たようなことが言えますがね。あくまで参考程度に。


 そんな感じで、萱草色は『忘れる』ことに特化している印象です。そこに『別れ』『悲しみ』『憂い』『喪』などといった要素が加わる感じですかね。


 総合するとよいイメージが強いと思われます。ただし、花言葉に『愛の忘却』があります。恋なら失恋を忘れるということでプラスかもしれませんが、愛だと不穏ですね。忘れて大丈夫なのか? と不安になります。それでも、一人の者を愛していることで苦しむのならいっそ忘れたほうが楽になるでしょうし、悪い結果ではないと思われますが。


 ひとまず、色の持っている象徴やメタファーは以下のようになります。


「別離」「憂い」「悲しみ」「喪」「儚い」「忘れる」「美しい」「控えめ」


 はい。

 創作者にとってはおいしい花、および色です。本当に。

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