around the corner
自分の拙さに涙がでる今日この頃、皆様如何お過ごしでしょうか。ちなみにおりがちゃん泣いております
眠りってのは、深くて暗い水の中を沈んで行くような気持ちだ、でもその水は決して冷たいものじゃなくて、それどころかあったかくて心地のいいものなんだ。
そして、時々思い出したようにその真っ暗な水の世界は色を変える。そのぐにゃぐにゃに歪んだ色彩の世界を、他の誰でもない位置から見るものを、俺は夢だと思っていた。
特に子供の頃はそうだった、高熱をだして、真っ赤になった色彩の世界、母さんの胸だかれて眠った仄かな乳白色の世界、いろいろな色が、真っ暗な水をぐにゃぐにゃにして染めた。
でも、父さんが戻ってこなかった雨の夜は、決して色は変わらなかった。寧ろ、何時もは暖かい水の世界が突き刺すように冷たくなり、真っ暗な世界は不安を煽り立てた。
結局、帰ってきたのは父さんじゃなくて、父さんが入った大きな箱を引きずってきた爺さんだった。その日の夜も、水は冷たいままだった。
――そして、今も……
「お嬢さんや、竜人と呼ばれる者たちの、最も多い死因は何かご存知かね?」
暗く冷たい水の中で、どこからか伝わる遠い声、それは上からのようにもしたからのようにも感じられた。
一瞬、硬く閉じられた黒色の世界に、僅かな黄色の花が咲く。
「……そうか、無理もない、竜人は里以外の場所には滅多に出てこん……そう悲しい顔をするな、此奴がお嬢さんを庇ったことも、此奴が納得できる結果を選んだ末故だ」
ぼんやりと上から下から、無限のエコーと共に聞こえる張りのある年寄りの声。
やめろ。俺の焦りの感情が、水の色をゆがませる。紅く、あるいは真っ青に、せわしなく二度とない色に次々と現れては消えてを繰り返していた。
しかし、無情にも言葉は消え失せない。
「……竜人と呼ばれる者たちはな、キズの治癒速度が、地上に存在するどの生命体よりも、遅いのだよ」
明示された地上最強種として名高い竜人の弱点に、心臓を鷲掴みにされたような不快感が沸き起こる。
しかし、それでも老人の声は止まない、淡々と、あまりに淡々と、言葉は紡がれて行く。
「万物の造物主は、いとも上手く世界を造ったものだ、竜人は、その持ったる力故、力に滅ぶものがあまりに多い」
戦いに出て、そして、戦いによって得た傷が元で命を落とす……俺の親父もそうだった……はずだ。
「しかも、此奴はハーフだ……もしも、傷の深さ故暴走したら……――」
ッ……――?! や、めろ!
瞬間、闇に包まれた水の視界は、唐突に降り注いだ眩しすぎる光によって破壊された。強烈な光の光線が、開かれたばかりの眼球を焼く。
「師匠……そこから先は、俺が自分で話す」
刹那の時刻奪われた視力の、それが戻ってきた時、俺が初めて目にしたものは、きっと俺が何より見たくなかったもの。
オリガの、涙だった。