#5.5 閃きと風呂
魔法学校に入学する前に一つ物語に関係あったり関係なかったりする話です
5歳を迎えてから半年がたった。
子供の体感時間ってここまで短いのか……と自分でも少し驚いている。
この半年は父さんに鍛冶をさわりだけ教えてもらった。
とても分かりやすく、すぐに技術を吸収することが出来た。
しかし、まだ武器に使われるような固い金属を打てるほどの腕力はなく、今は比較的柔らかい金属で練習しているところだ。
どうやら、年齢によって筋肉量の限界が定められているようで、願望増加能力で限界の上限を上げることも出来なかった。
そしてその半年のうちにルル兄さんも家から巣だって行った、今度は誰も泣かなくて、少し気の毒だった。
そうして、そんなこんなしているうちに、俺のところに入学試験についての手紙が届いた。
その手紙の内容を見ると、父さんを教師として認めることは出来ない、ということも書いてあった。
それを見て、父さんは少し落ち込んでいた。
そんな姿の父さんを見て、少しほっこりした。
だって1年半前の父さんこんな顔しなかったんだもん、ショウゴノイジョノイコ。
入試の日時は……4日後!?
ちょ、速くね?
むしろ手紙が来るのが遅いのか。
とりあえず父さんと母さんに伝えよう。
「父さん、母さん、入試が4日後にあるので勉強をしようと思いますので、部屋に籠ることにします、食事はドアの前に置いていてくれたら、部屋で食べますので、よろしくお願いします」
そう、言い残して俺は父さんと母さんの返事も聞かずに大広間を出た。
部屋に入ってからはすぐに机に就き勉強を始めた、気分は完全に高校受験を控えた、中学生だ。
懐かしい、あのときは楽しかった……高校に入ってからは……うん……思い出したくないな……
「さ~て!やるぞ」
参考書を開き、勉強を始める。
この世界の国語は勿論漢字などあるはずもないので、全てが文章問題だ。
ニート時代に培った黙読能力が火を吹くぜ!
数学は本当に簡単だ、小学生程度の問題までしかない、もっとも俺はその小学生の時の問題などを覚えていないので一からスタートなのだが。
理科はまだこの世界には存在していないらしい、その代わりに魔法という科目がある、魔法は実技と座学が少々らしいので、今の俺なら大丈夫だろう。
社会はほぼ地理だ、歴史は地名の説明をするために、使われる程度だ。
これも大丈夫だろう。
この世界の言語は魔族を除いてほとんどが共通なので、英語など存在していない、強いて存在している言語と言えば獣操士が使う、獣仕語程度だろう。
そんなこんなで勉強をしていると母さんがひょこっとドアから顔を出して、話しかけてきた。
お母様その仕草は反則っす……
「レイ?あなた……教会推薦者だから試験を受けなくても入学出来るのよ?」
「え?」
え、嘘。
恥ずかし!ま、まぁ勉強して悪いことは無いし?
ここは……落ち着いて……深呼吸~
「ほ、ほら、学校に行ってから教会推薦者がなにもできなかったら恥ずかしいじゃん?」
自分でも目が泳いでいるのがわかる。
誤魔化せるか?頼む!母さん騙されてくれ!
「それもそうね、頑張りなさい」
「う、うん」
なんとか誤魔化せたらしい…ふぅ…変な汗かいたな、水浴びに行こう。
「……風呂に入りたい……暖かい風呂に入りたい……もうこうなったら作るしか」
ふと頭にあることが浮かぶ。
桶さえあれば……?
そうだ!無いなら作ってしまえば良いじゃない!!
って考えて見たものの……作り方知らないな……勘で作るかなぁ…
木で人が一人入るぐらいの箱をつくって……穴があったら光壁の魔方陣書けば良いか、桶はこれで良いか。
お湯はどうやって出そう……魔法の性質上、魔方陣で複合魔法は使えないし……う~ん……あ、立体で作れば良いじゃん!!俺天才!!
まずは…水銃の最低威力で水を作り出して……その下の受けで火銃の最低威力を当て続けて、暖めて……桶に流せば!!完成じゃん!この世界でも風呂に入れるなんて、嬉しいな。
そうと決まれば、魔方陣書くぞ~!
やる気出てきた!
そうしてその日の夜は更けていった。
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数日後、一応風呂は完成したのだが… 消費魔力が多すぎるため、一般人には扱えず、しかも、出てくるお湯は熱湯で人間の入れるような代物ではなく、没となった。
それでもめげずに製作を続け、数ヵ月後、相変わらず一般人には扱えないがちょうど良い感じのお湯が出る風呂が完成した。
が、唯一使える俺は魔法学校に入学するということで一回も入ることなく家を去ることになった。
悔しい……
次は本当にオルトマニア魔法学校に、入学するところからです。