第六話
最近執事、レグホーンは忙しい日々を過ごしている。「領地改革をする」と決めた領主夫妻の書類仕事を、一緒に片付けながら、公爵と公爵夫人の仕事量とそこから派生する早さなどを目にして、この主人の下で働ける喜びをより深く感じるようになった。
そもそも、レグホーンを始めとする、メルハート公爵家で働いている使用人達は、訳あって王都を離れざるえない、曰く付きの人間達がほとんどである。ここでしか働けないと言われ、崖っぷちに立たされている面々たちだ。この自然が多いとしか言えず、なんとか開拓した農地で自給自足を得て、生活をする。本来なら、使用人も置くことができないそんな領地であった。
だが、それが可能なのは、メルハート公爵が現王の三男というのと、公爵の妻がかつて敵対していたラグール王国の三女と熱烈な恋愛結婚をしたことにより、「名ばかり公爵」と「自然だけあって使えない土地の領主」という地位を得て、王家に群がる貴族たちの戦いから離脱をした。
それにより、王家は「1番可愛がってる息子(弟)」を守ろうとしたのだ。
なので、王家からメルハート領へ、お金が入ってきたりする。
そのお金は、領民や私たちの給料などに使われ、残ったお金はいざとなったときのために、ためていたりしたりしてる。公爵曰く「王家や貴族からいつ見放されてもいいように」とのこと、では、王家と仲が悪いのか?、王家とのつながりが皆無かと言われるとそんなことはない。
この前王から直々に、公爵宛てに「パパはとても寂しい。一度も見たこともない孫の顔が見たい。ママも超さびしがってる。そして、長男と次男がお前の顔を見ないと、仕事を放棄すると言ってきてます。パパはそっちの反抗期も寂しいです。だってちっとも言うこと聞いてくれないんだもん。」
という手紙をもらい、いつもなら深いため息をついてから、捨てるのだが、今回はこの手紙を読んだ時に、私と公爵夫人に見せてから、公爵は人の悪い笑顔を向けた。
「今まで、貯金してきたお金は獣人たちに売る建売地区の整備に使うのと領地の整備にはできるだけ使いたい。だが、医者とか学校とかのインフラ整備に使えるお金はまだまだ足りない。そんな時にこの手紙。有効活用しようかなと思うんだよ。」
「旦那様有効活用とは?」
「ああ…王と王妃を引退させて、兄貴たちを王にさせる。そして引退した王と王妃を
こっちに来させる。ついでにヴィリア、お前の家もそうさせないか?」
公爵は公爵夫人を見てにやりと笑って見せた。
ヴィリアの実家も同じくらい、ヴィリアに甘い。
幸い、今までどれだけ辛くても、実家に甘えず、ギリギリながらも領地を運営してきたものだ。少ないながらも、領民たちを飢えさせず、ひもじい思いをさせず、お金とやりくりしながら、やってきたという自負がある。
その手腕も他の貴族たちに比べて雲泥の差だろう。
レグホーンは主が言いたいことを理解した。
「そうですわね。私も親の顔が見たいと思ってましたの。」
「それに、あの子たちにもちょうどいい機会だろう。」
「レグホーン紙の用意をしてくれ!!私たちは今すぐに手紙を書く」
そして、レグホーン公爵家の書斎で前代未聞の二王家引退計画を実行にうつし出した。
要約するとこんな感じだ。
「お父様、お母様。この機会に引退どうですか?今は治世がちょうどいい具合に納まっているとお聞きします。今なら、お兄様たちに世襲してもよろしいのではないでしょうか?孫たちも、おじいちゃんとおばあちゃんと暮らすのどう思う?と聞いたら、おじいちゃんとおばあちゃんに一緒に過ごしたいと言っていました。そうそう、フィリスの肖像画を送ります。こっちは、噂を聞いていると思いますが、領地改革をしようと思いまして、今様々な実行をしようとしているところです。お父様とお母様のお力をそこでお借りしたいという不遜な息子の考えを一つ添えさせていただきたいと思います。親不孝な息子でごめんなさい。なお、ヴィリアの実家にも同じような手紙を送らせていただきました。度々の勝手をお許しください。」
とこんな感じの手紙を送った一週間後返信が来た
「おお…息子よ!!私たちのことを頼ってもらって実に嬉しい。この手紙をもらった後に王妃と息子たちと私たちの味方となる貴族たちを集めて会議をした。その結果、私たちは引退をすることにした。いや、早いというなよ。私たちには孫たちとの生活という大事な役割があるのだ。だが、年寄り二人がお前たち領地に移り住むことに対し、王家からは一緒に早めの引退をしたがってる医者とか教師たちとか連れて一緒に移ることにした。それは、私たち余生の暇つぶしのこともある。ただし、数ヶ月の時間が欲しいと明記しておこう。なお、医者や教師は、優秀だが、次の優秀な若手に印籠を渡したいと常々言っていた人間たちだ。そこは安心するがよい。あと、兄弟が血涙を流して悔しんでいる。一つ願いを聞いてくれないと王にはならないと駄々をこねられた。ので、その願いを叶えるために、お前たち家族には是非とも王家主催の引退パーティと世襲パーティに出席をしてもらいたい。そのためにお前たちには王家の招待状を付随させとく。」
レグホーンは公爵の喜びを見て、こっちも嬉しくなる気持ちを抑えることができなかった。
王家の招待については考えざるにはいられなかった。
「あなた。わたくしの親も大賛成でしたわ。引退バーティと世襲パーティはあなたの家を優先するようにとのことでした。」
「そっか…。ただ、二週間近くの長い旅になる。ネヴィス、ミリウス、フィリス大丈夫か?」
ヴィリアは公爵の顔を見て笑った。
「丁度いいではないですか?家族旅行するには丁度いい季節ですし、私たち、最近仕事のしすぎですわ。それに、この領地のもう半分も行ったことないではないですか?」
「もう半分??」
公爵は首をかしげる。
「レグホーン地図を持ってきてくださるかしら??」
「はい。かしこまりました。」
公爵はわなわなと肩を震わせていた。
「ヴィリア…。うちの領地、海があったのか??」
「ええ、ギリギリ、この海はうちの領地に入りますの。」
「人住んでいるのか??」
「たぶん。あなた、家族旅行の練習も兼ねて、この土地へ視察しにいきませんか?」
「お!!いいなあ…。山だけかとおもったけど海があるなんてな。」
レグホーンは地図を見てからふと思った。
(だいぶ不便なところにありますね。ここを領主様はどう改革するのでしょうか?)
メルハート領は、自然が多くて使い物になりにくい理由の一つが、人が住む土地が領地の3割程度にしか過ぎないということだ。
だが、レグホーンの心配は杞憂に過ぎなかった。
ここに初めて。リゾートという概念を生み出し、観光ブームの火付け役になる。
そして、別荘という概念を庶民に打ち出した一番最初の場所でもある。そうなるのはもうしばらく先のことになる。
メルハート領というと山のイメージがつくのではないだろうか?実際現在においては
山岳リゾートというとメルハートの名が思い浮かべるだろう。
だが、私はメルハートというと海のイメージがつくのである。
シフィル空港に降りてから、タクシーで十分走らせると、セレブが集う、シフィルに着く。
かつては王が引退して、その土地に静養兼ねて別荘を作ったことからこの土地の発展は始まる。
そこに、メルハート公爵が全国で初めて別荘地を庶民に売り出した。
裕福な庶民貴族はこぞってここに別荘を建て、そこに人が集まり、観光都市として発展することになった。
今ではシフィル映画祭の会場としても名高い観光都市になっている。
ここにきたら、海鮮を使った名物料理を是非とも食べていただきたい!
海鮮の具ざいにトマトに唐辛子を使って煮込んだスープなのだが、新鮮な海鮮を使っていることにあって実にうまい。おまけで麺か米かを選べるので、残った汁を使ってさらに楽しんでもらいたい。残った汁で作ったリゾットなんて絶品で…ああ書いている途中からよだれが出てくる。シフィル映画祭に訪れたセレブたちもこの味に魅了されてきたら度々食べていくらしい。
シフィルでもう一つ話をしよう。これは今では映画やドラマになっているシンデレラストーリー。
シフィルに訪れた女優兼踊り子が、お忍びでこの地に来ていた王子様と恋に落ちた。王子と女優兼踊り子は身分の差を超えて熱烈な恋愛の末結婚。そしてお互い死ぬまでにそいとげたと言われるシンデレラストーリー。
そのような恋もこの地ならしっくりくる。現にカップルで訪れたい観光スポットNo.1を某三つ星観光ガイドに5年連続ランクインしている。
つい5年前に、その王家の血が流れるご息女がシフィルを訪れていた、イケメン俳優と熱烈な恋に落ちて結婚したのがネフィルの観光ブーム再燃となっているのだろう。
<絶対に行っておきたいセレブリゾートネフィル>スノール観光社著より抜粋