ぷろろーぐ
プロローグ
空を見上げると、確実に空が下り坂になってきている。
足を速めに急がせた。
駅に着き、一息ついた途端に豪雨になった。
良かった…。ここまでは運が悪くなっていない。
ため息をつきながら手元の荷物を見る。必要最低限の荷物。家を出てくるには必要最低限の、荷物が手元にあった。
もう…嫌だ。どこかへ逃げ出したい。
時計を見ると、そうぐずぐずしていられないことに気がついた。
急いで改札口に入り、行きとめもなく、電車に乗った。
電車内をざっと見渡す限り知っている人がいない。
電車にのり、二度目の安堵のため息をつく。
今日のために持ってきた新しいスマホと充電器。あの地獄の日々の中でかき集めたお金。そして、万が一の代わりに作ったパスポート。
パスポートは必要ないと思い、今まで作ってこなかったのがまだ救いだ。
「大丈夫…」
女性は電車の風景を見ながら小言でつぶやいた。
つぶやいた途端に涙がでてきたが、慌てて手を拭う。
女性ははそれまでとは違う人生を歩む…。そう決めたのもつかの間、電車が急ブレーキを踏み、車体が大きく傾いた。
女性は死ぬ間際思った。私はやっぱり死ぬまで不幸らしい。
せめて人並みの家族と家庭を築きたかった。
人並みの家庭を築くためには私は頑張る…。
そう、悔いの言葉を残しながら、彼女は意識をなくしていった