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首輪付きの奴隷 - チートな彼女と僕 -  作者: 桐原 冬人
4章 デッドエンド
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お見舞い

 夜が明けて、

 4人で誘拐狂言を起こした生徒たちの様子を見に行くことにした。

 何か進展はないものかと気になったのである。


「ん、藍がいる」


 寮棟から病棟への渡り廊下を歩いていたら、

 訓練棟入口の段差に腰かけている藍が見えた。


「ちょっと待ってて」と知枝たちに言葉を残して藍に駆け寄る。

「おはよう。これから狂言犯の所に行くんだけど、藍もいかないか?」


 藍はいつものように赤錆たナイフを眺めていた。

「興味ねーよ」

 視線も変えずに拒絶される。まぁそんな所だろう。


「そう言えば、伝え忘れてたんだけど、お陰様で身体も万全なんだ。

 前に頼んでた知枝の護衛の件、もういいよ。ありがとう」

「この前チームで戦っただろうが。わざわざ言わなくても分かんだよ」


「報酬の仮面は憎しみだけでよかったんだよね?」

 気だるげに睨み付けられてしまう。

「いらねーよ。なにもしてねーだろ」


「でも、見守っててくれたんだろ?

 それにもう手続き済ませちゃってるんだ」


「……好きにしろ」

「じゃぁ、みんなを待たせてるから、また今度」


 手をひらひら振って退散する。藍は何も言わずに視線をナイフに戻した。

 みんなの所に戻ると、知枝が怪訝そうに尋ねてくる。


「藍と何を話してきたの」

「一緒に行かないか、って。まぁ、断られたけど」

「藍が誰かと一緒にいるトコなんか見た事ないもんなー」

「ちょっと、……怖いです」


「そうかな。頼りになるよ、藍は。ああ見えて、正義の味方だしね」

 3人とも「え?」とでも言いたげに、頭の上に疑問符を浮かべる。


「どういう意味なの?

 藍って不真面目の代表格みたいな感じじゃない」

「うーん。なんていうか超ストイックだよ。

 犯罪者撲滅の為にすげー頑張ってんの。表には出さないけどね」


 女性様たちはあまり関心がないようで、「ふーん」と言った後、

 「そうかな?」と考え込んでしまった。


 狂言犯の8人は1つの病室に押し込められていた。

 他の病室よりも明らかに監視カメラが多い。

 重要参考人でありながら、

 犯人でもある彼らは余り良い待遇はしてもらえていないようだ。


 入口付近に設置されているデスクで

 仕事をしていた水城先生がこちらに気付く。


「どんなもんですか。彼らの具合は」


「見たまんまだね。全然起きる気配がないよ。

 孤児組の子たちは比較的軽症

 ――まぁ、他と比べればって話なんだけどね。

 『心理的な影響が大きいんじゃないか』って医者は言ってる。

 千影くんとまともに交戦した訳だからね」


 みんな手足を包帯でまかれて吊るされていたり、

 点滴と共に精密機械から伸びるチューブを身体中に突き刺されている。

 人工呼吸器をつけている人までいた。


「事件の真相が分かるのは当分先になりそうですか」

「まぁ、彼らから聞くのは近いうちには無理だろうね。

 しっかし、千影くん、強いとは聞いていたけどここまでとはなぁ。

 凄まじいね。殺戮兵器の名は伊達じゃないよ!

 素晴らしい」


 狂言犯とはいえ、

 傷ついた元学園の生徒を前にして教師としてそれはどうなんだ……。

 思いつつも、わざわざ言い争うつもりはないので曖昧に頷いておく。

 特に得るものもないようなので、Uターンして戻ることにした。


「あ、そうそう。毎日一色くんがここに通ってくるんだけど。

 もうちょっと穏やかにしてって言ってくれないかなぁ。

 おっかなくってさ。明日もまた来るのかと思うと憂鬱だよ」


 病室を出ようとした時に水城先生に懇願された。

 なんだ、藍は既に訪れた後だったのか。

 僕には無理です、とにこやかに答えて病室の後にする。


「何も分からなかったわね」

 少し歩いた所で知枝が口火を切った。

「やっぱ千影はすげー強いんだね。

 あいつらぼっろぼろだったよ。能力が凄かったりするの?」


 興味津々と言った感じで真が僕に聞いてくる。


「能力自体は関係ない。ただ殴ったり蹴ったりするだけ。

 基本的な性能の差だよ。パトスの絶対量が多すぎるんだ」


「そうなんだ。別に攻撃に特化してる訳でもないのに、あんなに……。

 そういや、兄ちゃんの障壁はかてーよな。

 ボクの能力でも壊れないもん」


「僕が得意なのってそれしかないからね。

 それに能力を防御特化にして底上げしているんだ」


 呆れかえったように真は肩をすくめる。

「唯一得意なのが防御とか……男らしくねーの」


「綾人はそれでいいの!

 それに、傷つけなくたって犯罪者くらい捕まえられるんだから」


 知枝がフォローしてくれるが、

 真はまったく聞いておらず一人でテンションをあげている。


「でもさでもさ、だったら千影の攻撃は防げんの?」

「どうだろ。分からないや」

「なんだよ、だっせーの」


「あはは、真は相変わらずきついなぁ」

「お兄ちゃん、ださくないよ!」

 そんな他愛無い話をしながら寮棟へ戻った。


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