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プロローグ「現世にお別れ」

 俺、日向良平(ひなたりょうへい)は、どこにでもいる平凡な高校生である。今年入学したばかりの一年生だが、もはやピッチピチというには少々日が経ちすぎている。ほとんどの日を部活に追われ、部活がない日は家で一日中ゲームをする――そんな夏休みを過ごした俺は、夏休み最終日に慌てて課題に取り組む羽目になるというありがちな展開に陥ってしまっていた。


 ところで、夏休み最終日というと、具体的にいつまでを指すのだろうか。地域によって多少の差はあるが、基本的には8月31日までが夏休みで、9月1日から授業が始まるというのが一般的なのではないか。

 

 と言うわけであるが……俺の部屋の机の上に置かれたデジタル時計の日付は、すでに9月1日という表示になっている。時刻は午前七時半。俺が余裕を持って学校に着くには、七時十五分には家を出なくてはいけないので、このままでは遅刻確定だ。


「いや、大丈夫。余裕を持ってというのはゆっくり走ったときの場合で、全速力で漕げばまだ間に合う!」


 俺はやっとのことで成し遂げた数学の問題集を鞄に放り込み、ダッシュで階段を下る。あらかじめ制服を着ておいてのが功を奏し、学校に行く準備は万端だ。


「良平、ご飯は?」

「時間ないからいらない!」


 台所から聞こえる母の声に、適当に返事する。俺は乱雑に靴を履き、勢いよく玄関の外へと飛び出した。俺の家から学校までは自転車でたどり着ける。電車やバスだったら時刻通りにしかこないその性質上詰んでいただろうが、俺の場合は幸いにも自分の足さえ何とかなればまだ間に合う。



「くそっ、こういう時に限って信号が赤ばっかりなんだよなぁ」



 俺はいけないことだと思いつつも、赤信号をものともせずに全速力で自転車を突っ走らせる。そして、それが俺の運の尽きだった。俺は右側から走ってくるトラックに気付いたが、全速力の自転車はそう簡単には止まらない。



「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」



 俺はそのまま思い切りトラックにはねられた。一瞬体中に激痛が走り、その後すぐに意識を失った。こうして、俺の16年という短い人生はあっけなく幕を閉じたのだった。

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