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首輪付きの奴隷 - チートな彼女と僕 -  作者: 桐原 冬人
2章 首輪付きの学園
14/37

カウンセリング

 …………。


「やるじゃないか」

 声が上から降ってくる。


 振り向くと、二見先生が背後に立っていた。

 私の肩に伸ばした先生の手は、

 私の張った防御障壁に阻まれて、宙を撫でている。


「自分の悪癖は理解しているつもりです。

 誰か近くに来たら、警戒くらいはしますよ」

 二見先生は対面のソファーに座る。


「ばれないように忍びよったつもりだけど……。

 今のが防げるなら日常生活では問題ないと思う。

 前々から言っているけどね。

 でも、その割には昨日暴れたらしいな」


「…………はい。

 部屋の中だと緊張のスイッチが切れるんです。

 普段は綾人が気をつかってくれますから。

 でも、昨日は私がまた我儘を言ったから……。

 綾人の代わりに前衛をやりたいって……」


 二見先生は頭の中で言葉を整理するように、

 顎に手を当ててソファーにもたれかかった。

 少しの間の後、口を開く。


「四六時中、緊張を強いるのは無理だ。

 部屋の中でくらい緊張を解くのは正しい。

 こういう稼業だから、気を病む生徒も多い。


 精神安定剤としてのペア制度でもある。

 正直、リスクはあるにしても知枝が前衛をやることは可能だと思う。

 最悪、暴走しても首輪があるから大事には至らないし。

 まぁ、その覚悟があれば、の話だけど」


 一呼吸置きながら、二見先生は私の瞳を探るように見据えてくる。


「例えば、私が犯罪者だとしよう。

 今ここで戦えと言われて、応戦できるか?」


 先生は一瞬でパトスを解放、大きく感情の波を揺らめかせる。

 私はというと、自分の座っていたソファーを盾にするように、

 一瞬でその後ろに回りこんでいた。


「身のこなしはお見事。

 で、そこから何かできるかな?」

 嘲るような笑みを向けられて、

 しかし、私は立ち向かおうなんて気持ちは湧き上がらない。


 考えるのは、ここから離脱する経路だ。


 まずは入ってきたドア。


 閉まってはいるが蹴破ればなんてことはない。

 でも、そんなのはすぐに読まれてしまう。

 ドアまでの距離はどちらも同じ。

 そう易々とは逃がしてはくれないだろう。


 ここは2階だから窓をぶち破って逃げることも可能だ。

 障壁を張るタイミングを間違えなければ無傷で逃げられる。

 意表を突く分、

 ドアから逃げるよりは相手を出し抜く可能性が高いかもしれない。


「例えば、の話だよ。

 そんなに警戒しなくていい」

 二見先生はそう言って、まとっていたパトスを沈める。

 私は冷や汗をぬぐいながら、促されるままに再びソファーに座った。


「知枝、出来る性能を持つことと実際にやることは別次元の話だ。

 仮面やパトスは目的を実現するための力だ。

 向いている方向が違うなら結果はいつも間違える。

 こればっかりはいくら力があっても、どうしようもない。

 向き不向きだな」


「向き不向き……」


 昨日の綾人が言った言葉が思い出される。

 私が慕っている2人は、異口同音にそう言ったのだ。


 二見先生の顔が綾人と重なる。

 視線をまっすぐに受け止めることができない。

 自然、私は下を向く。


「ただ、……どうしても戦わないといけない時が来るかもしれない。

 ……強迫観念(トラウマ)を克服するために、

 イメージトレーニングでもしたら良いんじゃないか?

 その時に、動けるように……後悔しないように……」


 後悔しない為の準備。

 心づもり。

 ……出来ることから、やるしかないんだ。


「はい、わかりました」


 俯いた顔をあげて、胸を張って告げる。

 二見先生をまっすぐに見て答えようとしたが、

 当の先生は窓の外を眺めていた。

 その横顔は、なぜか悲しそうな瞳をしている。


 私の視線に気づくと、先生は正面に向き直って険しい顔になる。


「カウンセリングはそろそろ良いだろう。

 結局は気の持ちようだ。

 申し訳ないが、……私にできることはほとんど何もない。

 それで、ちょっと別の話をしたいんだが」

 どう話したものか……と先生は考え込む。


「さっき全体会合で話したこと内容、事件はあれで全てではない。

 詳細は今日中に連絡メールを出すつもりだが。

 知枝には直接聞いてもらって、疑問点等があれば指摘してもらいたい。

 実はな…………」


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