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首輪付きの奴隷 - チートな彼女と僕 -  作者: 桐原 冬人
3章 使い捨てのチーム
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千影

 扉の前に立っている二見先生に挨拶をして、独房へ入る。

 左から向かって4番目が千影の特等室だ。


 1か月ぶりに見る千影に変わりはなかった。

 いつものように牢屋の中で椅子に繋ぎとめられている。

 首輪・腕輪・足輪によって五体を縛られ、

 覆われた目隠しによって視界を塞がれていた。


 千影部屋を通り過ぎて、5番目の部屋へと入る。

 1か月に1回しか訪れない僕の部屋だ。

 この学園に来た時に、僕はこの部屋に入れられていた。


 犯した罪の大きさに応じて、

 あるいは精神が安定するまで隔離されるのだ。


 その時にお隣さんだった千影と僕はいつの間にか仲良しになり、

 ここから出た後も千影の精神安定剤として、

 ひと月に一度派遣されることになっている。


 多分、意味はないだろうけど僕も千影とは浅からぬ仲だ。

 意味はなくとも必要ではあるだろう。


 千影と同じように、僕も自分の特等席に座った。

 それがスイッチとなり、千影はすぐさま反応する。


 目隠しされていて視界が閉ざされている分、

 聴覚が敏感なのかもしれない。


「綾人か?」

「うん、久しぶりだね。

 お変わり無いようで」


「もう1か月経ったのか。

 時間が経つのは早いな。

 何か変わったことはあったか?」


「目下、大問題継続中かな。

 ここの生徒が誘拐にあったみたいでさ。

 まだ何にも分かってない状態」


「ふーん」

 既に二見先生から聞いているのだろうか、千影の反応は薄かった。

 それとも、興味がないのかもしれない。


「そういえば、

 最近犯罪者が凶悪になっているって話、前にしたよね?

 あれ、僕も当たったよ。

 訓練経験もない一般人だったのに、そこそこ強かった」


「僕も駆り出されそうな感じか?」


「いや、千影が出る程じゃないよ。

 僕くらいでも一気に3人くらいは相手にできると思う。

 千影が出る程の事件なんて、そうそう無いよ。

 ……それとも、出たいのかな?」


「別にそういう訳じゃない。

 けど、不安はある。

 こんな所でずっと繋がれ、ご大層に目隠しまでされて、

 必要な時にちゃんと身体が動いてくれるのか、って」


「千影に限ってそれはないでしょ。

 大丈夫だよ」

「それもそうかもな。

 前に出たのはいつだったか……。

 けど、昨日の事のように思い出せるんだ。

 身体の動かし方だって覚えてる」


「……そうなんだ」

「でも、それでも不安を拭い去ることができない。

 綾人、弱いことは罪だろう?

 力不足なんかで大切なモノを失いたくない。

 僕は、そうなりたくないんだ」


「千影、聞いてもいいかな?」

「なんだ?」


「千影の大切なモノって何?」

「さあ? 今はないな。

 ……ただ、綾人と話すのは大切な時間だ。

 これは無くしたくないかもしれない」


「そっか」

 …………。


 その後、千影にパトスの使い方のレクチャーを受けた。

 千影の力と僕のそれは余りにもかけ離れ過ぎている。

 僕が唯一得意なのは防御障壁を練ることだけだ。


 他には、誰でも出来るような身体の強化くらいしかできやしない

 だから、千影にモノを教わるなんて出来っこない話だった。

 それでも、いつか何かの役に立つかも知れないと、耳を傾ける。


 そんな折、携帯端末のバイブが震えた。

 呼び出し元は二見先生だ。


 まだ面会の終了時間は来ていないはずだけど……と思いながらも、

 千影に断りを入れて電話に出る。


『綾人、急で済まないんだが仕事が入った。

 面会を中断して、私の教官室まで来てくれ』


 同意すると、電話はすぐに切れてしまった。

 なんだろう、電話越しに伝わる二見先生の声は酷く緊迫していた。


「呼び出しをくらっちゃったよ。

 どうしてもすぐ行かなきゃいけないらしい。

 この後、検査だろ?

 結果が良くなっていると良いね。

 じゃぁ、また来月」


 千影に声をかけて牢屋から出る。

 鎖がこすれる音が聞こえたので目を向けると、千影は手を振っていた。


「さよなら」


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